第31回 核燃料取扱主任者試験 核燃料物質の取扱いに関する技術

第1問

核燃料施設の機能に関して以下の問に答えよ。

(1) 空欄部に適切な語句または簡単な文章を記入せよ。

核燃料施設においては、通常、核燃料物質は各工程ごとに[①形状]や[②(化学)形態]を変化させながら各工程間を移動する。 従って、各工程を通じて[③臨界防止]対策や[④被曝防止]対策が必要となる。 ウラン加工施設においては、[③臨界防止]対策は、単一ユニットの[⑤形状寸法]、[⑥質量]、[⑦容積]、[⑧溶液濃度]、[⑨中性子吸収材]、[⑩これらの組合せ]により核的制限を加えること、 また、複数ユニットに関しユニット間の[⑪間隔の維持]又は[⑫中性子遮蔽材の使用]により行うこととされている。 [④被曝防止]対策は、[⑬適当な遮蔽材を設ける]、[⑭作業時間を制限する]、[⑮線源からの距離を確保すること]によって行うこととされている。

【別解】 核燃料施設においては、通常、核燃料物質は各工程ごとに[①形状]や[②(化学)形態]を変化させながら各工程間を移動する。 従って、各工程を通じて[③臨界防止]対策や[④放射性物質の閉じ込め]対策が必要となる。 ウラン加工施設においては、[③臨界防止]対策は、単一ユニットの[⑤形状寸法]、[⑥質量]、[⑦容積]、[⑧溶液濃度]、[⑨中性子吸収材]、[⑩これらの組合せ]により核的制限を加えること、 また、複数ユニットに関しユニット間の[⑪間隔の維持]又は[⑫中性子遮蔽材の使用]により行うこととされている。 [④放射性物質の閉じ込め]対策は、[⑬包蔵性]、[⑭負圧維持]、[⑮排気処理]によって行うこととされている。

解説:①~④は、「核燃料施設安全審査基本指針」の「まえがき」からの出題と考えられる。 ⑤~⑫はウラン加工施設安全審査指針の指針10及び11からの出題と考えられる。 ⑬~⑮は「核燃料の臨界安全」核燃料施設臨界安全管理編集委員会、 (財)原子力安全研究協会 実務テキストシリーズ No.2 (1984)のp.118からの出題と考えられる。

注記 - ③の解答は、後に続く「単一ユニット」や「複数ユニット」という表現から自明である。 しかし④の解答は、後の文を読んで導出することはむずかしい。 ④を「放射性物質の閉じ込め」とすれば、⑬~⑮も別解の通りとなる。

(2) ウラン加工施設の作業環境を監視する項目を3つ挙げその測定法を記せ。

解答例

監視項目 測定方法
空間線量測定 電離箱サーベイメータまたはGMサーベイメータ、エリアモニタ、TLD等によるγ線測定
空気汚染測定 ダストモニタ、ダストサンプラ、エアースニファ等によりろ紙に集塵し、α線測定
表面汚染測定 スミヤ法によるα線測定

解説 - 作業環境を監視する項目については、「ウラン加工施設安全審査指針 指針6. 放射線被ばく管理」 及び「加工施設の設計及び工事の方法の技術基準 第15条 放射線管理施設」に示されている。

参考文献

○ ウラン加工施設安全審査指針

指針6. 放射線被ばく管理(指針本文及び解説)

核燃料施設においては、放射線業務従事者の放射線被ばくを十分に監視し、管理するための対策が講じられていること。

  1. 作業環境における放射線被ばく管理.

ウランの取扱われる部屋の線量率、ウランの表面密度及び空気中濃度を十分に監視、管理するため

(1) サーベイメータ、ダストモニタ等の監視設備・機器を設けること。

(2) 第1種管理区域入口等には、防塵マスク等適切な呼吸保護具を備えること。

(3) 適切なところに放射線管理担当者が駐在できる施設を設けること。 この施設には放射線管理上必要な監視、通報設備が設けられていること。

○ 加工施設の設計及び工事の方法の技術基準より

第15条 放射線管理施設

加工施設を設置する工場又は事業所には、次に掲げる事項を計測する放射線管理施設を施設しなければならない。

三 管理区域における外部放射線に係る経済産業大臣の定める線量当量、空気中の放射性物質の濃度 及び放射性物質によつて汚染された物の表面の放射性物質の密度

第2問

プルトニウム燃料に関して以下の問に答えよ。

(1) プルトニウムを用いた代表的な燃料は、二酸化ウランと二酸化プルトニウムを混合したMOX燃料であるが、 これを軽水炉で使用する場合に、炉心設計上考慮すべき点を2つ挙げその対策を簡単に記せ。

解答例

①制御棒の効きの低下。 :MOX燃料を制御棒から熱中性子の平均自由行程の数倍程度の距離をとって配置する。

②減速材密度変化時の反応度変化が大。 :UO2燃料とMOX燃料の最適水対燃料体積比の不一致。 MOX燃料の単位長さ当たりの量を減らす。

③局所的な出カピーキングが大きくなりやすい。 :UO2燃料とMOX燃料の出力分布の不連続。 MOX燃料を最大出力密度の領域から遠ざけて配置する。 また、数種類の富化度の燃料棒を使用し出力平坦化を実施する。 参考文献:三神尚、関本博訳、H.W.グレイブス、「核燃料管理の方法と解析」、第13章、現代工学社 (1983)

(2) MOX燃料ペレット独特の品質規格に「プルトニウム分布の均一性」があるが、この検査法の名称と方法の概略を記せ。

解答例

αオートラジオグラフィ

Puスポット検査(αオートラジオグラフィ法)

ペレットにニトロセルロースフィルムを密着させ、ペレット中から放射されるα線によりフィルムの原子結合部を破壊させ NaOHによりエッチングし、エッチピット集合部の径を測定する。 参考文献:「オートラジオグラフ法によるプルトニウムの粒度分布測定および性状把握」p.4 公開試料 TN841-82-04

(3) 「プルトニウム分布の均一性」が問題となる理由を記せ。

解答例

ペレット内にPuO2濃度の高い部分(プルトニウムスポット)が生じると、 ペレット内のプルトニウム分布が不均ーになる。 プルトニウムスポットでは核分裂が選択的に進行するため、 局所的な発熱が起こり燃料温度の上昇やペレット表面近くにある場合には、 部分的な被覆管温度上昇等の悪影響を及ぼす。 また、FPガス放出が大きくなる問題に発展する。 参考文献「動力炉 燃料・材料ハンドブック」、p.274、日本原子力産業会議 (1998)

(4) MOX燃料ペレットに関する以下の検査法の概略を記せ。

1)同位体組成比、 2)Pu含量、 3)O/M比分析

解答例

1)同位体組成比

精度の高い同位体組成比の分析には、MOX燃料を溶解した後、イオン交換によりウランとプルトニウムを分離し 質量分析装置により同位体組成比を測定する方法が用いられている。 しかし、この方法では前処理に日数を要するため査察検査に対応するための分析法としては、好ましくない。 そのため、プルトニウムから放出されたガンマ線を高分解能ガンマ線分析器で識別し、 各エネルギーのガンマ線強度の相対比からプルトニウム同位体組成比を算出する 非破壊測定が広く保障措置分野等で利用されている。 参考文献:非破壊分析装置の概要 公開試料 PNC TN8440 95-040

2)Pu含量

MOX燃料中のプルトニウムの含量を測定する方法として同位体希釈質量分析法、 電位差滴定法および電位規制クーロメトリ法がある。

同位体希釈質量分析法による測定では、MOX試料(未知試料)にスパイク試料(同位体組成の異なる濃縮同位体)を添加し、 質量分析装置によりMOX試料および混合試料(MOX試料とスパイク試料を混合したもの)の同位体組成比を測定する。 そして、この同位体組成比の違いからMOX試料中のウランおよびプルトニウム濃度を算出する。

・電位差滴定法によるプルトニウム量の求め方は、試料に硝酸とフッ化水素酸(1~2滴)を加え加熱溶解・放冷後、 硝酸銀と過硫酸アンモニウムを加えて、プルトニウムをVI価に調整する。 その後、標準溶液(鉄II価)を過剰に加えてプルトニウムをIV価に還元する。 過剰の標準溶液(鉄II価)を標準溶液(セリウムIV価)で逆滴定し白金電極を用いて終点電位を確認して、 プルトニウム定量する。 しかし、この方法は、アメリシウムおよびネプツニウム等の不純物の存在が妨害するため、現在では、他の分析法に変わりつつある。

・電位規制クーロメトリ法によるプルトニウムの測定は、(1)式に示す反応で行われる。

Pu3+⇔Pu4++e- (1)

まず、プルトニウムが100%Pu3+となるための還元電位を設定し、還元を行う。 次にこのPu3+をPu4+にするための酸化電位を設定する。 この電位で酸化を行い、得られた電気量(クーロン数)からファラデーの法則に従いプルトニウム量に換算する。 すなわち(2)式で示される電流の時間積分値からプルトニウム量を直接的に求めることができる。


\int _ 0 ^ t I dt = Q = nF \frac{W}{M} \qquad (2)

  • I: 電解電流[A]
  • t: 時間[sec]
  • Q: 全電気量[C]
  • F: ファラデー定数[96485 C/mol]
  • W: プルトニウム量[g]
  • M: プルトニウムのグラム当量[g/mol]
  • n: 電解に関与した電子数[個]

ただし、ウランの比率の高いMOX燃料(ATR燃料)にはウランが間接的影響を与えるためこの分析法は適さない。

そのほか、保障措置情報を提供する非破壊分析には、パッシブ中性子同時計数法によるPuの定量が利用されている。 この方法では、試料より放出される中性子3He比例計数管で計測し、 その中性子分布(計数率変動分布)によりPuの同位体であるPu-238、Pu-240、Pu-242からの自発核分裂量を導き出し、 同位体組成比を使用してPu量を求めている。 参考文献:非破壊分析装置の概要 公開試料 PNC TN8440 95-040

3)O/M比分析

0℃の水蒸気で飽和させたヘリウム-6%水素混合ガスを使って、800℃で試料を加熱すると、 O/M比がほぼ化学量論組成のMOXを調整することができる。 したがって、この加熱処理で得られた試料の重量変化からO/M比を計算する重量法が用いられている[1]。

その他、試料を空気中850℃で空気酸化し、次いで還元ガス(NH混合ガス)中850℃で一定重量になるまで加熱し、 得た重量からO/M比を計算する酸化還元重量法や試料を空気中850℃で空気酸化し、 得た重量を測定し計算式から計算する酸化重量法などがサイクル機構のプルトニウム転換施設等で行われているようである[2]。

しかし、これらの測定には時間を要するため不活性ガス融解法によるO/Mの測定が行われ始めている。 この方法では、黒鉛るつぼに試料および金属助燃剤をいれ、 ヘリウムガス雰囲気中で試料を加熱融解した際に発生する酸素と黒鉛が反応し、 生成するCOガスを定量することで酸素含有率を求め、O/Mを決定する[3]。

参考文献:

[1] "Standard Test Methods for Chemical, Mass Spectrometric, and Spectrochemical Analysis of Nuclear-Grade Mixed Oxides ((U, Pu)O2)", Annual Book of ASTM Standards, Vol. 12. 1 C698 (1990) 122-158
[2] 「標準分析作業法」公開試料 PNC TN8520 92-003
[3] 「不活性ガス融解 - 非分散赤外吸収法によるMOX燃料のO/M分析法の開発」公開試料 PNC TN8410 95-105

第3問

以下(1)から(5)に示す文章は、ある放射性核種について記述したものである。 それぞれの文章が下欄に示すどの放射性核種に当てはまるか、その核種を記せ。

(1) 天然には存在しない半減期約70年のアルファ壊変核種。 有為なガンマ線を放出しないが、この核種が存在すると、時間経過とともに 高エネルギーガンマ線を放出する娘核種Tl-208を生成するので、量によっては取扱上遮へいを必要とする。

解答例: U-232

(2) 半減期約14年のベータ壊変核種。この核種は有為なガンマ線を放出しないが、 時間経過とともに約60 keVのガンマ線を放出するAm-241に変化するので、量によっては取扱上遮へいを必要とする。 核分裂性核種。

解答例: Pu-241

(3) 半減期約18年のアルファ壊変核種。 (α,n)反応及び自発核分裂により、再処理施設における中性子放出の主要源となる。 この自発核分裂により僅かではあるが、再処理施設で短半減期FP核種が観測される。

解答例: Cm-244

(4) 天然中にも僅かな割合で存在している半減期約25万年のアルファ壊変核種。 回収ウランのアルファ放射能に最も寄与する核種でもある。

解答例: U-234

(5) 半減期約88年のアルファ壊変核種。 燃焼度が増した軽水炉燃料中のアルファ線及び崩壊熱の大部分はこの核種の寄与によるものである。 また、(α,n)反応により、回収プルトニウムにおける中性子発生に最も寄与する。

解答例: Pu-238

第4問

高レベル放射性廃棄物の処分について、以下の問に答えよ。

(1) 高レベル放射性廃棄物の処分に関してはこれまで各種の方法が提案されているが、 現時点で最も信頼性が高いとされているのは地層処分である。 この地層処分方法の概要について記せ。

解答例

高レベル放射性廃棄物 (HLW) の地層処分については、国によって多少のちがいがあるが、 基本的には、
(a)再処理第1抽出工程から分離された高濃度の核分裂生成物(原子力安全委員会資料の定義)を ガラスの材料であるフリット(ホウ珪酸ガラス系)と混合して溶融、 キャニスターと呼ばれるステンレス製の容器に流し込み固化、 ふたを溶接封入(一般的には、この状態をガラス固化体と呼ぶ。)、
(b)冷却貯蔵期間を経て花崗岩(花こう岩)などからなる深地層 (国によって、想定される地層の種類や深さは自然環境等に応じて異なる。) 坑道内に設けられたピットと呼ばれる縦穴に運び入れ周囲をベントナイト(工業用粘土の一種)で埋め戻し、 最終的には坑道を埋め戻し閉鎖して処分することを想定している。

この安全評価においては千年を超える期間を想定し、 そのときに重要となる核種(プルトニウムネプツニウムなどの超ウラン元素(TRU。長半減期の核種)ほか) の想定される地層中での移動(この分野では移行という。)挙動、各種使用材料の耐久性や共存物質との安定性など を幅広く総合的に評価する必要がある。

(2) 上記の地層処分では、高レベル放射性廃棄物を深地下に埋設することとされているが、 その主な理由について考えられる点を3点以上列挙せよ。

解答例

① 長期間にわたる耐久性、信頼性

千年先の信頼性を実証するのはきわめて困難であるが、千年前の材料が現在どうなっているかを調べることは十分に可能である。 耐久性加速試験にも限界があり、このことは人工的に作成した材料については特に重要である。 数千年経過した人工ガラス(古代ガラス)、それより十分な時間を経過した天然ガラス(地球上の鉱物内)、 宇宙ガラス(隕石や月の岩石中など)の知見などから総合すると、 ガラス自体、金属酸化物(この場合は、核分裂生成物の酸化物)をよく溶かす一方で、 なかなか地下水などには溶けにくい安定した材料である。 また、耐熱性にも優れており、地層の中できわめて安定した材料である。

② 生物圏からの隔離

埋設を想定しているのは、深地層(数百メートルから千数百メートルの地下の地層)である。 この場所は生物圏から十分に隔離されており、埋設が終わったあとを考えると放射線遮へいのために特別な措置を必要としない。 また、1本あたり少なくても十数キロワットと想定される発熱に対しても、特別な熱除去(設備や施設)も必要としない。 テロ対策としても有効である。

③ 地下水と核種移行

埋設を想定している地層の種類はたとえば花崗岩などからなる近傍に断層や割れ目のない地層である。 また、地下水が少ないまた移動の少ない地層(あるいは化石水(地表水と混ざることのない孤立した水)がわずかに存在する程度の地層)である。 そのため、放射性物質を運び出す(核種移行の)可能性のある地下水がもともと浸入しにくい構造である。 たとえ水が侵入したとしても、その移動速度は高々年数ミリメートル程度である。 また、深地層であるため生物圏から遠く、生物圏へその水が到達するのにきわめて長い時間がかかると考えられる。

④ 水の移動抑制

ガラス固化体を埋設したあと、その周辺はベントナイトで埋め戻すことを想定している。 このベントナイトは、地下水などが侵入すると水を吸って膨らみ水の浸入路(水路。「みずみち」と読む。)を塞ぐ効果を持っている。 また、その膨らんだ状態で水の移動速度を遅くする役目ももっている。 このことは、仮にガラス固化体から放射性物質が地下水に溶け出たとしても、 それが地層内を移動していく速度を大幅に遅くできることにつながる。 入る水、出る水の両方に効果が期待されている。

第5問

核燃料物質の取扱いに関して次の事項を簡単に説明せよ。

(1) 不明物質量 (MUF)
(2) ベント型燃料
(3) 不溶解性残渣
(4) 乾式再処理法
(5) 包蔵性管理

解答例

(1) 不明物質量 (MUF)

核燃料物質の帳簿在庫と実在庫との差で、核物質の秤量誤差、計測誤差、分析誤差から生ずる量と 測定できない工程上のロス量である。 計量管理上はMUF量を極力抑える必要がある。 真のMUFを把握するためには、計量技術の向上が必要。

(2) ベント型燃料

高価な高速炉炉心を有効に働かないプレナム部分で占有するのは不経済であるから、 ガス状FPのみを燃料ピンからナトリウム冷却材に逃がし、ナトリウムが燃料ピンに侵入することのないような特殊構造を有する燃料。 冷却材中のFPガス量が増大するためそのコントロールが課題。 参考文献:三島良績編著“核燃料工学”同文書院、p.77

(3) 不溶解性残渣

Purex法において使用済燃料の硝酸溶解工程で発生する不溶解性物質のこと。 組成は一定ではなく、溶解条件、燃料の燃焼度によって変化する。 主成分はRu-Rh-Pd-Tc-Mo5元系金属間化合物であり、これに構造材料に起因する固体粒子、Zr錯体、コロイド等が混合している。

参考 原子力バックエンド対策専門部会|用語解説 http://www.aec.go.jp/jicst/NC/senmon/old/backend/sonota/sonota06/4sanko13.htm

(4) 乾式再処理法

使用済燃料を気体状、粉末状または溶融状にして再処理する方法のこと。 水溶液を用いる湿式再処理に比べて、
(1)水を用いないので、臨界制限がゆるやかである。
(2)廃棄物が固体状で得られる。
(3)有機溶媒を使用しないので放射線損傷の影響が少ない。
(4)工程の数が少なく、かつ水溶液に比べて高濃度で処理されるので装置の寸法が小さくてすむ、
などの利点がある。 しかし、この乾式法は開発の初期の段階にあり、高温冶金法、フッ化物揮発法等の開発試験が行われている。 乾式再処理には、大別して低除染法(高温法)と高除染法(ハロゲン化揮発法)がある。 そのほかに湿式再処理と組み合わせた半乾式法もある。「Atomicaの用語解説より」

乾式再処理法にはハロゲン化揮発法、高温治金化学法がある。 これらは、湿式法に比べ工程が簡単で廃液が少なく臨界安全管理も容易で、放射線損傷の影響も少ない等の利点がある。 反面プロセスの安定性、粉体の取扱い、オフガス系、連続処理、除染係数等に解決すべき点が多い。 参考文献 鈴木篤之、他、「核燃料サイクル工学」、p.89、日刊工業新聞社(1981)

(5) 包蔵性管理

プルトニウム利用にかかわる安全確保は、プルトニウムを閉じ込めて取扱い(包蔵性管理)、 体内に摂取されないようにすることが基本である。 その閉じ込めの機構を確実にするため、施設及び設備の設計や管理に多重防護の概念が採用されている。

すなわち、第一に粉末やペレット等の固体状の取扱いはグローブボックス等に閉じ込め、 液体などはステンレス鋼の容器や配管で隔離して、作業者が素手で直接接触しないようにした形で取り扱われることになる。

第二に、グローブの破損等で1次の閉じ込め機構から、プルトニウムが万ー作業環境に漏洩した場合でも汚染の拡大を防止するため、 建物内の空気の気流が汚染度の高い方向に流れるように大気に対して負圧管理がされている。

第三に、排風機の故障・異常に対して、予備の排風機及び非常発電機の設置の義務 が課せられていて、 周辺環境にプルトニウムが漏洩することを確実に防止している。 参考文献:原子力百科事典 ATOMICA、プルトニウムの毒性と取扱い (09-03-01-05) https://atomica.jaea.go.jp/data/detail/dat_detail_09-03-01-05.html

出典

谷内 茂康; 佐藤 忠; 須賀 新一; 小室 雄一; 内田 正明; 中島 邦久; 中村 仁一; 雨澤 博男; 大村 英昭; 湊 和生; 武田 常夫; 櫛田 浩平; 傍島 眞 核燃料取扱主任者試験問題・解答例集,1999~2003年, JAERI-Review 2003-025,https://doi.org/10.11484/jaeri-review-2003-025