第51回 核燃料物質の取扱いに関する技術

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第51回 核燃料取扱主任者試験 核燃料物質の取扱いに関する技術

第1問

以下の問いについて答えよ。

(1) 次の文章はウラン濃縮に関して述べたものである。 文章中の空欄に入る適切な語句を番号とともに記せ。 なお、同じ番号の空欄には、同じ語句が入る。

ウラン濃縮とは、熱中性子核分裂を起こすU-235の割合が多い[①濃縮]ウランを得る処理である。 ウラン濃縮では、わずかな質量差しかない同位体を分離することから、 [②気体]として処理することが有効である。 このため、比較的低温で[②気体]となるUF6の形態として取り扱う処理法が実用化されている。 ウランをUF6として取り扱うウラン濃縮法のうち商用工場の稼働実績がある方法には、[③ガス拡散]法と[④遠心分離]法がある。 UF6を用いない方式としては、ウランの金属蒸気を用いる[⑤原子]法とウラン水溶液を用いる[⑥イオン交換]法がある。

(2) ウラン濃縮を行う目的を説明せよ。

【解答例】

天然ウランを構成する同位体のうちU-238は高速中性子でしか核分裂を起こさないが, U-235は幅広いエネルギーの中性子核分裂を起こし,特に低エネルギーの熱中性子核分裂を起こしやすい. 現在,発電炉の主流となっている軽水炉では核分裂で生まれた高速中性子を軽水で減速してできるだけ低エネルギーの中性子とし, U-235を核分裂させてエネルギー生産をしている. しかし,天然ウランに含まれるU-235の比率は約0.7%と小さく,そのまま軽水炉の燃料に用いても核分裂連鎖反応を維持できない. このため,ウラン濃縮プロセスによってU-235の比率を3~5%に高めた濃縮ウランを製造し,燃料として利用している. (atomica)

(3) (1)で挙げられている4つのウラン濃縮法のうち2つの方法を選んで、それぞれ概要及び長短を述べよ。

【解答例】

ガス拡散法:
U-235とU-238のわずかな質量比による拡散速度の差異を利用した同位体分離法である。 気化した六フッ化ウランを隔壁の設けられた気室に送り出し、内部で拡散させる。 隔壁には数十Åの孔が無数に空いており、質量の小さいU-235の化合物がわずかに多く孔を通り抜けるため、 隔壁を通すことで元のガス流よりもわずかにU-235の比率が多い濃縮流を得ることができる。 拡散を一回行う場合の理想の分離係数は、実際には1.003程度になる。 (長所) 最も初期に生産実証されたウラン濃縮技術であるため工業実績が高い。 (短所) 低濃縮ウランを生成するにもカスケードを数百段以上組む必要があるため、消費電力、所要時間、ともに膨大になる。 (Wikipedia)

遠心分離法:
六フッ化ウランを高速回転中の遠心分離機に入れると、遠心力により重いU-238と軽いU-235とが、わずかに分離される。 その分離係数は遠心分離機の性能に左右されるが、分離された気体の六フッ化ウランを上手に取り出す方法である。 (長所) 遠心分離法はガス拡散法に比べ、分離係数が大きく電力消費量も少ない利点がある。 (短所) 遠心分離機は、回転胴を高周速で回転させるために製造面、運転面において高度な技術を要する。 (ATOMICA)

原子法:
現在研究開発中で、金属ウランを蒸発させて得られるウラン原子を用いる手法である。 ウラン原子蒸気のうちレーザー光によりU-235のみをイオン化し、これを電極に集めて濃縮ウランを得る。 (長所) 分離係数が特に大きく、効率よく軽水炉燃料用の低濃縮ウランが得られることが期待される。 (短所) これまでの核燃料サイクルに組み込まれていない金属ウランを用いること、 蒸発部、回収部では高温で腐食性の強い液体ウランのハンドリングが必要なことなどが、不利な点である。 (ATOMICA)

イオン交換法:
化学法あるいは化学交換法とも言われる。 6価ウラン、4価ウランが共存する水溶液中では、4価ウラン中のU-235の比率が6価ウラン中のU-235の比率よりも僅かに大きくなる。 従って、酸化剤を満たしたイオン交換塔に、6価・4価ウランを含む溶液を注入してウランを酸化させながら吸着層を形成し、 これに還元剤を注入してウラン吸着層を移動させると、ウラン吸着層で酸化還元が繰り返され、 吸着層後端部ではウランが濃縮され、前端部ではウランが劣化する。 (長所) 湿式のため臨界安全上高濃縮ウランをつくれず、核拡散防止に適合するという特徴もある。 (短所) 濃縮に時間がかかる。 (ATOMICA)

(4) UF6の特性と取扱い上の注意点を述べよ。

【解答例】

ウラン燃料の成型加工用原料は、天然ウランの六フッ化ウラン、濃縮されたあとの濃縮六フッ化ウランおよび 六フッ化ウランから再転換された濃縮二酸化ウランである。 六フッ化ウランは、常温では固体で無色の結晶である。 56.5℃で昇華し気体になるので、ウランの同位体分離(ウラン濃縮)に用いられる。 酸素や空気とは反応しないで比較的安定であるが、水と激しく反応しフッ化水素を生ずる。 このフッ化水素は激しい腐食性をもっており、生体への毒性も極めて強い。 したがって、六フッ化ウランの輸送は通常、固体の状態で行う。 六フッ化ウラン用の容器やパッキングなどでは厳重な防湿と密封性が必要であり、 また容器自体の臨界安全管理、放射線遮へい、温度・圧力管理の設計もなされる。 (ATOMICA)

(5) ウラン濃縮施設における保障措置について、再処理施設をはじめとする他の核燃料サイクル施設や 原子炉施設と比べてその特徴を述べよ。

【解答例】

ウラン濃縮施設は、商業機密上および核不拡散上機微な情報の多い施設であるため、 保障措置については、処理能力が約1,000tSWU/年規模までのウラン濃縮施設に対する 保障措置の在り方を検討する目的で1979年に国際的規模のヘキサパータイト保障措置プロジェクトという ワーキンググループが設けられ、2年間にわたり検討が行われた。
論議の中心は、カスケード区域内への立ち入り無しに保障措置の目的を達成できるか否かであった。 HSPでの検討の結果、ウラン濃縮施設の査察は、カスケード区域外と区域内の2区域に分類し、査察内容を整理した。 カスケード区域外での査察活動には、記録の確認、計量システムの評価、核物質の流れの検認および実在庫検認があり、 カスケード区域内の査察には、配管等の目視検認、配管内ウランの濃縮度を検認する非破壊測定技術等の 技術的手段および封印の適用を挙げている。
保障措置上のウラン濃縮度とは、
ウラン濃縮度=((233U+235U)重量/全ウラン重量)×100%
である。査察活動は大きく、以下の2つに分類される。 (1) 核物質が申告通りに工程内を流れ、在庫が申告通りであることの検認に必要な活動、 (2) 核物質の生産が申告された濃縮度の範囲(4~5%)以内であることの検認に必要な活動。 (ATOMICA)

第2問

次の文章はウラン燃料加工とMOX燃料加工の工程及び検査内容の相違点と共通点について述べたものである。 この文章について以下の問いに答えよ。

軽水炉用ウラン燃料加工とMOX燃料加工では、原料である核燃料物質の比放射能等の特性や 最小臨界量等の違いにより設備や内部被ばく管理、外部被ばく管理、臨界管理、保障措置及び核物質防護の内容は大きく異なる。 またA加工工程やB燃料検査項目についても両者にそれぞれ特有なものが存在する。

しかし、原料粉末の調整・成型-焼結・燃料棒の溶接密封・集合体組立といった基本的な加工の流れは同じである。

(1) 文中Aに関わり、軽水炉用ウラン燃料加工の工程にないMOX燃料加工に特有な工程にはどのようなものがあるか述べよ。

【解答例】

UO2ペレット製造のセラミック技術の延長としてMOXペレットは製造され、 その製造工程は粉末混合、粉末成型、焼結によるペレット製造、ペレットの被覆管への挿入による燃料要素製造、 燃料要素の組み込みによる集合体の完成と、ほぼ同じ工程の流れである。 特に燃料要素以降の工程は全く同じものである。 ただ、二酸化プルトニウム粉末と二酸化ウラン粉末を混ぜるというMOXに特有な工程が最初に追加されている。 この混合方法には粉末状態で混ぜる方法、ウラン・プルトニウムの硝酸溶液からの同時析出による方法などあるが、 何れも均一な分散と焼結後におけるプルトニウムスポットを小さくするよう努力が払われている。 (ATOMICA)

(2) 文中Bに関わり、軽水炉用ウラン燃料ペレットの検査項目にないMOX燃料ペレット特有の検査項目は何か、 また、当該検査にはどのような方法が用いられるか述べよ。

【解答例】

MOX燃料では、ペレット製造前の原料粉末の混合が不充分だと焼結時のプルトニウムとウランの固溶が進まず、 プルトニウム・リッチの相が残ることになる。これをプルトニウムスポットと読んでいる。

ペレット検査工程において、プルトニウムスポットの均一性、大きさをチェックする試験が行われることが、 ウラン酸化物燃料との違いである。 試験方法には、ペレットの表面を磨きα線に感じるフィルムを置いてプルトニウムからのα線を写真に捉えて、 大きさや均一性を検知するαオートラジオグラフィーが用いられている。

特に、我が国やフランスの高速炉用燃料では、それに加えて、X線粉末回折法により焼結ペレット中のウラン及び プルトニウムの二酸化物の回折ピークが完全に重なって固溶状態を示すようにならないと合格にしない といった厳重な検査法を併用している。 (ATOMICA)

(3) 文中Bに関わる燃料検査として、軽水炉用ウラン燃料棒(ガドリニア入り燃料は除く。)に ウラン濃縮度の異なるペレットが混入していないことを確認する検査が挙げられるが、 どのような検査方法が用いられるか。 検査原理についても簡単に述べよ。

【解答例】

newclears注: 「ウラン濃縮度の異なるペレットが混入していないことを確認する」ことに特化した検査方法については調べ切れていない。 以下に示すのは、一般的なウラン濃縮度の測定技術である。

質量分析
原子または分子のイオンをその質量電荷比やエネルギーで分離して、イオンの数または複数のイオンの相対的割合を測定する方法である。

パッシブ・アッセイ
235Uのα崩壊に伴う185.715keV γ線γ線検出器によって計数して、試料のウラン濃縮度を求める、 いわゆるパッシブ・ガンマ法は、ある意味では、もっとも広く用いられている濃縮度測定法である。

アクチブ・アッセイ
分析対象の核物質に放射線を投射して問いかけ、その応答として、核反応により生ずる放射線を測定することで 核物質を非破壊的に定量分析する方法を、アクチブ・アッセイと呼んでいる。 実際上、核分裂性物質が対象となるので、それを選択的に測定するために、中性子による核分裂反応を利用することが多い。

光学スペクトル法
原子スペクトルを利用する同位体比測定の原理は、対象同位体に特有なスペクトル線が存在し、 それが他の同位体に属するスペクトル線によって妨害されないほど十分に分離されていれば良く、 この意味では通常の発光分光分析と変わるところはない。

(4) 燃料加工施設のフードにおいて、少量の核燃料物質を含む粉末から分析用試料を分取する作業を行いたい。 この作業を安全に行うためのフード開口部の風速等の前提条件について述べよ。 また、本作業を行う上での作業装備等安全管理上の留意点を4つ以上述べよ。

【解答例】

(高放射性物質取扱施設 設計マニュアル 第IV章 閉じ込め機構 第1節 フード より抜粋)
1.2 構造:
本体はステンレス鋼板等で箱型であり、前面にはスライド式のガラス等の透明な扉を設け、 この扉を1/3程度開口した状態で使用する例が多い。
1.3 設計上の留意点:
フード作業の安全を確保するためには、その内部を強制排気して開口部からの流入風速を 所定の値に維持することにより、放射性物質のフード外への散逸を防止するのが原則である。 したがって、フード本体及び排気系の設計にあたっては、流入風速が確実に維持されるように留意する必要がある。 開口部の流入風速は、一般に30 m/min以上 90 m/min未満とされている。
1.4 使用実績:
フードは国内外で各種放射性同位元素の取扱いに広く用いられており、核燃料施設においては、 ウラン、プルトニウムの分析作業に用いられている。

安全管理上の留意点:

  • 半面マスクやゴム手袋、特殊作業衣を装備すること
  • 装備の使用前点検、フィッティングテストなど適切な装着を確実にすること
  • 装備が汚染した場合、汚染部位の拭き取りや固定(封じ込め)及びしめひもの締め付けの調整 といった措置を行うこと
  • 取り扱う物質が破裂、飛散する恐れがあることを警戒し、必要となる設備、資機材や要員等を確認すること

参考:JAEAプルトニウム事故について(1)事故の概要とその原因

第3問

次の文章は再処理施設及び軽水炉用ウラン燃料の加工施設における水素の爆発について述べたものである。 この文章について以下の問いに答えよ。

再処理施設においては、重大事故に至るおそれのある事故の1つとして[①高レベル濃縮廃液]を扱う貯槽や [②?]を扱う貯槽において設備・装置等のA故障等が要因となって起こり得る[③蒸発乾固]により発生する 水素ガスの滞留に起因する爆発が着目される。

この事故は、多数の箇所で同時期に発生する可能性があること及び重大事故に至るまでの[④時間的]な余裕などを考慮して、 喪失した機能の回復、重大事故への進展の防止等の対応を図る必要がある。 この場合、恒設設備に比べB可搬型設備による対応の方が基本的に有効と言われている。

軽水炉用ウラン燃料加工施設においては、水素ガスを使用する焼結炉がC爆発事故防止を考慮すべき設備の1つである。 このため、設計製作段階で爆発防止あるいは爆発による影響を緩和するため、 着火源となる静電気除去を目的とした適切な接地を行ない、炉本体保護のための過加熱防止機構を設ける。 これに加え、炉内への空気の混入による爆発を防止するため、炉内の圧力は炉外より高く管理し、 圧力低下時等には水素ガスの供給を停止し、[⑤窒素]ガスを炉内に導入する等の安全機構を設ける。

さらに焼結炉を設置する部屋には、[⑥地震感知器]を設け、異常を検知した場合は、 焼結炉への水素ガス供給を停止するための[⑦緊急遮断弁]を設ける等の対策を講じる。 また、炉外への水素ガスの漏えいを防止するため、 炉の出口で排気されるガス中の水素を[⑧燃焼]させてから排気ダクトに排出する構造としている。

(1) 文章中の空欄に入る適切な語句を番号とともに記せ。

参考:福島第一原子力発電所における事故を踏まえた核燃料サイクル施設の安全性に関する総合的評価の結果について

(2) 常温常圧下で空気と混合した場合の水素の爆発下限界濃度は概ね約何vol%か述べよ。

【解答例】

空気と混合した可燃性ガスが着火によって爆発を起こす最低濃度を爆発下限界 (LEL: Lower Explosion Limit)、 最高濃度を爆発上限界 (UEL: Upper Explosion Limit) とそれぞれ呼ぶ。 水素 (H2) の場合、LELは4.0 vol%UELは75.6 vol%。 (フィガロ技研株式会社、ガスに関する基礎知識)

(3) 文中下線部Aに関わる故障等にはどのような事象が想定されるか2つ以上述べよ。

【解答例】

冷却機能の喪失による高レベル濃縮廃液の沸騰。

(4) 文中下線部Bに関わる可搬型設備としてはどのようなものがあるか2つ以上述べよ。

【解答例】

空気圧縮機、圧力計、流量計、フィルタ、排風機、ダクト、発電機、水素濃度計。

以下、水素爆発に対する発生防止対策(日本原燃株式会社)より一部抜粋

  • 機器及びセルの水素濃度を測定するために、可搬型水素濃度計を設置する。
  • 塔槽類廃ガス処理設備の雰囲気を導出したセルの圧力を監視するため、可搬型セル内圧力計を設置する。
  • セルに導出した塔槽類廃ガス処理設備の雰囲気を排気するため、可搬型フィルタ、可搬型排風機及び可搬型ダクトを接続する。
  • 可搬型排風機により分離建屋換気設備のセル換気系統を排気するため、可搬型発電機からの給電ケーブルを接続(給電)し、可搬型排風機の起動準備をする。
  • 発生防止対策または拡大防止対策実施後、セル内圧力計による指示値の上昇を確認したら可搬型排風機を起動する。

(5) 文中下線部Cに関わり、軽水炉用ウラン燃料加工施設の焼結炉の運転中にどのような故障が起こった場合に 爆発事故発生の可能性が生じるか2つ以上述べよ。

【解答例】

爆発事故の原因としては、焼結設備炉内の水素ガスが室内へ漏えいして空気と混合した場合、炉内へ空気が混入した場合、 及びその他異常事態での焼結設備の破損等により水素が漏えいした場合が考えられる。
下記により安全対策が講じられているので、関連する装置の故障が起こると爆発事故につながることになる。

  1. 焼結炉外に混合ガスが漏えいしないようにするため、オフガス配管出口で燃焼させてから排気ダクトに排出している。
  2. 焼結炉内への空気の混入による混合ガスの爆発を防止するため、焼結炉内で使用される混合ガスの圧力が低下すると 自動的に警報を発し、混合ガス供給を遮断して、窒素ガスを焼結炉内に導入する安全装置を設置している。
  3. 万一、焼結炉内の圧力が上昇しても安全弁により内圧を逃がす構造としている。
  4. 循環冷却水により、焼結炉の主要部の冷却を行っており、冷却水の圧力が低下した場合に、自動的に警報を発する機構を設けている。
  5. 混合ガスの焼結炉外への漏えいに備え、自動的に警報を発する水素ガス検知器を設置している。
  6. 焼結設備は電気加熱であり、電源の遮断により焼結炉内温度の過加熱を防ぐ機構を設けている。

(福島~事故を踏まえた核燃料サイクル施設の安全性に関する総合的評価の結果について)

焼結炉の運転中における水素ガス供給設備の故障に伴い、焼結炉内の水素ガス圧力が低下し、 かつ圧力計の故障により、窒素ガス自動切替インターロックが作動しなかった場合に、 工程室内の空気が焼結炉内に混入し、焼結炉の炉内爆発が発生する。 (新規制基準を踏まえた安全対策について、原子燃料工業株式会社 東海事業所)

(6) MOX燃料加工施設においても、焼結炉は爆発事故防止を考慮すべき設備である。 MOX燃料加工施設の焼結炉の構造や基本的な安全管理の方法は軽水炉用ウラン燃料加工施設の焼結炉とほぼ同様であるが、 相違する点もある。その相違点にはどのようなものがあるか2つ以上述べよ。

【解答例】

newclears注: 相違点については調べ切れていない。以下に示すのは、MOX燃料加工施設の焼結炉での水素爆発発生防止対策である。

焼結炉等での水素爆発の発生を防止するため、以下の対策を講ずる。

  1. 焼結炉等は、グリーンペレットを高温で焼結処理する装置である。
    焼結炉等の炉内が異常な高温になると焼結炉等の閉じ込め機能が維持できなくなり、焼結炉等内に空気が混入し、 爆発に至るおそれがある。このため、焼結処理する温度に裕度を考慮し、これを熱的制限値として1800℃を設定する。 また、使用温度が熱的制限値(1800℃)を超えないように、温度制御機器により炉内の温度を制御する設計とする。 さらに、使用温度が熱的制限値を超えるおそれのある場合には、過加熱防止回路によりヒータ電源を自動で遮断する設計とする。
  2. 焼結炉等は、爆発を防止するため、溶接又は継手により空気が流入しにくい構造とする。
    また、焼結炉等の水素・アルゴン混合ガスを受け入れる配管内に逆止弁を設置し、 水素・アルゴン混合ガスの配管が破断した場合は、水素・アルゴン混合ガスの供給圧力が低下することで 焼結炉等内への空気の流入を防止する設計とする。 炉内への空気の流入を監視する目的で酸素濃度計を設置する設計とする。 炉内への空気の流入が検知された場合、警報を発するような対応とともに、 空気が流入した設備のヒータ電源を自動で遮断し、不活性のアルゴンガスで掃気する設計とする。
  3. 炉体の冷却及び炉外への水素・アルゴン混合ガスの漏えい防止の措置を講ずることにより、爆発の発生を防止する。
  4. 焼結炉等の排ガスは、水素濃度を低下させるために、排ガス処理装置又は小規模焼結炉排ガス処理装置により
    当該グローブボックス内の雰囲気で希釈し、排気する設計とする。 排ガスは、焼結炉等から排気される排ガス量とグローブボックスの給気量の比により、爆発下限値以下になるよう希釈する。

第4問

再処理施設では様々な放射性廃棄物が発生し、それぞれに対して適切な処理を行っている。 通常運転時に発生する気体廃棄物に関する以下の問いに答えよ。

(1) 再処理施設において気体廃棄物となる主な放射性物質(元素又は同位体)を4つ挙げよ。

【解答例】

  • ヨウ素(I-129等)
  • クリプトン(Kr-85等)
  • キセノン(Xe-133等)
  • トリチウム(H-3)
  • 炭素(C-14)

気体廃棄物は、主として剪断・溶解工程において燃料ピンのプレナム部に貯留していたヨウ素希ガス等の放射性ガスである。 核燃料中に核分裂生成物として生成する気体はモル比で80%以上がXeであるが、半減期が短い(Xe-133半減期5.3日)ため 再処理開始までの6か月程度の冷却期間中にほとんど減衰し、Kr-85、トリチウムが主な核種となる。 I-131(半減期8.02日)などの短半減期放射性ヨウ素は使用済燃料プールでの冷却期間中に殆ど減衰し消滅する。 (atomica 再処理廃棄物の特性, 放射性気体)

(2) 上記で挙げた気体廃棄物となる元素のうち2つについて、国内外の再処理工場で行われている処理法を説明せよ。

【解答例】

newclears注: 再処理工場で実績があるかどうかは調べがついていない。 以下に示すのは放射性気体廃棄物の一般論である。(atomicaより)

ろ過法: プレフィルタ、アブソリュート・フィルタを通し、気体中に含まれるダストを処理する。 ダスト、微粒子の除去に効果がある。 (別解) 焼結フィルタやHEPAフィルタでろ過後、アルカリ液等で洗浄し、 さらにHEPAフィルタとヨウ素除去に効果のある銀吸着剤で処理を行っている。

減衰法: タンクに貯留して放射能を減衰処理する。減衰管を通す処理方法もある。 放射能が少量の場合、短半減期の気体処理に適する。 沸騰水型軽水炉に採用されている希ガス・ホールドアップ装置は、活性炭を用いて、 Xe, Kr等の希ガスを吸着させながら減衰させてゆく方法である。

希釈法: 大量の空気にまぜて薄め、放射能濃度を許容レベル以下にする。 特別の処理を必要とせず、運転経費が安い。

(3) 再処理施設内の工程のうち気体廃棄物の発生量が最も多い工程を挙げよ。

【解答例】

再処理施設から発生する気体廃棄物は、溶解槽、廃液貯槽等の槽類換気系排気の他、 燃料剪断装置、セル換気系、建屋換気系からの排気に含まれるものである。 この内、最も放射能レベルの高いものは使用済燃料剪断時の剪断オフガスおよび溶解時の溶解オフガスであり、 ヨウ素希ガスが含まれている。 剪断工程では、燃料棒内にたまっていたガス状FPが放出され、また溶解工程では溶解時に残っていた ガス状FPや硝酸との溶解反応により揮発性化合物となったFPが放出される。 (atomica 再処理施設からの放射性廃棄物の処理)

年間放出基準は、 Kr-85 ~107 GBq, H-3 ~105 GBq, C-14 ~103 GBq, I-129 ~100 GBq とKr-85が桁違いに大きく、Kr-85が多く放出されるのは使用済燃料の剪断工程及び溶解工程である。

(4) 以下の正しいものに〇、正しくないものに×をつけよ。
① 気体廃棄物とは、気体の放射性核種を含む空気である。
② 気体廃棄物は液体廃棄物と同様、放出基準値を下回る値で放出される設計となっている。
③ 気体廃棄物は、すべてフィルターや吸着材によってトラップされて除去される。
④ 再処理施設では燃料を溶解して処理するため原子力発電所と比べて大量の気体廃棄物が発生する。
⑤ 同じ元素でも気体廃棄物と液体廃棄物の両方に含まれるものがある。

【解答例】

① 気体廃棄物とは、気体の放射性核種を含む空気である。 ×。 空気に限らず、プロセス排ガスや放射性の微粒子を含んだエアロゾルも気体廃棄物として扱う。

② 気体廃棄物は液体廃棄物と同様、放出基準値を下回る値で放出される設計となっている。

③ 気体廃棄物は、すべてフィルターや吸着材によってトラップされて除去される。 ×。 特に希ガスは反応性が低くトラップするのが難しいが、希釈して基準値を下回れば放出できる。

④ 再処理施設では燃料を溶解して処理するため原子力発電所と比べて大量の気体廃棄物が発生する。 ×。 再処理施設の方が大量であるというデータは見当たらない。 原子力発電所から放出される気体廃棄物は、BWRでは主に復水器空気抽出器排ガスであり、 PWRでは体積制御タンクのパージガスおよび各機器のベントガスである。(atomica)

⑤ 同じ元素でも気体廃棄物と液体廃棄物の両方に含まれるものがある。 。 分かりやすいものでは、トリチウムがそうである。

第5問

次の文章は核燃料施設における臨界管理の基本事項について述べたものである。 この文章について以下の問いに答えよ。

再処理施設や核燃料加工施設において臨界安全管理を必要とする設備では、 [①質量]管理、A寸法形状管理、[②濃度]管理、[③同位体組成]管理、 B中性子吸収材管理、減速材管理及びこれらの組み合わせにより、 [④単一ユニット]として臨界を防止する設計が行われる。

さらに[⑤複数ユニット]については、[④単一ユニット]相互間の適切な配置と耐震性確保による配置維持、 [④単一ユニット]相互間における中性子吸収材の使用やこれらの組み合わせにより臨界を防止する設計が行われる。 その際、施設の臨界安全設計はC二重偶発性の原則の思想に基づいて実施される。

なお、ともにプルトニウムを扱う施設であるが、一般的にD再処理施設の方がMOX燃料加工施設に比べ、 より厳しい臨界安全設計と管理が要求される。

(1) 文章中の空欄に入る適切な語句を番号とともに記せ。なお、同じ番号の空欄には、同じ語句が入る。

(2) 文中Aに関わる寸法形状管理とはどのような原理で臨界を防止する管理方法か、貯槽を例に挙げて説明せよ。

【解答例】

核分裂性物質を含む物質又はそれを入れる容器の形状寸法がある値以上にならないように制限する管理のことを言う。
同じ量の核分裂物質でも、その形状により臨界に達する場合と達しない場合がある。 一般に核分裂物質の形状が細長かったり、薄い板状であれば、内部で発生する中性子の多くが外部へ飛び出してしまい、 核分裂反応に寄与しなくなるため、臨界に達しなくなる。 逆に物質の体積当たり最小の表面積となる球状の時、臨界量は最も少なくなる。
また、同じ形状であっても、体積が大きくなるにつれて、体積当たり表面積は小さくなり、 外部へ飛び出す中性子が減少するため、臨界しやすくなる。 貯槽の場合、そのような形状や寸法を設計することで、想定外の核分裂性物質を含む溶液が流入したとしても 臨界にならないように管理する方法である。 特に、どのような濃度になろうとも臨界にならないようにその形状を制限する安全設計を 全濃度安全形状寸法管理という。 (参考文献:松岡伸吾、六ケ所再処理施設の安全設計と安全評価、日本原子力学会誌。 Wikipedia 臨界量の項。)

(3) 文中Bに関わる中性子吸収材にはどのようなものがあるか2つ以上述べよ。

【解答例】

中性子の吸収反応が容易に起こる物質を中性子吸収材という。 たとえば、ホウ素(B)、カドミウム(Cd)、キセノン(Xe)、ハフニウム(Hf)、などの元素、 またはこれらを含む物質である。 ガドリニウム(Gd)も、中性子吸収断面積が非常に大きいので、原子炉の制御材料に用いられる。 (atomica)

具体例としては、ホウ酸水、炭化ホウ素、制御棒(カドミウム合金他)など。

(4) 文中Cに関わる二重偶発性の原則とはどのようなものか述べよ。

【解答例】 二重偶発性の原則とは、 「起こるとは考えられない独立した二つ以上の異常が同時に起こらない限り臨界に達しない」 ということ。 (小林岩夫、ウラン加工指針の改訂(案)、日本原子力学会誌)

(5) 文中Dに関わり、再処理施設の方がMOX燃料加工施設に比べてより厳しい臨界安全管理が要求される理由を述べよ。

未解答・・・

(6) 再処理施設とMOX燃料加工施設で万が一、臨界事故が起きた場合、事故の特徴の違いを述べよ。

未解答・・・

第6問

核燃料物質等の取扱いに関して、次の事項を簡潔に説明せよ。

(1) 保障措置の目的
(2) PUREX法
(3) 再処理施設で発生する高レベル放射性廃液はガラス固化される。 このガラス固化体の最終処分法について、我が国で対応が進められている方法について。
(4) 核セキュリティと核物質防護の違い
(5) 核燃料輸送に係る「特別の試験」の内容及び試験適用対象輸送物

【解答例】

(1) 保障措置の目的:
保障措置の目標(目的)は、有意量の核物質が平和的な原子力活動から核兵器その他の核爆発装置の製造のため 又は不明な目的のために転用されることを適時に探知することおよび早期探知の危惧を与えることにより そのような転用を阻止することである。 (atomica)

(2) PUREX法:
PUREX法は、研究開発進捗度が高い再処理技術のひとつである。 高除染でウラン及びプルトニウムを個別に回収することを目的に開発された溶媒抽出プロセスであり、 抽出剤としてリン酸トリブチル(TBP)を使用する。 使用済燃料溶解液よりウラン、プルトニウムを共抽出後、還元剤を用いてウランとプルトニウムを分離し、 精製することにより高除染のウラン溶液及びプルトニウム溶液を個別に回収している。 現時点において最も完成度の高い再処理技術であるが、将来、核拡散抵抗性の更なる向上に関する 国際的な制約の強化の影響を受ける可能性がある。 (核燃料サイクル分野の今後の展開について、第28回原子力委員会資料第1-1号、平成21年)

(3) ガラス固化体の最終処分法:
ガラス固化体(高レベル放射性廃棄物)は、放射能のレベルが高いため、 人間の生活環境に影響を及ぼさないよう長期間にわたって確実に隔離する必要がある。 これまでに発生したガラス固化体は、冷却するため、青森県六ヶ所村にある日本原燃(株) 「高レベル放射性廃棄物貯蔵管理施設」で30~50年間貯蔵する。 その後、人間の生活環境に影響を及ぼさない、地下300メートルより深い安定した地層中に処分(地層処分) する予定である。 この処分方法は、地下深部の地層が本来持っている「物質を閉じ込める力」を利用したもので、 日本を含め国際的にも最も好ましい共通の考え方となっている。 (高レベル放射性廃棄物の処理処分、日本原子力発電株式会社)

(4) 核セキュリティと核物質防護の違い:
核物質防護とは、原子力施設への妨害破壊行為及び使用、貯蔵、輸送中の核物質の盗取や妨害破壊行為から 核物質や施設を守るための対策である。 施設に対する防護措置の例としては、防護区域等の設定、監視や巡回の実施、防護設備・機器の設置、 施設や区域への出入管理等がある。 一方、核セキュリティとは、核物質のみならず、放射性同位元素を含む全ての放射性物質を対象とした 核テロ対策を含む防護措置である。 具体的には、テロリスト等による核物質や放射線源の悪用が想定される (1) 核兵器の盗取、 (2) 盗取された核物質を用いた核爆発装置の製造、 (3) 放射性物質の発散装置の製造、 (4) 原子力施設や放射性物質の輸送等に対する妨害破壊行為 の四つの脅威が現実のものとならないよう取られる措置を言う。

補足:2001年9月11日に米国内で航空機等を用いた4つのテロ事件が同時多発的に発生した。 航空機が使用された史上最大規模のテロ事件であり、全世界に衝撃を与えた。 この事件が契機となり、これまで使用されていた「核物質防護」から「核セキュリティ」 という言葉が使用されるようになった。 核物質に着目した場合は、核物質防護という言葉が使用される。 (核物質防護、核セキュリティとは、公益財団法人 核物質管理センター

(5) 核燃料輸送に係る「特別の試験」の内容及び試験適用対象輸送物:
放射性収納物の放射能量や物理的形態に従って、 L型輸送物、IP型輸送物、A型輸送物、B型輸送物 と分類されるが、A型には一般の試験条件が、B型(核分裂性)輸送物には一般と特別の試験条件が課せられる。 特別の試験には落下試験、耐火試験、浸漬試験があり、その内容は以下の通り。 (atomica)

試験名 試験条件
落下試験Ⅰ 9 mの高さから落下
落下試験Ⅱ 1 mの高さから丸棒上に落下
耐火試験 800℃で30分
浸漬試験(核分裂性輸送物) 深さ0.9 mの水中に8時間
浸漬試験(BM型輸送物) 深さ15 mの水中に8時間
浸漬試験(A2値の10万倍を超える放射能 深さ200 mの水中に1時間