第35回 核燃料取扱主任者試験 核燃料物質に関する法令

第35回 核燃料取扱主任者試験 核燃料物質に関する法令

第1問

次の文章は,「原子力基本法」及びその関係政令並びに「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」 (以下,本問において「原子炉等規制法」という。)の条文の一部である。 文章中の空欄にあてはまる適切な語句を番号とともに記せ。 (なお,同じ番号の空欄には同じ語句が入る。)

(1) 原子力基本法
(目的)
第一条 この法律は,原子力の研究,開発及び利用を推進することによって,将来における[①エネルギー資源]を確保し, 学術の進歩と産業の振興とを図り,もつて[②人類社会の福祉]と国民生活の水準向上とに寄与することを目的とする。

(基本方針)
第二条 原子力の研究,開発及び利用は,[③平和]の目的に限り,安全の確保を旨として, [④民主的な運営]の下に,[⑤自主的]にこれを行うものとし,その成果を公開し,進んで国際協力に資するものとする。

(定義)
第三条 この法律において次に掲げる用語は,次の定義に従うものとする。
一 「原子力」とは,[⑥原子核変換]の過程において[⑦原子核]から放出されるすべての種類の[⑧エネルギー]をいう。
二 「核燃料物質」とは,ウラン,トリウム等[⑨原子核分裂]の過程において[⑩高エネルギー]を放出する物質であつて,政令で定めるものをいう。
三 「核原料物質」とは,ウラン鉱,トリウム鉱その他[⑪核燃料物質]の原料となる物質であつて,政令で定めるものをいう。
四 「原子炉」とは,核燃料物質を燃料として使用する装置をいう。ただし,政令で定めるものを除く。
五 「放射線」とは,[⑫電磁波]又は粒子線のうち,直接又は間接に空気を[⑬電離]する能力をもつもので,政令で定めるものをいう。

(2) 核燃料物質,核原料物質,原子炉及び放射線の定義に関する政令
(核燃料物質)
第一条 原子力基本法第三条第二号の核燃料物質は,次に掲げる物質とする。
一 ウラン二三五のウラン二三八に対する比率が[⑭天然の混合率]であるウラン及びその化合物
二 ウラン二三五のウラン二三八に対する比率が[⑭天然の混合率]に達しないウラン及びその化合物
三 トリウム及びその化合物
四 前三号の物質の一又は二以上を含む物質で原子炉において燃料として使用できるもの
五 ウラン二三五のウラン二三八に対する比率が[⑭天然の混合率]をこえるウラン及びその化合物
六 [⑮プルトニウム]及びその化合物
七 ウラン二三三及びその化合物
八 前三号の物質の一又は二以上を含む物質

放射線
第四条 原子力基本法第三条第五号の放射線は,次に掲げる[⑫電磁波]又は粒子線とする。
一 アルフア線,重陽子線,陽子線その他の重荷電粒子線及びベータ線
二 [⑯中性子
三 ガンマ線及び特性エックス線(軌道電子捕獲に伴つて発生する特性エックス線に限る。)
四 一メガ電子ボルト以上のエネルギーを有する電子線及びエックス線

(3) 原子炉等規制法
(目的)
第一条 この法律は,[⑰原子力基本法]の精神にのつとり,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の利用が[③平和]の目的に限られ, かつ,これらの利用が[⑱計画的]に行われることを確保するとともに, これらによる[⑲災害]を防止し,及び核燃料物質を[⑳防護]して,公共の安全を図るために, 製錬,加工,貯蔵,再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関する必要な規制等を行うほか, 原子力の研究,開発及び利用に関する条約その他の国際約束を実施するために, 国際規制物資の使用等に関する必要な規制等を行うことを目的とする。

備考

第2問

次の問に答えよ。

(1) 次の(ア)から(ス)は,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づく 核燃料物質の加工の事業に関する規則に規定された保安規定に定めるべき事項である。 文章中の空欄にあてはまる適切な語句を番号とともに記せ。

(ア)加工施設の操作及び管理を行う者の職務及び組織に関すること。
(イ)加工施設の放射線業務従事者に対する[①保安教育]に関すること。
(ウ)[②保安上特に管理を必要とする設備]の操作に関すること。
(エ)[③管理区域及び周辺監視区域の設定]並びにこれらの区域に係る立入制限等に関すること。
(オ)線量,線量当量,放射性物質の濃度及び放射性物質によつて汚染された物の表面の放射性物質の密度の監視並びに[④汚染の除去]に関すること。
(カ)放射線測定器の管理及び放射線の測定の方法に関すること。
(キ)加工施設の[⑤巡視、点検及び検査]並びにこれらに伴う処置に関すること。
(ク)加工施設の[⑥施設定期自主検査]に関すること。
(ケ)核燃料物質の受渡し,運搬,貯蔵その他の取扱いに関すること。
(コ)放射性廃棄物の廃棄に関すること。
(サ)[⑦非常の場合採るべき]処置に関すること。
(シ)加工施設に係る保安([⑧保安規定の遵守状況]を含む。)に関する記録に関すること。
(ス)その他加工施設に係る保安に関し必要な事項

(2) 核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律に基づき,地震,火災その他の災害が起こつたことにより, 核燃料物質若しくは核燃料物質によつて汚染された物又は原子炉による災害が発生するおそれがあり,又は発生した場合においては 危険時の措置として応急の措置をとらなければならないとされているが,次の(セ)から(テ)は,そのような措置として, 核燃料物質の加工の事業に関する規則に規定されている事項である。 文章中の空欄にあてはまる適切な語句を番号とともに記せ。

(セ)加工施設に火災が起こり,又はこれらの施設に延焼するおそれがある場合には, 消火又は延焼の防止に努めるとともに直ちにその旨を消防吏員に通報すること。
(ソ)核燃料物質を他の場所に移す余裕がある場合には,必要に応じてこれを安全な場所に移し, その場所の周囲には,なわ張り,標識等を設け,かつ,見張人をつけることにより,[⑨関係者以外のものが立入ること]を禁止すること。
(タ)放射線障害の発生を防止するため必要がある場合には,加工施設の内部にいる者及び附近にいる者に[⑩避難するよう警告]すること。
(チ)核燃料物質による汚染が生じた場合には,すみやかに,その[⑪広がりの防止及び除去]を行なうこと。
(ツ)[⑫放射線障害を受けた者]又は[⑬受けたおそれのある者]がいる場合には,すみやかに救出し,避難させる等緊急の措置を講ずること。
(テ)その他放射線障害を防止するために必要な措置を講ずること。

(3) 加工の事業に関する規制に関する以下の(卜)から(ノ)の文章について, 文章中の空欄にあてはまる適切な語句又は数値を番号とともに記せ。
(ト)加工事業者は,保安規定を定め,[⑭事業開始前]に経済産業大臣の認可を受けなければならない。
(ナ)加工事業者は,周辺監視区域を定め,同区域については,[⑮人の居住]を禁止する措置を講じなければならない。
(ニ)加工事業者は,保安規定の遵守の状況について,毎年[⑯]回,経済産業大臣が定期に行う検査を受けなければならない。
(ヌ)加工事業者は,[⑰毎日]一回以上,従業者に,加工施設について巡視及び点検を行わせなければならない。
(ネ)加工事業者は,警報装置,非常用動力装置その他の非常用装置については, 当該装置の各部分ごとの当該作動のための性能検査を[⑱1月]ごとに, 当該装置全体の当該作動のための総合検査を[⑲1年]ごとに行うこと。
(ノ)加工事業者は,核燃料物質等が異常に漏えいしたとき,その旨を直ちに, その状況及びそれに対する処置を[⑳10日]以内に経済産業大臣に報告しなければならない。

備考

  • 加工規則第8条
  • 加工規則第11条
  • 法律第22条
  • 加工規則第7条の2の2
  • 加工規則第8条の2
  • 加工規則第7条の4の2
  • 加工規則第10条

第3問

次の(1)から(10)は,「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」及びこれに関連する法令に関するものである。 文章中の下線部の記述について,その内容が正しいものには○印を,誤っているものには×印を番号とともに記せ。 また,×印を記したものについては,その理由を記せ。

(1) 加工事業者は,核燃料物質の取扱いに関して保安の監督を行なわせるため, 核燃料取扱主任者免状を有する者のうちから,核燃料取扱主任者を選任しなければならない。
解答例:○ 備考:法律第22条の2

(2) 核燃料取扱主任者の選任は,工場又は事業所ごとに行なうものとする。
解答例:○ 備考:加工規則第8条の2

(3) 加工事業者は,核燃料取扱主任者を選任したときは,選任した日から2週間以内に,その旨を経済産業大臣に届け出なければならない。
解答例:× 訂正:30日以内に。 備考:法律第22条の2の2

(4) 加工事業者は,核燃料取扱主任者を解任したときは,ただちに,その旨を経済産業大臣に届け出なければならない
解答例:× 訂正:解任した日から30日以内に届け出る。 備考:法律第22条の2の2

(5) 経済産業大臣は,この法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反し,罰金以上の刑に処せられ,その執行を終わり, 又は執行を受けることがなくなつた後,一年を経過していない者に対しては,核燃料取扱主任者免状の交付を行なわないことができる。
解答例:× 訂正:二年を経過していない者に対しては。 備考:法律第22条の3

(6) 経済産業大臣は,核燃料取扱主任者免状の交付を受けた者がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反したときは, その核燃料取扱主任者免状の返納を命ずることができる
解答例:○ 備考:法律第22条の3

(7) 加工事業者により選任された核燃料取扱主任者は,加工の事業における核燃料物質の取扱いに関し, 誠実にその職務を遂行しなければならない
解答例:○ 備考:法律第22条の4

(8) 加工の事業において核燃料物質の取扱いに従事する者は, 核燃料取扱主任者がその取扱いに関して保安のためにする指示に従わなければならない。
解答例:○ 備考:法律第22条の5

(9) 経済産業大臣は,加工事業者により選任された核燃料取扱主任者がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反したときは, 加工事業者に対し,核燃料取扱主任者の解任を命ずることができる
解答例:○ 備考:法律第22条の5

(10) 加工事業者は,特定核燃料物質の防護に関する業務を統一的に管理させるため,核燃料取扱主任者免状を有する者のうちから, 核物質防護管理者を選任しなければならない。 解答例:× 訂正:総理府令で定めるところにより、特定核燃料物質の取扱い等の知識等について総理府令で定める用件を備える者。 備考:法律第22条の7

第4問

次の文章は,「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」及びこれに関連する法令において定められている 核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の廃棄に関するものである。 文章中の空欄にあてはまる適切な語句を番号とともに記せ。

加工事業者は,核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物(以下,本問において「核燃料物質等」という。)を, 加工施設を設置した工場又は事業所において廃棄する場合には, [①保安]のために必要な措置を講じなければならない。 当該措置には以下の措置が含まれる。

(1) 核燃料物質等で廃棄しようとするもの(以下,本問において「放射性廃棄物」という。)の廃棄は, 廃棄及び廃棄に係る[②放射線防護]について必要な知識を有する者の監督の下に行わせること。

(2) 気体状の放射性廃棄物を排気施設によって排出する場合は,排気施設において,[③ろ過], 放射能の時間による[④減衰],多量の空気による[⑤希釈等] その他の方法によって排気中における放射性物質の[⑥濃度]をできるだけ低下させること。

(3) 液体状の放射性廃棄物を排水施設によって排出する場合は,排水施設において, [⑦ろ過],[⑧蒸発],イオン交換樹脂法等による[⑨吸着], 放射能の時間による[⑩減衰],多量の水による[⑪希釈] その他の方法によって排水中における放射性物質の[⑫濃度]をできるだけ低下させること。

(4) 液体状の放射性廃棄物を[⑬放射線障害防止]の効果を持った廃液槽に保管廃棄する場合は, 保管廃棄される放射性廃棄物の[⑭崩壊熱]等により著しい[⑮加熱]が生じる恐れがあるときは, [⑯冷却]について必要な措置を採ること。

(5) 液体状の放射性廃棄物を容器に封入して[⑰放射線障害]の効果を持った保管廃棄施設に保管廃棄する場合において, 当該容器は,[⑱]が浸透しにくく,[⑲腐食]に耐え,及び[⑳放射性廃棄物]が漏れにくい構造でなければならないこと。

備考

  • 法律第21条の2
  • 加工規則第7条の8

第5問

「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」(以下,本問において「原子炉等規制法」という。)に基づき, 核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物(以下,本問において「核燃料物質等」という。)を 工場等の外において運搬する場合,次の文章の空欄にあてはまる適切な語句又は数値(必要に応じて単位を付すこと。)を番号とともに記せ。 (なお,同じ番号の空欄には同じ語句又は数値が入る。)

【運搬に関する確認等】

使用者,製錬事業者,加工事業者,原子炉設置者,外国原子力船運航者,使用済燃料貯蔵事業者, 再処理事業者及び廃棄事業者並びにこれらの者から運搬を委託された者(以下「使用者等」という。)は, 核燃料物質等を工場等の外で運搬する場合において,原子炉等規制法に基づき主務省令で定める[①技術上の標準]に従って [②保安]のために必要な措置を講じなければならない。

運搬する核燃料物質に,政令で定める[③特定核燃料物質]を含む場合は, [②保安]及び[③特定核燃料物質]の防護のために必要な措置を講じなければならない。

核燃料物質等による災害の防止及び[③特定核燃料物質]の防護のため特に必要がある場合として政令で定める場合 ([④]型輸送物及び,[⑤核分裂]輸送物及び0.1 kg以上の[⑥六フッ化ウラン]を収納する輸送物を運搬する場合)に該当するときは, 使用者等は,その運搬に関する措置が主務省令の[①技術上の標準]に適合することについて, 主務省令で定めるところにより主務大臣の[⑦確認]を受けなければならない。

使用者等は,運搬に使用する容器について,あらかじめ,主務省令で定めるところにより,主務大臣の承認を受けることができる。 この場合において,主務大臣の承認を受けた容器(「[⑧承認容器]」という。)については, [①技術上の標準]のうち容器に関する基準は,満たされたものとする。

使用者等は,[③特定核燃料物質]等を運搬する場合,当該運搬の経路のある区域を管轄する[⑨都道府県委員会]に届け出て, 届出を証明する文書(「[⑩運搬証明書]」という。)の交付を受けなければならない。

【輸送物の区分】

放射能放射能の量,線量当量率を基準として,核燃料物質等を以下のような輸送物に区分している。 更に,[⑪未臨界性]の確保が必要な輸送物は,[⑤核分裂]輸送物とされる。

(a) [⑫放射能],[⑬線量当量率]が極めて小さく(表面における[⑬線量当量率]が[⑭5 μSv]を超えない), かつ,危険性が極めて少ない核燃料物質として主務大臣の定めるもの
…………[⑮]型輸送物

(b) 主務大臣の定める量を超えない[⑫放射能]を有する核燃料物質等
…………A型輸送物

(c) 主務大臣の定める量を超える[⑫放射能]を有する核燃料物質等
…………[④]型輸送物
なお,[④]型輸送物のうち,[⑯BM]型輸送物は国際輸送において関係する全ての国の承認が必要となる輸送物である。

(d) 放射能濃度が低い核燃料物質等であって危険性が少ないもの(「[⑰低比放射性物質]」という。)及び 核燃料物質等によって表面が汚染された物であって危険性が少ないもの(「表面汚染物」という。)は, 主務大臣の定める区分に応じ,[⑱IP]型輸送物として運搬することができる。

【輸送時の放射線被ばく及び臨界安全性の管理】

従来,輸送物等(オーパーバック,貨物コンテナ,非梱包のLSA-1, SCO-1を含む)について, 臨界安全性及び輸送中の放射線被ばくの両方を管理する指数として[⑲輸送指数]が用いられていたが, IAEA安全輸送規則の改訂に伴い,平成13年の「核燃料物質等の工場又は事業所の外における運搬に関する規則」等の改正において, 核分裂性物質を含む輸送物等の集積の臨界安全性を管理するために[⑳臨界安全指数]が新たに定義され, 放射線被ばくの管理に用いられる指数は,従来の呼称である[⑲輸送指数]として再定義されている。

備考

  • 法律第59条の2
  • 外運搬規則第11条の2
  • 外運搬規則第11条の2
  • 外運搬規則第3条
  • 放射性物質安全輸送規則

newclears注: ④は、⑯が「BM」で正しいとすると、「BU」ではなく「B」が正答の可能性が高い。
⑤は自信がないが、⑥が「六フッ化ウラン」で正しいとすると、同じく六フッ化ウランでは誤りで、 別のくくりの輸送物の方が適切と思われる。そこで、核分裂性輸送物が候補になる。 その場合、核分裂性輸送物といえば特に臨界管理が必要になるから、⑪は「負圧」ではなく「未臨界性」が適切だと考えられる。 参考画像(出典:原子力規制委員会/輸送物の分類と運搬物確認対象範囲

f:id:newclears:20191030213906p:plain
輸送物の分類及び具体例

出典

谷内 茂康; 佐藤 忠; 須賀 新一; 小室 雄一; 内田 正明; 中島 邦久; 中村 仁一; 雨澤 博男; 大村 英昭; 湊 和生; 武田 常夫; 櫛田 浩平; 傍島 眞 核燃料取扱主任者試験問題・解答例集,1999~2003年, JAERI-Review 2003-025,https://doi.org/10.11484/jaeri-review-2003-025