第36回 核燃料物質に関する法令

核燃料物質に関する法令

核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」及びその関係法令につき解答せよ。 以下の問において、「原子炉規制法」とは、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」をいう。

第1問

次の問に答えよ。

(1) 核燃料物質の加工の事業に関する規則第7条の5に規定する 加工事業者が採るべき加工設備の操作に関する措置を5つ挙げよ。

解答例
加工規則第7条の5(加工設備の操作)参照。 1号から8号のうち5つ記載する。

(加工設備の操作)
第七条の五 法第二十一条の二第一項の規定により、加工事業者は、次の各号に掲げる加工設備の操作に関する措置を採らなければならない。ただし、法第二十二条の八第二項の認可を受けた場合は、この限りでない。
一 核燃料物質の加工は、[加工設備]で行うこと。
二 核燃料物質の加工は、いかなる場合においても、核燃料物質が[臨界に達するおそれが]ないように行うこと。
三 加工設備の操作に[必要な知識]を有する者に行わせること。
四 加工設備の操作に[必要な構成人員]がそろつているときでなければ操作を行わないこと。
五 操作開始に先立つて[確認すべき事項]、操作に必要な事項及び操作停止後に[確認すべき事項]を定め、これを操作員に守らせること。
六 [非常の場合に採るべき]処置を定め、これを操作員に守らせること。
七 [換気設備、放射線測定器及び非常用設備]は、常にこれらの機能を発揮できる状態に維持しておくこと。
八 加工設備の操作の[訓練]のために操作を行う場合は、[訓練を受ける者]が守るべき事項を定め、操作員の監督の下にこれを守らせること。

(2) 使用済燃料の再処理の事業に関する規則第15条に規定する 再処理事業者が採るべき核燃料物質の貯蔵に関する措置を4つ挙げよ。

解答例
再処理規則第15条(貯蔵)参照。 1号から6号のうち4つ記載する。

(貯蔵)
第十五条 法第四十八条第一項の規定により、再処理事業者は、次の各号に掲げる核燃料物質の貯蔵に関する措置を採らなければならない。
一 核燃料物質の貯蔵は、[貯蔵施設]において行うこと。
二 貯蔵施設の目につきやすい場所に、[貯蔵上の注意事項]を掲示すること。
三 核燃料物質の貯蔵に従事する者以外の者が[貯蔵施設に立ち入る]場合は、その貯蔵に従事する者の指示に従わせること。
四 使用済燃料は、[冷却]について必要な措置を採ること。
五 核燃料物質の貯蔵は、いかなる場合においても、核燃料物質が[臨界に達するおそれが]ないように行うこと。
六 プルトニウム又はその化合物の貯蔵は、プルトニウム又はその化合物が[漏えい]するおそれがない構造の容器に封入して行うこと。ただし、[グローブボックスその他の気密設備の内部]において貯蔵を行う場合その他プルトニウム又はその化合物が[漏えい]するおそれがない場合は、この限りでない。

第2問

次の文章は,原子炉等規制法及びこれに関連する法令に関するものである。 その内容が正しいものには○印を,間違っているものには×印を番号とともに記せ。 また,×印を記したものについては,その理由を記せ。

(1) 「加工」とは,核燃料物質を原子炉に燃料として使用できる形状又は組成とするために, これを物理的又は化学的方法により処理することをいう。

解答例:[
備考:法律第2条(定義)

(2) 「使用済燃料」とは,原子炉に燃料として使用した核燃料物質その他原子核分裂をさせた核燃料物質をいう。

解答例:[
備考:法律第2条(定義)

(3) 「保全区域」とは,再処理施設の保全のために特に管理を必要とする場合であって, 管理区域の内側に設置するものをいう。

解答例:[] 理由:「管理区域の内側」ではなく、「管理区域以外」のものをいう。
備考:再処理規則第1条(定義)

(4) 核燃料取扱主任者は,加工の事業において,特定核燃料物質の防護に関する業務を管理する。

解答例:[] 理由:「加工の事業において特定核燃料物質の防護に関する業務を管理する」のではなく 「加工の事業における核燃料物質の取扱いに関し誠実に職務を遂行しなければならない」
備考:法律第22条の4(核燃料取扱主任者の義務等)、法律第22条の2の2(核燃料取扱主任者)

(5) 使用済燃料貯蔵事業者は,経済産業省令で定める者を使用済燃料取扱主任者として選任し, 使用済燃料の取扱いに関して保安の監督を行わせることができる。

解答例:[
備考:法律第43条の22(使用済核燃料取扱主任者)

(6) 加工事業者に対して,適切な品質保証体制の確立について保安規定への記載と 品質マネージメントシステムの認証取得が義務づけられている。

解答例:[] 理由:加工事業者は、「品質保証、品質保証体制、品質保証の実施に係る組織、保安活動の計画、 保安活動の実施、保安活動の評価、保安活動の改善」に関する加工規則の要求を満たさなければならない、 さらに保安規定に「加工施設の品質保証に関すること」を規定する。 しかし品質マネージメントシステムの認証取得は義務付けられていない。
備考:加工規則第7条の2の2~第7条の2の8(品質保証、品質保証体制、品質保証の実施に係る組織、保安活動の計画、保安活動の実施、保安活動の評価、保安活動の改善)、 及び第8条(保安規定)

(7) 再処理事業者は,再処理施設について10年を超えない期間毎に保安活動の実施状況の評価と 最新の技術的知見の反映状況等を評価するための定期的な評価を行わなければならない。 この定期的な評価の要求項目として確率論的安全評価が挙げられているが, 高経年化対策の検討については任意でよいこととなっている。

解答例:[] 理由:定期的な評価の要求項目として「確率論的安全評価」を特定してはいない。 また、高経年化対策の検討については、事業を開始した日以降20年を経過する日まで、 「経年変化に対する技術的評価を行うこと。」及び「前号の技術的評価に基づき再処理施設の保全のために実施すべき措置に関する十年間の計画を策定すること。」 となっている。
備考:再処理規則16条の2(再処理施設の定期的な評価)

第3問

(1) 次の(ア)~(カ)は,加工施設の設計及び工事の方法の技術基準に関する規則に定められた 火災等による損傷の防止に関するものである。 文章中の空欄にあてはまる適切な語句を番号とともに記せ。

(ア) 加工施設が火災の影響を受けることにより加工施設の安全に著しい支障が生じるおそれがある場合は, 必要に応じて[①消火設備]及び警報設備(警報設備にあっては自動火災報知設備,漏電火災警報器 その他の火災の発生を自動的に検知し,警報を発する設備に限る。) を施設しなければならない。

(イ) 非常用電源設備その他の[②安全上重要な施設]であって,火災により損傷を受けるおそれがあるものについては, 可能な限り[③不燃性]又は[④難燃性]の材料を使用するとともに, 必要に応じて防火壁の設置その他の適切な防火措置を講じなければならない。

(ウ) 水素を取り扱う設備(爆発の危険性がないものを除く。)は,適切に[⑤接地]しなければならない。

(エ) 水素その他の可燃性ガスを取り扱う設備(爆発の危険性がないものを除く。)を設置するグローブボックス及び室は, 当該設備から可燃性ガスが漏えいした場合においてもそれが[⑥滞留]しない構造とすること その他の爆発を防止するための適切な措置を講じなければならない。

(オ) 焼結設備その他の加熱を行う設備(以下「焼結設備等」という。)は, 当該設備の[⑦熱的制限値]を超えて加熱されるおそれがないものでなければならない。

(カ) 水素その他の可燃性ガスを使用する焼結設備等(爆発の危険性がないものを除く。)は, (ウ)から(オ)に定めるところによるほか,次に掲げるところにより施設しなければならない。

  • 焼結設備等の内部において空気の混入により可燃性ガスが[⑧爆発]することを防止するための適切な措置を講じること。
  • 焼結設備等から排出される可燃性ガスを[⑨滞留]することなく安全に[⑩排出]するための適切な措置を講じること。
  • 焼結設備等の内部で可燃性ガスを燃焼させるものは,燃焼が停止した場合に可燃性ガスの供給を自動的に停止する構造とすること。

備考:加工施設の技術基準規則 第4条(火災等による損傷防止)

(2) 次の(キ)~(セ)は,再処理施設の設計及び工事の方法の技術基準に関する規則に関するものである。 文章中の空欄にあてはまる適切な語句を番号とともに記せ。

(キ) 再処理施設は,核燃料物質が臨界に達するおそれがないようにするため, [⑪核的に安全な形状寸法にすること]その他の適切な措置が講じられているものでなければならない。

(ク) 再処理施設は,[⑫臨界警報設備の設置]その他の臨界事故の発生を想定した適切な措置が講じられているものでなければならない。

(ケ) 再処理施設は,これに作用する地震力による損壊により[⑬公衆に放射線障害を及ぼすこと]がないように施設しなければならない。

(コ) 再処理施設は,使用済燃料,使用済燃料から分離された物又はこれらによって汚染された物を [⑭限定された区域]に[⑮閉じ込める]機能を保持するように施設しなければならない。

(サ) 再処理施設を設置する工場又は事業所内の外部放射線による放射線障害を防止する必要がある場所には, 放射線障害を防止するために必要な[⑯しゃへい能力]を有する[⑰しゃへい設備]を施設しなければならない。

(シ) 使用済燃料の受入れ施設及び貯蔵施設は,使用済燃料の[⑱崩壊熱]を安全に除去しうるものとして施設しなければならない。

(ス) 再処理施設には,外部電源系統からの電気の供給が停止した場合において, 再処理施設の安全を確保するために必要な設備の機能を維持するために, [⑲内燃機関を原動力とする発電設備]又はこれと同等以上の機能を有する設備を施設しなければならない。

(セ) 再処理施設の安全を確保するために特に必要な設備には, [⑳無停電電源装置]又はこれと同等以上の機能を有する設備を施設しなければならない。

備考

記号 条文
(キ)(ク) 再処理施設の技術基準第3条(核燃料物質の臨界防止)
(ケ) 同 第5条(耐震性)
(コ) 同 第7条(閉じ込めの機能)
(サ) 同 第8条(しゃへい)
(シ) 同 第13条(使用済み燃料の受け入れ施設及び貯蔵施設)
(セ) 同 第19条(非常用電源設備)

第4問

原子炉等規制法に基づき,核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物(以下,「核燃料物質等」という。) を工場等の外において運搬する場合,次の文章の空欄にあてはまる適切な語句,記号又は数値を番号とともに記せ。 なお,同じ番号には同じ語句,記号又は数値が入る。

【運搬規則一般】

使用者,製錬事業者,加工事業者,原子炉設置者,外国原子力船運航者,使用済燃料貯蔵事業者,再処理事業者 及び廃棄事業者並びにこれらの者から運搬を委託された者(以下「使用者等」という。)は, 核燃料物質等を工場等の外で運搬する場合は,原子炉等規制法に基づき, 主務省令で定める技術上の基準に従って[①保安]のために必要な措置を講じなければならない。 この場合,運搬する核燃料物質等に,政令で定める特定核燃料物質を含む場合は, [①保安]及び特定核燃料物質の[②防護]のために必要な措置を講じなければならない。
核燃料物質等による[③災害の防止]及び特定核燃料物質の[②防護]のため特に必要がある場合として政令で定める場合 (B型輸送物,[④核分裂]輸送物及び[⑤0.1]kg以上の[⑥六ふっ化ウラン]を収納する輸送物を運搬する場合)に該当するときは, 使用者等は,その運搬に関する措置が主務省令の技術上の基準に適合することについて, 主務省令で定めるところにより主務大臣の[⑦確認]を受けなければならない。

備考:法律第59条の2(運搬に関する確認等)、 外運搬規則第11条の2(六ふっ化ウランに係る核燃料物質の技術基準)、 外運搬規則第15条(確認を要する核燃料物質等)、 外運搬細目告示第27条の2(主務大臣の定める六ふっ化ウラン)、 施行令第17条の4(運搬に係る特定核燃料防護のための措置が必要な特定核燃料物質)

【輸送物の区分】

我が国では,核燃料物質等を次に掲げる核燃料物質等の区分に応じ, それぞれに定める種類の核燃料輸送物として運搬することとしている。

(a) 危険性が極めて少ない核燃料物質等として主務大臣の定めるもの(例:劣化ウラン

……L型輸送物

(b) 主務大臣の定める量を超えない量の[⑧放射能]を有する核燃料物質等(上記(a)の核燃料物質等を除く) (例:新燃料集合体,低濃縮ウラン化合物)

……[⑨A]型輸送物

(c) 上記(b)の主務大臣の定める量を超える量の[⑧放射能]を有する核燃料物質等(上記(a)の核燃料物質等を除く) (例:使用済燃料,MOX燃料)

……[⑩BM]型輸送物又は[⑪BU]型輸送物

なお,[⑩BM]型輸送物については,国際輸送において関係する全ての国の承認が必要となる輸送物である。

(d) 上記(a)から(c)にかかわらず,[⑫放射能濃度]の低い核燃料物質等又は核燃料物質等により表面が[⑬汚染]された物であって 危険性が少ないものとして主務大臣の定めるもの(例:天然ウラン化合物)

……[⑭IP]型輸送物

備考:外運搬規則第3条(核燃料輸送物としての核燃料物質等の運搬)

【L型輸送物に係る技術上の基準】

L型輸送物に係る技術上の基準は,次に掲げるものとする。
イ)容易に,かつ,安全に取扱うことができること。
ロ)運搬中に予想される[⑮温度]及び[⑯内圧]の変化,振動等により,き裂,破損等の生じるおそれがないこと。
ハ)表面に不要な突起物がなく,かつ,表面の[⑬汚染]の除去が容易であること。
ニ)材料相互の間及び材料と収納される核燃料物質等との間で危険な物理的作用又は化学反応の生じるおそれがないこと。
ホ)[⑰]が誤って操作されないような措置が講じられていること。
ヘ)開封されたときに見やすい位置に「放射性」又は「Radioactive」の表示を有していること。
ト)表面における[⑱主務大臣の 原子力規制委員会の定める]線量当量率が[⑲マイクロシーベルト毎時]を超えないこと。
チ)表面の放射性物質の密度が主務大臣の定める密度を超えないこと。
リ)[④核分裂]物質が収納されている場合には,外接する直方体の各辺が[⑳十センチメートル]以上であること。

備考:外運搬規則第4条(L型輸送物に係る技術上の基準)

第5問

次の文章は,加工事業者が,加工施設を設置した工場又は事業所で放射性廃棄物を廃棄する場合, 保安のために採らなければならない措置に関するものである。 文章中の空欄にあてはまる適切な語句を番号とともに記せ。 なお,同じ番号には同じ語句が入る。

(1) 気体状の放射性廃棄物の廃棄は,次に掲げるいずれかの方法によることとされている。
a. [①排気]施設によって排出すること。
b. [②放射線障害防止]の効果を持った[③廃気]槽に保管廃棄すること。

(2) 液体状の放射性廃棄物の廃棄は,次に掲げるいずれかの方法によることとされている。
a. [④排水]施設によって排出すること。
b. [②]の効果を持った[⑤廃液]槽に保管廃棄すること。
c. 容器に封入し,又は容器に固型化して[②]の効果を持った[⑥保管廃棄]施設に[⑥]すること。
d. [②]の効果を持った[⑦焼却]設備において[⑦]すること。
e. [②]の効果を持った[⑧固形化]設備で[⑧]すること。

(3) 液体状の放射性廃棄物を[④排水]施設によって排出する場合は, [⑨排水口]において又は[⑩排水監視設備]において, 排水中の放射性物質の[⑪濃度]を監視することにより, [⑫周辺監視区域]の外側の境界における水中の放射性物質の[⑪]が経済産業大臣の定める[⑬濃度限度]を超えないようにすること。

(4) 液体状の放射性廃棄物を容器に封入して保管廃棄するときは, 当該容器に[⑭き裂]若しくは[⑮破損]が生じた場合に 封入された放射性廃棄物の全部を[⑯吸収]できる材料で当該容器を包み, 又は収容できる[⑰受皿]を当該容器に設けること等により,[⑱汚染]の広がりを防止すること。 また,液体状の放射性廃棄物を封入した容器には,[⑲放射性廃棄物]を示す標識を付け, 及び当該放射性廃棄物に関して記録された内容と照合できるような[⑳整理番号]を表示すること。

備考:加工規則第7条の8(工場又は事業所内の廃棄)

谷内 茂康; 中村 仁一; 天谷 政樹; 中島 邦久; 小室 雄一; 中島 勝昭; 小林 泰彦; 佐藤 忠; 須賀 新一; 野口 宏; 笹本 宣雄; 櫛田 浩平 第36回核燃料取扱主任者試験問題・解答例集,2004年, JAERI-Review 2004-020, https://doi.org/10.11484/jaeri-review-2004-020