第51回 放射線の測定及び放射線障害の防止に関する技術

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第51回 核燃料取扱主任者試験 放射線の測定及び放射線障害の防止に関する技術

第1問

次の文章の空欄の部分に入る適切な語句を番号とともに記せ。 なお、同じ番号の空欄には同じ語句が入る。

(1) 軌道を回っている電子が[①原子核]に捕獲される現象を[②電子]捕獲という。 [②電子]捕獲では、[①原子核]の[③中性子]が[④陽子]と[⑤電子]に変化する。 これを式で表すと、[⑥β+]壊変の式で、陽電子の項を右辺から左辺に移項させたものに相当する。

AZX + e-AZ-1Y + ν [②電子]捕獲

※νは、元の問題文ではνにオーバーラインがついた「反ニュートリノ」になっているが、 電子捕獲ではただの「ニュートリノ」のはずである。 マヨラナ? だとしてもオーバーラインは不要だろ。

[②電子]捕獲では主に[⑦K]殻の軌道の電子が捕獲される。 [⑦K]殻の軌道にできた[⑧空孔]を埋めるために[⑨外側]の軌道から電子が移ってくるが、 その際にそれぞれの軌道の[⑩束縛]エネルギーに差があるために、その差のエネルギーの[⑪特性X線が放出されることになる。

(2) [①原子核]では[③中性子]と[④陽子]が、核種に固有なエネルギーの軌道に収まっている。 通常、[①原子核]では最も低いエネルギーの軌道から収まっていることを[⑫基底]状態にあるという。

(3) [⑫基底]状態に対して、核子が[⑫基底]状態よりエネルギーが[⑬高い]軌道にあるとき、 [①原子核]は不安定な[⑭励起]状態にあるという。 この不安定な状態からエネルギーを放出して[⑫基底]状態となるために、 [⑮γ]線を放出する場合と、[②電子]に[⑯運動]エネルギーを与えて放出する場合の[⑰内部]転換がある。

(4) 希に[⑭励起]状態のまま比較的[⑱安定]な状態でとどまっていることがあり、 このような[⑭励起]状態にある[①原子核]を[⑲核異性体]と呼び、 [⑮γ]線を放出して別なエネルギー状態に移ることを[⑳核異性体転移]という。

第2問

次の文章の空欄の部分に入る適切な語句を番号とともに記せ。 なお、同じ番号の空欄には同じ語句が入る。

(1) γ線のスペクトル測定には、高純度の[①ゲルマニウム半導体]スペクトロメータや[②NaI(Tl)]シンチレーション・スペクトロメータが用いられる。 分解能は[①ゲルマニウム半導体]検出器が優れている。 [③検出]効率は[②NaI(Tl)]シンチレーション・スペクトロメータが有利である。

(2) γ線がそのエネルギーを失う効果としては、[④光電]効果、[⑤コンプトン]効果、[⑥電子対生成]がある。 検出器の[⑦有感]部分にγ線が入射すると、[④光電]効果、[⑤コンプトン]効果、[⑥電子対生成]の[⑧電離]作用により、 電荷キャリアが作られ、出力信号となる。 仮に単一エネルギーを持つγ線が[⑦有感]部分に入射しても、[⑧電離]作用の種類や[⑨入射]角などにより、 出力パルスの[⑩高さ]が異なるので複雑なスペクトルを得る。

(3) [⑪α]線のエネルギーは4~7 MeVの範囲にあり、エネルギー範囲が数桁に及ぶ[⑫β]線やγ線とは異なる。 [⑪α]線の[⑬飛程]は空気中で5 cm程度であり、 試料を厚くすると、[⑭自己]吸収により、[⑪α]線のエネルギーの一部が試料中で失われる。 このため[⑭自己]吸収を避けるために、蒸着などによりごく[⑮薄]い測定試料とし、測定する際は、 空気層による吸収を避けるために真空中で行い、検出器の入射窓を[⑮薄]くするか、 内部試料計数法を用いるなどの手段をとる必要がある。

(4) [⑫β]線放出核種を取り扱う作業では、厚さ1~1.5 cm程度の透明なアクリル板が[⑫β]線の遮へい用として用いられる。 このとき重要なのは、[⑫β]線のエネルギーが高くなると、遮へいされる際に[⑯制動]放射線が発生し、 その放出割合は、[⑫β]線のエネルギー及び遮へい物の[⑰原子番号]が大きくなるにつれて増加する。 このため発生した[⑯制動]放射線を遮へいするには、 アクリル板の外側をコンクリートや[⑱鉛]などの高[⑰原子番号]の物質で覆う必要がある。

(5) 液体シンチレーションカウンタの特徴としては、 トルエンなどの溶媒中にPPOなどの溶質を溶かし込んだ有機シンチレータを用いている。 これは測定試料を直接シンチレータに溶かし込むため、幾何学的検出効率は100%であり、 [⑫β]線測定の際に線源による[⑭自己]吸収、[⑲後方]散乱、検出器の入射窓による吸収などの影響はなくなる。 よって[⑳H-3]やC-14の低エネルギーの[⑫β]線計測には適している。

第3問

次の文章の空欄の部分に入る適切な語句又は数値を番号とともに記せ。 なお、同じ番号の空欄には同じ語句又は数値が入る。

(1) フリッケ線量計は100 eV吸収されると約15.6個のFe2+が[①酸化]される。

(2) 水の質量エネルギー吸収係数は広いエネルギー範囲で空気の約[②1.1]倍である。 ※アイソトープ手帳11版p.155の値を読み取った結果。

(3) 放射線測定器には、それぞれ固有の感度があるため、[③校正]定数が与えられている。 [③校正]定数は測定器の[④経年変化]によって変化するおそれがあるため、定期的に求めておく必要がある。

(4) 放射性物質による表面汚染には、[⑤固着]性と[⑥遊離]性のものがある。 [⑤固着]性の場合は、[⑦外部]被ばくが問題となり、 一方[⑥遊離]性の場合は、呼吸などからの[⑧内部]被ばくが問題となる。 サーベイメータを用いて、これらの表面汚染を測定する場合は、一般的には直接法や間接法を用いる。 床汚染を引き起こした放射性物質が短半減期である場合、汚染箇所を[⑨明示]し、ビニールシートで養生し、 放射性物質自身の[⑩減衰]を待つのも効果的である。

第4問

内部被ばくに関する以下の問いに答えよ。

(1) 以下に示した放射性核種について、体内において最も集積される部位を基準として、 (a)から(d)に示した臓器別に分類せよ。

【放射性核種】
H-3, Cs-137, I-131, Sr-90, Am-241, K-40, Ca-45

(a)全身
(b)筋肉
(c)甲状腺
(d)骨

解答例:

放射線概論 ATOMICA
(a)全身 H-3, Cs-137 K-40
(b)筋肉 Cs-137
(c)甲状腺 I-131
(d)骨 Sr-90, Am-241 Cs-137, Sr-90, Am-241, Ca-45

(2) 次の文章の空欄の部分に入る適切な語句を番号とともに記せ。

放射性核種の摂取経路には、[①呼吸]器、消化器、皮膚、粘膜などが考えられるが、 その侵入の程度は化学的性質に大きく依存する。 一般的に、[②固着]性の物質は、消化管から吸収される。 一方、[③遊離]性のI-131などでは、気道を通して吸収されやすく、 また239PuO2を含む[④粒子]状の物質は、気道粘膜への[⑤沈着]を特徴とする。 通常、皮膚や粘膜によって、放射性核種の侵入は制限されるが、[⑥創傷]がある場合は取り込みが促進される。

第5問

放射線障害と放射線リスクに関する以下の文章について、空欄の部分に入る適切な語句又は数値を番号とともに記せ。 なお、同じ番号の空欄には同じ語句又は数値が入る。

(1) 単一細胞に生じた遺伝学的損傷とその後の細胞増殖が引き起こす確率的影響に対比すると、 [①確定]的影響は、細胞集団への致死性障害に起因する影響と見なされる。 この場合、組織の被ばくが限定的であれば、残存する組織によって機能の[②回復]ができるため、 臨床的な徴候が現れることなく耐えられる。 これが[③しきい]値線量が存在する理由とされる。

(2) 組織や器官の放射線感受性は多様であり、感受性の高い部位には、卵巣や[④精巣]、[⑤骨髄]、そして眼の[⑥水晶体]などがある。 一般に、これらの組織における被ばく線量と発生率の関係をプロットすると[⑦右上がりの]曲線になり、 被ばく線量の増加に伴ってその影響は大きく変化する。

(注)放射線概論より引用 組織の放射線感受性

感受性の程度 組織
最も高い リンパ組織(胸腺,脾臓),骨髄,生殖腺(精巣,卵巣)
高い 小腸,皮膚,毛細血管,水晶体
中程度 肝臓,唾液腺
低い 甲状腺,筋肉,結合組織
最も低い 脳,骨,神経細胞

(3) RBEは、着目する放射線と基準放射線の単位吸収線量当たりの生物学的影響の効果の[⑧比]で表され、 高[⑨LET]放射線ほどRBEが大きい。 一般に、低線量では確率的影響のRBEよりも組織反応のRBEの方が[⑩大き(?)]い。

(4) 放射線誘発の[⑪白血]病は、被ばく後2、3年目から発生する。 一方、[⑫固形]がんは、がん好発年齢になってから多発する。 発がんのリスク推計では、[⑬生涯]にわたる発生数を予測するために回帰モデルが利用されている。

(5) 高・中線量の放射線による発がんのリスクは、全種類の[⑫固形]がんを合わせたリスクとして、 線量に対して[⑭直線]又は直線-2次曲線の線量効果関係を示す。 また、[⑪白血]病に関しては直線-2次曲線の線量応答を示す。

(6) 放射線のリスク推計は[⑮疫]学の知見に基づいている。 [⑮疫]学による観察結果は、様々な[⑯環境(?)]や交絡因子の影響を受けることが常である。 低線量におけるリスク評価は、がん等の発生率が相対的に低いため、 その[⑰統計学]的検出力に見合う規模の観察集団を設定できないために不確実性が大きい。

(7) 放射線加重係数は、同じ吸収線量のγ線X線と比較して、光子、[⑱電子]及びμ中間子については1、 陽子及び荷電π中間子では2、α粒子、核分裂片及び重粒子では[⑲20]の値が与えられている。 中性子では、[⑳エネルギー]の連続関数によって定義される。

第6問

放射線防護及び被ばく対応に関する以下の5つの語句の中から、4つを選択し簡潔に説明せよ。

(1) 生物学的半減期を決定する要因
(2) 預託線量
(3) 生物学的な線量推定方法
(4) 放射性物質の体外への排出方法
(5) 造血器系障害に対する医学的処置

解答例

(1) 生物学的半減期を決定する要因
体内にとり込まれた放射性物質は,その臓器親和性にしたがって種々の臓器・組織に分布し,その後排泄される. 生物学的減少は実際には複雑な過程をたどるが,指数関数的に減少するものと仮定し,排泄機構により体内量が1/2になるまでの時間を生物学的半減期と呼ぶ. 放射性物質の体内量の減少は,①放射性壊変による物理的減衰と②排泄機構による生物学的減少の2つに支配される. (放射線概論)

(2) 預託線量
預託線量とは,一般成人に対して摂取後の50年間(子供や乳幼児に対しては摂取時から70歳まで)に受ける量を 摂取時に受けたと想定した放射線量のことを言う. (環境放射線データベース)

(3) 生物学的な線量推定方法
バイオドジメトリ(生物学的線量測定)は, 放射線照射の細菌・カビに対する影響を滅菌指標菌により直接確認する方法で,放射線加工処理分野で用いられる実用的な線量測定法で, 広義には被ばくした生体の材料を用いて被ばく線量を計測する方法である. (atomica)

(4) 放射性物質の体外への排出方法
一旦,体内に取り込まれて臓器に沈着した放射性物質を積極的に排泄させる方法はほとんどない. トリチウム水は全身に水の形で分布しているので,利尿剤や水を大量に飲むなどして排泄を促進することが出来る. 体内に取り込まれたものの臓器に沈着する以前であれば,沈着を抑制することができる場合もある. 放射性ヨウ素の体内汚染の場合,安定ヨウ素剤(ヨウ化カリウム)を経口投与し,甲状腺への放射性ヨウ素の沈着を低下することができる. つまり,放射性ヨウ素甲状腺に集積する前に安定ヨウ素甲状腺を満たし,甲状腺への放射性ヨウ素の沈着を防ぐのである. また,DTPAなどのキレート剤を投与して沈着を阻害することも原理的には可能であるが,キレート剤は副作用が大きく実用には向かない。 ※キレート剤…金属イオンと反応して化合物を作る.キレートとはギリシア語でカニのはさみを意味する. (放射線概論)

(5) 造血器系障害に対する医学的処置
造血器症候群(骨髄症候群)の治療方針は,被ばく線量が4 Gy(または2 Gy)以上の時に生じる血球減少に対して 易感染性対策・造血性サイトカイン・成分輸血を行い,8 Gy(または6 Gy)以上の時に生じる不可逆的な骨髄不全に対して造血幹細胞移植を行う. 被ばく線量が10 Gyを上回る場合は,造血機能を回復させても消化器や肺の障害のため救命できないケースが多い. (緊急被ばく医療ポケットブック)