第37回 核燃料物質に関する法令

核燃料物質に関する法令

第1問

次の問に答えよ。

(1) 原子力基本法に規定されている基本方針を述べよ。

解答例: [原子力の研究]、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、 [民主的な運営]の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し, 進んで[国際協力]に資するものとする。 基本法第二条(基本方針)

(2) 次の文章は,使用済燃料の再処理の事業に関する規則(以下,本問において「規則」という。) に定められた報告徴収に関するものである。 文章の空欄の部分に入る適切な語句を番号とともに記せ。

再処理事業者は,次の(ア)から(シ)の一に該当するときは,その旨を直ちに, その状況及びそれに対する処置を[①十日]以内に経済産業大臣に報告しなければならない。
(ア)核燃料物質の[②盗取]又は所在不明が生じたとき。
(イ)再処理施設の故障があった場合において, 当該故障に係る修理のため特別の措置を必要とする場合であって,再処理に支障を及ぼしたとき。
(ウ)再処理施設の故障により,使用済燃料等を限定された区域に閉じ込める機能, 外部放射線による放射線障害を防止するための放射線のしやへい機能 若しくは再処理施設における[③火災]若しくは[④爆発]の防止の機能を喪失し, 又は喪失するおそれがあったことにより,再処理に支障を及ぼしたとき。
(エ)再処理施設の故障その他の不測の事態が生じたことにより, 気体状の放射性廃棄物の排気施設による排出の状況に異状が認められたとき 又は液体状の放射性廃棄物の海洋放出施設による排出の状況に異状が認められたとき。
(オ)気体状の放射性廃棄物を排気施設によって排出した場合において, [⑤周辺監視区域の外]の空気中の放射性物質の濃度が規則第十六条第四号の濃度限度を超えたとき。
(カ)液体状の放射性廃棄物を海洋放出施設によって排出した場合において, 放射性廃棄物の海洋放出に起因する線量が規則第十六条第七号の線量限度を超えたとき。
(キ)使用済燃料等が管理区域外で漏えいしたとき。
(ク)再処理施設の故障その他の不測の事態が生じたことにより, 使用済燃料等が管理区域内で漏えいしたとき。 ただし,次のいずれかに該当するとき (漏えいに係る場所について人の立入制限,かぎの管理等の措置を新たに講じたとき 又は漏えいした物が管理区域外に広がつたときを除く。)を除く。
・漏えいした液体状の使用済燃料等が当該漏えいに係る設備の周辺部に設置された 漏えいの拡大を防止するための堰の外に拡大しなかつたとき。
・気体状の使用済燃料等が漏えいした場合において,漏えいした場所に係る[⑥換気設備]の機能が適正に維持されているとき。
・漏えいした使用済燃料等の放射能量が微量のときその他漏えいの程度が軽微なとき。
(ケ)核燃料物質が[⑦臨界]に達し,又は達するおそれがあるとき。
(コ)再処理施設の故障その他の不測の事態が生じたことにより, 管理区域に立ち入る者について被ばくがあったときであつて, 当該被ばくに係る[⑧実効線量]が放射線業務従事者にあつては[⑨五ミリシーベルト], 放射線業務従事者以外の者にあっては[⑩〇.五ミリシーベルト]を超え,又は超えるおそれのあるとき。
(サ)放射線業務従事者について規則第十条第一項第一号の線量限度を超え, 又は超えるおそれのある被ばくがあつたとき。
(シ)以上の(ア)から(サ)のほか,再処理施設に関し,人の障害 (放射線障害以外の障害であって入院治療を必要としないものを除く。)が発生し, 又は発生するおそれがあるとき。

再処理規則 第二十一条の3(報告の徴収)

第2問

次の問に答えよ。

(1) 次の文章は,核燃料物質の加工の事業に関する規則に定められた加工施設の 定期的な評価に関するものである。文章の空欄の部分に入る適切な語句を番号とともに記せ。

(ア) 加工事業者は,加工施設ごと及び[①十年]を超えない期間ごとに次の措置を講じなければならない。
・加工施設における[②保安活動]の実施の状況の評価を行うこと。
・加工施設に対して実施した[③保安活動]への最新の[④技術的知見]の反映状況を評価すること。

(イ) 加工事業者は,その事業を開始した日以降[⑤二十年]を経過する日までに次の措置を講じなければならない。
・[⑥経年変化]に関する技術的な評価を行うこと。
・上記の技術的な評価に基づき加工施設の[⑦保全]のために実施すべき措置に関する[⑧十年間]の計画を策定すること。

加工規則 第七条の八の二(加工施設の定期的な評価)

(2) 次の文章は,核燃料物質の加工の事業に関する規則に定められた加工設備の操作に関するものである。 文章の空欄の部分に入る適切な語句を番号とともに記せ。

加工事業者は,次に掲げる加工設備の操作に関する措置を採らなければならない。
・核燃料物質の加工は,加工設備で行うこと。
・核燃料物質の加工は,いかなる場合においても,核燃料物質が[⑨臨界]に達するおそれがないように行うこと。
・加工設備の操作に必要な[⑩知識]を有する者に行わせること。
・加工設備の操作に必要な[⑪構成人員]がそろつているときでなければ操作を行わないこと。
・操作開始に先立つて確認すべき事項,操作に必要な事項及び操作停止後に確認すべき事項を定め, これを操作員に守らせること。
・[⑫非常]の場合に採るべき処置を定め,これを操作員に守らせること。
・[⑬換気設備],[⑭放射線測定器]及び[⑮非常用設備]は,常にこれらの機能を発揮できる状態に維持しておくこと。
・加工設備の操作の訓練のために操作を行う場合は,訓練を受ける者が守るべき事項を定め, 操作員の監督の下にこれを守らせること。

加工規則 第七条の五(加工設備の操作)

(3) 次の文章は,使用済燃料の再処理の事業に関する規則に定められた品質保証に関するものである。 文章の空欄の部分に入る適切な語句を番号とともに記せ。なお,同じ番号の空欄には同じ語句が入る。

(ウ) 再処理事業者は,保安のために必要な措置(以下「保安活動」という。)を講じるに当たっては, [⑯品質保証計画]を定め,これに基づき保安活動の[⑰計画],[⑱実施],評価及び改善を行うとともに, [⑯品質保証計画]の改善を継続して行わなければならない。

(エ) [⑯品質保証計画]における保安活動の評価に関する事項は,次に掲げる事項とする。
・保安活動の実施の状況について,必要な監視及び測定を計画的に行うこと。
・保安活動が適切に行われているか明確にするため,計画的に[⑲監査]を行うこと。
・評価は,対象となる個別業務を実施した者以外の者により実施されること。

(オ) [⑯品質保証計画]における保安活動の改善に関する事項は,次に掲げる事項とする。
・不適合に対する[⑳再発防止]のために行う是正に関する処置及び生じるおそれのある不適合を防止するための 予防に関する処置に関するそれぞれの手順を確立して行うこと。
・予防に関する処置に当たっては,自らの再処理施設における保安活動の実施によって得られた知見 のみならず他の施設から得られた知見を適切に反映すること。
・上記(エ)の評価結果を適切に反映すること。

再処理規則 第八条の三(品質保証),第八条の八(保安活動の評価),第八条の九(保安活動の改善)

第3問

次の問に答えよ。

(1) 核燃料物質の加工の事業に関する規則に定められた記録に関し,加工事業者が,工場又は事業所ごとに, 記録し,保存して置かなければならない事項のうち,次の①~⑤の事項の保存期間を番号とともに記せ。

① 操作記録(保安規定に定める保安上特に管理を必要とする設備への核燃料物質の種類別の挿入量, 保安規定に定める保安上特に管理を必要とする設備における温度, 圧力及び流量の値, 加工施設の操作開始及び操作停止の時刻, 保安規定に定める保安上特に管理を必要とする設備の操作責任者 及び操作員の氏名並びにこれらの者の交代の時刻)
② 保守記録(加工施設の巡視及び点検の状況並びにその担当者の氏名, 加工施設の修理の状況及びその担当者の氏名)
③ 加工施設の事故記録(事故の発生及び復旧の時,事故の状況及び事故に際して採つた処置, 事故の原因,事故後の処置)
④ 気象記録(風向及び風速,降雨量,大気温度)
⑤ 保安教育の記録(保安教育の実施計画,保安教育の実施日時及び項目,保安教育を受けた者の氏名)

解答例:

記録 期間 備考
①操作記録 一年間 加工規則 第七条(記録)三 操作記録
②保守記録 一年間 四 保守記録
③加工施設の事故記録 加工事業の廃止までの期間 五 加工施設の自己記録
④気象記録 十年間 六 気象記録
⑤保安教育の記録 三年間 七 保安教育記録

(2) 次の文章は,使用済燃料の再処理の事業に関する規則に定められた危険時の措置に関するものである。 文章の空欄の部分に入る適切な語句を番号とともに記せ。

再処理事業者は,その所持する核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物に関し, 地震,火災その他の災害が起こったことにより, 核燃料物質若しくは核燃料物質によって汚染された物による災害が発生するおそれがあり, 又は発生した場合においては,直ちに,次に掲げる応急の措置をとらなければならない。

  • 再処理施設に火災が起こり,又は再処理施設に延焼するおそれがある場合には, [⑥消火]又は[⑦延焼の防止]に努めるとともに直ちにその旨を[⑧消防吏員]に通報すること。
  • 核燃料物質を他の場所に移す余裕がある場合には,必要に応じてこれを安全な場所に移し, その場所の周囲には,なわ張り,標識等を設け,かつ,[⑨見張人]をつけることにより, 関係者以外の者が立ち入ることを禁止すること。
  • 放射線障害の発生を防止するため必要がある場合には,再処理施設の内部にいる者 及び附近にいる者に[⑩避難するよう警告]すること。
  • 使用済燃料等による汚染が生じた場合には,すみやかに,その[⑪ひろがりの防止]及び[⑫除去]を行なうこと。
  • [⑬放射線障害]を受けた者又は受けたおそれのある者がいる場合には,すみやかに救出し, 避難させる等緊急の措置を講ずること。
  • その他[⑭放射線障害を防止]するために必要な措置を講ずること。

再処理規則第二十条(危険時の措置)

(3) 次の文章は,使用済燃料の再処理の事業に関する規則に定められた再処理施設の巡視及び 点検並びに施設定期自主検査に関するものである。文章の空欄の部分に入る適切な語句を番号とともに記せ。

(ア) 再処理事業者は,[⑮毎日一回]以上,従業者に再処理施設について,巡視及び点検を行わせなければならない。

(イ) 再処理事業者は,次に掲げる検査に関する措置を採らなければならない。
イ 再処理施設(次のロに規定するものを除く。)は,当該施設の性能が 技術上の基準に適合しているかどうかについての検査を[⑯一年]ごとに行うこと。
ロ 警報装置,非常用動力装置その他の非常用装置については, 当該装置の各部分ごとの当該作動のための性能検査を[⑰一月]ごとに, 当該装置全体の当該作動のための総合検査を[⑱一年]ごとに行うこと。
ハ 再処理施設の保安のために直接関連を有する計器及び[⑲放射線測定器]については, [⑳較正]を一年ごとに行うこと。

再処理規則第十一条(再処理施設の巡視及び点検)、第十二条(再処理施設の施設定期自主検査)

第4問

次の文章は,原子炉等規制法及びこれに関連する法令において定められている核燃料物質 又は核燃料物質によって汚染された物の廃棄に関するものである。 文章の空欄の部分に入る適切な語句を番号とともに記せ。 なお,同じ番号の空欄には同じ語句が入る。

(1) 加工の事業の許可の申請書において,放射性廃棄物の廃棄施設に関しては,気体廃棄物, 液体廃棄物,固体廃棄物の区分により,各々の廃棄設備の[①構造]及び[②廃棄物の処理能力], 並びに気体廃棄物の廃棄設備については[③排気口]の位置,液体廃棄物の廃棄設備については [④排水口]の位置を記載することとされている。

加工規則第二条(加工の事業の許可の申請)

(2) 加工事業者は,加工施設を設置した工場又は事業所内で放射性廃棄物を廃棄する場合, 次に掲げる措置をとらなければならない。

(a) 放射性廃棄物の廃棄は,廃棄及び廃棄に係る[⑤放射線防護]について 必要な知識を有する者の監督の下に行わせるとともに,廃棄に当たっては, 廃棄に従事する者に[⑥作業衣]等を着用させ,また,放射性廃棄物の廃棄に従事する者以外の者が 放射性廃棄物の廃棄作業中に[⑦廃棄施設]に立ち入る場合には, その廃棄に従事する者の指示に従わせなければならない。

(b) 液体状の放射性廃棄物を,容器に封入して[⑧放射線障害防止]の効果を持った[⑨保管]廃棄施設に[⑩保管廃棄]する場合, 当該容器は, (イ)[⑪]が浸透しにくく,[⑫腐食]に耐え,及び放射性廃棄物が[⑬漏れにくい]構造を有し, (ロ)[⑭き裂または破損]が生じるおそれがなく, (ハ)容器の[⑮ふた]が容易に外れないものでなければならない。 また,容器に固型化して[⑧放射線障害防止]の効果を持った[⑨保管]廃棄施設に[⑩保管廃棄]する場合は, 固型化した放射性廃棄物と一体化した容器が放射性廃棄物の[⑯飛散又は漏れ]を防止できるものでなければならない。

加工規則第七条の八(工場又は事業所内の廃棄)

(3) 加工事業者は,加工施設を設置した工場又は事業所の外において放射性廃棄物(輸入された物を除く) を廃棄する場合,[⑧放射線障害防止]の効果を持った[⑰廃棄]施設に廃棄し,その場合には, 当該廃棄施設を設置した者に,当該放射性廃棄物に関する[⑱記録の写し]を交付しなければならない。 また,廃棄に従事する者の[⑲線量]が経済産業大臣の定める[⑳線量限度]を超えないようにしなければならない。

外廃棄規則第二条(保安のための必要な措置等)

第5問

核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物(以下,「核燃料物質等」という。) の工場又は事業所内の運搬に当たっても, 核燃料物質等の工場又は事業所外における運搬に関する規則等に規定する運搬の技術上の基準に従って 保安のために必要な措置を講ずることができる。 原子炉等規制法に基づき核燃料物質等を工場又は事業所外において運搬する場合, 次の文章の空欄の部分に入る適切な語句,記号又は数値を番号とともに記せ。 なお,同じ番号の空欄には,同じ語句,記号又は数値が入る。

【輸送物の区分】

我が国では,核燃料物質等を次に掲げる核燃料物質等の区分に応じ, それぞれに定める種類の核燃料輸送物として運搬することとしている。

(ア) 危険性が極めて少ない核燃料物質等として主務大臣の定めるもの(例:劣化ウラン
…………[①L]型輸送物

(イ) 主務大臣の定める量を超えない量の放射能を有する核燃料物質等 (上記(ア)の核燃料物質等を除く)(例:新燃料集合体,低濃縮ウラン化合物)
…………A型輸送物

(ウ) 上記(イ)の主務大臣の定める量を超える量の放射能を有する核燃料物質等 (上記(ア)の核燃料物質等を除く)(例:使用済燃料,MOX燃料) …………[②BM]型輸送物又はBU型輸送物
なお,[②BM]型輸送物については,[③国際]輸送において関係する全ての国の承認が必要となる輸送物である。

(エ) 上記(ア)から(ウ)にかかわらず,[④放射能濃度]の低い核燃料物質等又は核燃料物質等により 表面が[⑤汚染]された物であって危険性が少ないものとして主務大臣の定めるもの(例:天然ウラン化合物)
…………IP-1型,IP-2型,IP-3型各輸送物

外運搬規則第三条(核燃料輸送物としての核燃料物質等の運搬)

【IP-1型輸送物】

IP-1型輸送物に係る技術上の基準は,次に掲げるものとする。

(オ) 容易に,かつ,安全に取扱うことができること。

(カ) 運搬中に予想される温度及び[⑥内圧]の変化,振動等により,き裂破損等の生じるおそれがないこと。

(キ) 表面に不要な[⑦突起物]がなく,かつ,表面の[⑤汚染]の除去が容易であること。

(ク) 材料相互の間及び材料と収納される核燃料物質等との間で危険な物理的作用又は化学反応の生じるおそれがないこと。

(ケ) 弁が誤って操作されないような措置が講じられていること。

(コ) 表面の放射性物質の密度が主務大臣の定める密度を超えないこと。

(サ) 外接する直方体の各辺が[⑧]センチメートル以上であること。

(シ) 表面における1センチメートル線量当量率が[⑨]ミリシーベルト毎時を超えないこと。
ただし,専用積載として運搬する核燃料物質等であって,所要の運搬の技術上の基準に従うもののうち, 安全上支障がない旨の主務大臣の承認を受けたものは,表面における1センチメートル線量当量率が [⑩]ミリシーベルト毎時を超えないこと。

(ス) 表面から[⑪]メートル離れた位置における1センチメートル線量当量率 (コンテナ又はタンクを容器として使用する核燃料物質であって, 専用積載としないで運搬するものについては, 表面から[⑪]メートル離れた位置における1センチメートル線量当量率に 主務大臣の定める係数を乗じた線量当量率)が100マイクロシーベルト毎時を超えないこと。 ただし,核燃料輸送物を専用積載として運搬する場合であって, 安全上支障がない旨の主務大臣の承認を受けたときは,この限りでない。

外運搬規則第八条(IP-1型輸送物に係る技術上の基準) 【参照】外運搬規則第四条二,三(L型輸送物に係る技術上の基準)、第五条二,七,八(A型輸送物に係る技術上の基準)

【混載制限】

(セ) 表面からの平均熱放出率が[⑫十五]ワット毎平方メートルを超える核燃料輸送物等は, 熱を除去する装置の設置その他の特別な措置を講じない限り他の貨物と混載してはならない。

(ソ) 核燃料輸送物等は,次に掲げるものと同一の車両に混載してはならない。
火薬類取締法(昭和25年法律第149号)に規定する火薬類及び[⑬がん具]煙火
高圧ガス保安法(昭和26年法律第204号)に規定する高圧ガス([⑭消火器]に封入したものを除く。)
・揮発油,アルコール,二硫化炭素その他の引火性液体で引火点が[⑮五十]度 (専用積載の場合にあっては,[⑯八十五]度)以下のもの。
・塩酸,硫酸,硝酸その他の強酸類で酸の含有量が体積百分率で[⑰]パーセントを超えるもの。
・上記に掲げるもののほか,核燃料輸送物の安全な運搬を損なうおそれのある物質

車両運搬規則第六条(混載制限)

【車両に係る線量当量率等】

核燃料物質等を車両に積載した状態における線量当量率は,次に掲げる場所ごとに, それぞれ当該各号に定める値を超えてはならない。

(タ) 車両の表面(車両が開放型のものである場合にあっては,その外輪郭に接する垂直面及び車体の底面) 最大線量当量率が[⑱]ミリシーベルト毎時

(チ) 車両の前面,後面及び両側面(車両が開放型のものである場合にあっては,その外輪郭に接する垂直面) から[⑲]メートル離れた位置 最大線量当量率が100マイクロシーベルト毎時

(ツ) 車両による運搬に従事する者が通常乗車する場所 最大線量当量率が[⑳二十マイクロシーベルト毎時

車両運搬規則第十一条(車両に係る線量当量率等)

原田 晃男; 佐藤 忠; 中島 邦久; 小室 雄一; 白石 浩二; 服部 隆充; 生田 優子; 谷内 茂康; 櫛田 浩平 第37回核燃料取扱主任者試験問題・解答例集,2005年, JAERI-Review 2005-026, https://doi.org/10.11484/jaeri-review-2005-026

第36回 放射線の測定及び放射線障害の防止に関する技術

放射線の測定及び放射線障害の防止に関する技術

第1問

次の文章の空欄に入る適切な語句又は数値を番号とともに記せ。 なお,同じ番号の空欄には同じ語句又は数値が入る。

(1) 中性子は電気的に[①電荷]を持たないため[②直接]電離は起こさないことから [①]を持つ粒子とは異なった方法で測定される。 検出効率は一般的に[③]く,[①]を持たないことにより [④電場(クーロン力]の影響を受けないので,低エネルギーであっても[⑤原子核] の近くにまで接近することが[⑥可能]である。 よって[⑤]との反応が起こる確率は[⑦大き]いことになる。 [⑧]い中性子と[⑨]い中性子はその特徴が大きく異なり, 反跳粒子のエネルギーが[⑩]すぎると陽子反跳法が利用できない [⑨]い中性子原子核の近くにいる時間が[⑪]くなるので [⑤]反応の確率は一般的に[⑦]くなり,[⑤]反応を利用する方法が主体となっている。

(2) 作業環境中の中性子は一般に[⑫中性子から[⑬14]MeV程度の [⑧]い中性子まで広いエネルギーの分布を持っている。 また粒子フルエンスからの線量当量への換算係数は中性子エネルギーにより [⑦]く変化する。 人体に対して[⑧]い中性子が入射した場合は主に[⑭水素]原子との [⑮弾性散乱]反応によって,そのエネルギーを失い,[⑫]中性子となる。 この[⑫]中性子の測定にはB-10との[⑯10B(n,α)7Li]反応を利用した検出器が良く使われる。

(3) 今,ここに標準状態の組織等価気体が封入された1 mm厚の人体組織等価物質からなる 内径10 cmの球形をした電離箱がある。 この電離箱に対して数MeVの中性子による荷電粒子平衡が成り立つとしたとき, 電離による電流値がQ(A)を示した場合における組織に対する吸収線量率を求める場合は, 電離箱に封入されている気体が組織等価物質であることから 吸収線量率は組織吸収線量率と同一と考えて,まず, 充填されている気体の質量としてM(g)を求め, このときの組織等価気体に対するW値を34(eV), 電子の電荷を1.6×10-19(C)とすると, 電離箱に示された電流値Q(A)から単位時間当たりに吸収するエネルギー量を求める。 これらの関係から,求めるべき吸収線量率X(Gy・s-1)は[⑰3.4×104 Q/M(Gy・s-1)]となる。

解説: Q(A)の電流は、1秒間当たりQ/(1.6×1019)個のイオン対が生成していることである。 1個のイオン対をつくるに要する平均のエネルギーは、W×1.6×10-19(J)である。
したがって、組織等価物質の単位質量当たりエネルギー吸収率、すなわち、吸収線量率D(Gy/s)は、


D=\frac{ Q/1.6\times10 ^ {-19}\times W\times 1.6\times 10 ^ {-19} \textrm{ [J/s} }{ 10 ^ {-3}M \textrm{ [kg]}} =10 ^ {3} WQ/M =34\times10 ^ {3}Q/M \textrm{ [Gy/s]} ] すなわち..

D = 3.4×104 Q/M (Gy・s-1)

なお、ここでは組織等価気体の種類が示されていないので気体の質量Mは計算できない。 この種の気体としては、CH4 64.4%、CO2 32.4%、N2 3.2%などがある。

第2問

次の(1)から(10)までの問の   印で示した語句が文章中で正しく使われている場合は ○印を,違っている場合は×印を付け適切な語句又は数値を番号とともに記せ。

(1) 線量計α線の測定としてn型シリコンの表面に金を蒸着した表面障壁型が使われている。

解答例:× アルファ線スペクトロメータ(適当な名前がないが、強いて書けば)

(2) 放射性液体廃棄物の処理法の一つに溶液中の放射性物質を溶媒と分離させ, 廃棄物の容積を減容する濃縮法がある。

解答例:

(3) 電離箱の両極に電圧を加えていくと電離イオンのために回路に電流が流れる。 この電離電流は両極に加えた電圧が低い場合は再結合する。

解答例:× 電子-イオン対 (電流が再結合する事はなく、電子とイオンが再結合する)

(4) γ線のスペクトル測定において複数のγ線が同時に全吸収されたとき, これらのγ線エネルギーの和に相当する位置に現れるピークをエスケープピークという。

解答例:× サムピーク

(5) 線源から計数管に遠ざかる方向に出た放射線が,線源の支持体と散乱を起こすことで, 計数管に入射する現象はフェーディクングである。

解答例:× バックスキャタリング

(6) β線のエネルギー測定に適しているNaI(Tl)を利用すると容量が大きいものが作製でき, 高い計数率を得ることができる。

解答例:× γ線

(7) アラニ線量計放射線照射によって生成されるラジカルについて 電子スピン共鳴を利用することで100 Gy以上を評価するのに適している。

解答例:

(8) 検出器で得られるパルス波高分布を検出器による中性子への応答関数を用いることで 中性子のエネルギースペクトルに変換する方法に放射化法がある。

解答例:× アンフォールディング (unfolding)

(9) Co-60のγ線をしゃへいする場合,しゃへい物の厚さと密度の積が同じで有れば, 鉛やコンクリートを用いてもしゃへい効果は変わらない。

解答例:× 半価層

(10) GM計数管の計数率が高くなると数え落としが生じる。 分解時間を0.2 msecの場合に毎秒1000カウントを計測すると10%の数え落としとなる。

解答例:× 20
newclears注: 真の計数率をn0、 分解時間をτとすると、 計測された計数率nは n = n0 / (1+n0τ) と書ける。数値を代入すると n = 1000 / (1+1000×0.2×10-3) = 833.3 となり、16.67%の数え落としとなる。これを有効数字1桁に丸めると20%となる。

第3問

次の文章の空欄に入る適切な語句又は数値を番号とともに記せ。 なお,同じ番号の空欄には同じ語句又は数値が入る。 また説明を求めている問については200文字以内で答えよ。

(1) トリチウム水は摂取後に人体の[①内水(または自由水)]に取り込まれることにより人体の[②軟組織]に均ーに分布する。 この体内に取り込まれたトリチウム水の一部は組織内で[③有機結合(または有機化)]し, 体内組織の[④代謝]にもよるが,内部被ばくをもたらす寄与分は大凡10%と仮定される。 それ以外のトリチウム水については,成人の実効半減期は約[⑤10]日であり,[⑥全身※]に残留する。 ※⑥は「体内」でも正解かもしれない。

(2) ある放射線業務従事者が放射線作業中にトリチウム水蒸気を吸入摂取した場合の摂取量と実効線量の評価は, [⑦バイオアッセイ(または排泄物モニタリング)]法により尿試料を用いて測定される。 この他,簡便な線量評価の方法としては,[⑧呼気]を用いる推定法がある。 放射線業務従事者がトリチウムを含む水蒸気を吸入摂取した場合等に, [⑧]中に含まれるトリチウム濃度を測定することで体内量を推定することが可能である。 この方法としてはバブラー又は[⑨コールドトラップ(または冷却凝縮捕集)]法等により,[⑧]を捕集する。 捕集した[⑧]水はバイアル瓶に入れ,水量を測定した後,[⑩液体シンチレーションカウンタ]で測定される。

(3) トリチウム雰囲気で作業を行う場合の有効な防護服の特徴について記せ。

解答例:

  • トリチウムの吸入摂取を防止し、清浄な空気を呼吸できるようにエアラインあるいは自給式呼吸器を備えていること。
  • トリチウムの経皮摂取を防止するため、全身を覆う構造であること。
  • 防護服の材質はトリチウム水に対する透過が少ないこと。
  • トリチウムの侵入を防止するため、防護服内が加圧できること。
  • 空気冷却ができること。
  • 通信機能がついていること。
  • 着脱が容易であること。
  • 耐久性があること。
  • 除染あるいは洗浄が可能であること。

第4問

次の文章中の空欄に入る適当な語句を下欄から選び,番号とともに記せ。 なお,同じ番号の空柵には同じ語句が入る。

放射線障害の感受性は組織によって異なるが,一般的に次の原則が成り立っている。 この原則は発見者の名前からベルゴニー・トリボンドーの法則と呼ばれている。
・細胞は分裂頻度が高いほど放射線感受性が[①高い]。
・将来[②長期にわたって]分裂する細胞は放射線感受性が高い。
・形態的あるいは機能的に[③未分化な]細胞は放射線感受性が高い。

ベルゴニー・トリボンドーの法則から予測される通り, 血液中の成熟した(即ち分化しきった)血球細胞の放射線感受性は[④低い]。 しかし成熟した血球細胞であっても[⑤リンパ球]だけは例外的にベルゴニー・トリボンドーの法則に反する感受性を示す。 一方,[⑥骨髄]に存在し,あらゆる血球細胞に分化しうる[⑦多能性幹細胞]は, [③]細胞であることからベルゴニー・トリボンドーの法則から予測される通り放射線感受性が高い。 従って[⑥]が照射されるとすべての血球細胞が減少し[⑧再生不良性貧血]になることがある。 [⑧]になると血小板の減少により[⑨出血]を引き起こし, また白血球の減少により[⑩感染症]をともなう危険が生ずる。

(イ)感染症 (ロ)肝臓 (ハ)再生不良性貧血 (ニ)低血圧 (ホ)未分化な (ヘ)短期間だけ (卜)リンパ球 (チ)赤血球 (リ)骨髄 (ヌ)高い (ル)多能性幹細胞 (ヲ)低い (ワ)出血 (カ)長期にわたって (ヨ)分化した (タ)白血病

第5問

次の事項について簡単に説明せよ。

(1) 10日則 (10-day rule)
(2) 決定器官
(3) 腺窩(クリプト)
(4) 放射線宿酔
(5) 確定的影響

解答例:

(1) 10日則 (10-day rule)
過去に「妊娠が可能な年齢の女性の下腹部や骨盤を含むX線検査は、月経開始後10日間に限って行なう」 とされていた規則。現在この規則は守る必要はないことが分かっている。

解説: かつて、妊娠初期(特に着床前期)の胎児が放射線被曝に高感受性であると考えられたため、 「妊娠が可能な年齢の女性の下腹部や骨盤を含むX線検査は、月経開始後10日間に限って行なう」 ことを1962年の国際放射線防護委員会(ICRP)勧告に取り入れられた。 しかし、その後の研究で、受胎後3週以内の胚については線量にかかわらず奇形発生の心配がないこと、 それ以降の時期でも奇形の発生には閾値(ICRP1990勧告では、100 mGy)があることが分かり、 心配のし過ぎであるとして1980年代半ばには事実上取り消された。 現在でも、胎児への無用の被曝を避けるという理由で10日則が正当化されることがあるが、 奇形児が生まれることを恐れて必要なX線検査を受けるのを躊躇したり、 人工妊娠中絶を選択させる圧力となる弊害が大きい。.

(2) 決定器官
全身が外部被曝した場合に、放射線によって影響を受けやすく、また身体機能上重要なために、 放射線防護上特に注目する必要のある臓器。 決定臓器ともいう。 造血器官、生殖腺、目の水晶体、肺、甲状腺、皮膚などがこれに相当する。

(3) 腺窩(クリプト)
小腸で栄養などを吸収する役割を担う絨毛(じゅうもう)細胞が作られる場所。 絨毛細胞は、小腸粘膜の絨毛の基底にある腺窩で幹細胞から作られ、絨毛壁に沿って上部へ移行し、 2~3日後に先端で脱落して寿命を終える。 小腸が放射線を浴びると腺窩の幹細胞の細胞分裂が停止し、新たな絨毛細胞が供給されないのに、 脱落は継続するため、被曝後2~3日で下痢が始まる。

(4) 放射線宿酔
全身、あるいは身体の広い範囲に比較的短時間に高い線量の放射線を被曝した場合に 自律神経系の反応によって起こると考えられる神経症状の一種で、 嘔気、食欲不振、全身倦怠感などの二日酔いに似た症状。 現れるまでの時間や程度は被曝線量に依存する。 放射線治療の副作用として見られるほか、致死線量の被曝では例外なく起こるとされている。

(5) 確定的影響
放射線の人体影響のうち、ある程度の線量を浴びないと現れない影響。 非確率的影響ともいう。 発癌以外の全ての身体的影響、すなわち放射線火傷、白内障不妊症、 胎児への被曝による奇形発生や精神発達遅れなどが含まれる。 それぞれの影響が現れるのに必要な最低線量を閾値という。 閾値は影響の種類によって異なり、閾値を越えると線量に比例して影響が現れる頻度や症状の程度が大きくなる。

谷内 茂康; 中村 仁一; 天谷 政樹; 中島 邦久; 小室 雄一; 中島 勝昭; 小林 泰彦; 佐藤 忠; 須賀 新一; 野口 宏; 笹本 宣雄; 櫛田 浩平 第36回核燃料取扱主任者試験問題・解答例集,2004年, JAERI-Review 2004-020, https://doi.org/10.11484/jaeri-review-2004-020

第36回 核燃料物質の取扱いに関する技術

核燃料物質の取扱いに関する技術

第1問

核燃料施設の安全管理に関して,以下の問に答えよ。

(1) 文章中の空欄に入る適切な語句を番号とともに記せ。

核燃料施設における平常時の安全性は,一般公衆に対する[①内部被曝],放射線業務従事者に対する[②内部被曝] 及び[③外部被曝]の防止に大別できる。 核燃料施設は装置,セル(フード,グローブボックス),建屋等の[④多重障壁]を有するとともに, 内部を[⑤負圧に]して放射能の漏洩を防止する。 気体状の六フッ化ウランを取り扱うウラン濃縮施設では,[⑥機器(装置)]あるいは[⑦系統(配管)]内への閉じ込めが基本であり, 漏れ出たウランは[⑧コールドトラップ]及び[⑨ケミカルトラップ(NaFなど)]で捕集される。 プルトニウムを取り扱う加工施設ではウラン加工施設と比ベ,しゃへい,特に[⑩中性子]のしゃへいに注意が必要である。

解説: ①については、排気中の放射性雲、地表に沈着する放射性物質、排水中の放射性物質、 保管廃棄施設の放射性廃棄物等からの外部被曝も考えられるが、核燃料物質が主たる汚染物質であるとするならば 内部被曝がより問題になると考えられる。

⑩では、中性子線とγ線のどちらを解答とするか、迷うところである。 一方を選べば他方は重要視しなくてよいともなりかねない。 迷った末に中性子線を解答とした。 理由は、Am-241のγ線が1 mm厚程度の鉛板で、簡単に遮蔽できてしまう (Pu-239、U-237以外のγ線強度は2桁以上減衰してしまう)のに対して、 中性子線を遮蔽するには、分厚い水やパラフィンなどが必要で、グローブによる作業性が悪くなるばかりでなく、 臨界管理および防火上からも好ましくないため中性子線の遮蔽には特に注意が必要になると考えるからであります。 ただし、γ線に関しても、半減期14.4年のPu-241のβ崩壊によって生成するAm-241のγ線量は 時間と共に増大するため特に注意が必要で、γ線による被曝低減のために 定期的に陰イオン交換法などによるPuの精製を行い、Amを除去しなくてはならないといった規定がある。 この問題で想定しているPu取扱量ははっきりしないが、おそらくkgオーダーの取扱量として 出題者は問題を作成しているであろうから、Pu取扱量にほぼ比例して線量が増大する中性子線のほうが、 解答としてより好ましいのではないかと考える。

(2) 以下の場合に採られる適切な対策及び安全管理を右欄に示すものから選びその記号を番号とともに記せ。 安全管理に対して該当する項目が複数ある場合には,それらをすべて挙げよ。

(a) 平常時に,一般公衆の内部被ばくを防止するために採られる対策及びそのためになされる安全管理(3項目:①,②,③)

(b) 平常時に,放射線業務従事者の外部被ばくを防止するために採られる対策及びそのためになされる安全管理(3項目:④,⑤,⑥)

  • イ、 作業時間の制限、Ⅱ 出入管理
  • ウ、 空間線量率の監視、Ⅲ 放射線モニタリング
  • コ、 放射性物質量の監視、Ⅵ 工程安全管理

(c) 火災・爆発に関する異常・事故を防止するために採られる対策及びそのためになされる安全管理(1項目:⑦)

  • ソ、 化学的制限値の維持、Ⅵ 工程安全管理

(d) 臨界に関する異常・事故を防止するために採られる対策及びそのためになされる安全管理(3項目:⑧,⑨,⑩)

  • ウ、 空間線量率の監視、Ⅲ 放射線モニタリング
  • セ、 核的制限値の維持、Ⅳ 臨界安全管理
  • タ、 人的操作の確認、Ⅶ 人的安全管理

解説: この問題はできがよくない。 問題中では「安全管理」なのに、選択肢の枠の左上では「管理法」と書いてあって、時間に余裕がないと混乱する。 より強く指摘すべき点は、複数の専門家に解答を求めたが、必ずしも良い一致をみなかったことである。 安全管理については複数の項目を選ばなければならない場合もあり、これが解答のバラツキを一層助長した。 このような結果にもとづく解答例であることを断っておく。

第2問

核燃料施設の臨界管理について,以下の問に答えよ。

(1) 次の文章中の(イ)から(チ)のかっこの部分の中から適切な語句又は数値を選び,記号ともに記せ。

① 安全取扱質量限度値は,誤って核分裂性物質を(2倍)量装荷しても 臨界に達しない量として定められている。

核分裂性物質を工業的規模で多量に取り扱う場合,容器の直径や寸法を限度値以下にする (形状安全管理)が用いられる。

③ 臨界安全管理で用いられる二重偶発性原理とは,起こりそうもない独立した (2つ)の事象が同時に発生しない限り安全であるという考え方である。

④ 水溶液系において,235Uの最小臨界質量239Puの最小臨界質量のおよそ (1.6)倍,233Uの最小臨界質量239Puの最小臨界質量のおよそ (1.2)倍である。

⑤ 臨界警報装置は,その3つの検出端のうち(2つ同時に)信号を検知した場合にのみ, 警報を発するようにする。

⑥ 水溶液系での臨界事故では,放出されるエネルギーは初期バーストのあと, (低いレベルで継続する

⑦ 燃焼度クレジットとは,核燃料の燃焼に伴い,核燃料の反応度が (減少する)ことを考慮することである。

解説: ①から⑦の中の4問は、第26回の第4問の(1)から(5)の中の4問と類似である。

(2) 燃焼度クレジットの原因となる要因を2つ挙げよ。

解答例: 核分裂性物質の減少、及び核分裂生成物の生成

解説:核燃料が燃焼すると、すなわち燃料の燃焼度が増えると、U-235の量が減少する一方でPu-239の量は増加する。 前者は反応度を下げ、後者は反応度を上げる方向にそれぞれ寄与する。 2つの効果を合計すると、反応度を下げることになる。 核分裂生成物は中性子を吸収する性質が強く、その増加は反応度の低下を招く。 なお、問題中の「原因となる要因を…」という表現は、日本語として正しくない。 受験者を惑わせる。 たとえば「前問⑦における反応度変化の理由を2つ挙げよ。」とでもすべきである。

(3) 核燃料施設における単一ユニットでの臨界を防止するために講じられる対策を5つ挙げよ。

解答例: 形状寸法制限、質量制限、容積制限、溶液濃度制限、中性子吸収材の使用

解説: 「ウラン加工施設安全審査指針」の指針10.からの出題と考えられる。

(4) 臨界防止のため中性子のしゃへいに用いられる物質を2つ挙げよ。

解説: コンクリート、水、パラフィンのうち2つを挙げればよい。
なお、問題中の「しゃへい」という表現はふさわしくない。 「隔離」とでもすべきである。

(5) これまでに報告されている水溶液系の臨界事故では,およそ1018個の核分裂が起きている。 このとき放出されるエネルギーがすべて,瞬時に吸収されるとしたとき, そのエネルギーで1 m3の水の温度はいくら上昇するか求めよ。
ただし,水の比熱容量は4 J/K,1核分裂当たりの放出エネルギーは200 MeV,電子の電荷は1.6×10-19とする。

解説: 問題中の表現「水の比熱容量4 [J/K]」に従うと、後述の式の単位の整合がとれなくなる。 そのためここでは、「水の比熱 4 [J/g・K]」と考えることにする。 もう一つ、「電子の電荷は1.6×10-19 Cとする。」について考える。 問題作成者は、この情報をもとに1 [eV] = 1.6×10-19 [J]であることを導かせることを課したのであろうが、 そうまでする必要があるのか疑問である。

定義によれば、1 [V]の電位差の場において、1 [C]の電荷を移動する時に得られるエネルギ (あるいは、要する仕事)は1 [J]である。 これと同じ電位差の場において、1.6×10-19 [C]の電荷を持つ電子を移動する時に得られるエネルギは 1.6×10-19 [J]で、これを1 [eV]と表現する。 以上のことから、水の温度の上昇T [K]ないしT [℃]は、次のようにして求められる。

T=[1018 (fission) × 200×106 (eV/fission)× 1.6×10-19 (J/eV)]÷[4 (J/g・K) ×1 (g/cc) ×106(cc)]

従って T=8ケルビン

(newclears注:比熱(比熱容量ともいう)の単位は、一般に [J/(g・K)] が使われる。 一方、単位に [J/K] を使うのは、熱容量である。 単位の次元からも分かるように、比熱は物質1 gを対象とし、熱容量では任意の量を対象とする。)

第3問

核燃料加工施設における核燃料物質の取扱いに関して,以下の問に答えよ。

(1) MOX(混合酸化物)燃料製造施設のペレット製造工程について, 軽水炉に供給される低濃縮二酸化ウラン燃料の製造工程との違いを, ペレット中の核分裂性物質濃度の管理の観点で説明せよ。

解答例: UO2燃料製造工程では、燃料加工工程に供給される前段階に、 ウラン原料の濃縮度が調製されているため、特段のウラン濃縮度の調製は不要である。 一方、MOX燃料製造工程では、燃料加工工程中においてプルトニウム原料、 ウラン原料及び工程中で発生するMOX回収粉末を各々分析して組成の確認を行い、 燃料仕様で定められたプルトニウム富化度とするために、各原料の混合割合を決定し、 これに基づき秤量、混合する。 原料の混合方法には、湿式法と乾式法の2つがある。 通常は、臨界管理上有利な後者により混合される。 この方法による混合では、プルトニウムスポットと呼ばれるプルトニウム濃度の高い塊が、 混合された原料粉末に発生することがある。 プルトニウムスポットでは、均一混合された部分に比べて局所的な発熱が生じ、 被覆材(管)の破損にもつながる恐れがあることから、厳密な管理が必要になる。 比放射能が強いため、完全な密封状態での取扱いが必要となる。 プルトニウムスポットの検査方法としては、αオートラジオグラフィー法が一般的である。

(2) MOX燃料製造施設におけるMOXを取り扱う設備・機器及びそれを収納するグローブボックスの安全管理に関して, 以下の事項について説明せよ。

① ペレット焼結工程に関して,焼結炉内に水素ガスを供給する際の水素ガスによる爆発の防止の観点で, 設計上措置すべき事項。

解答例:

  1. 水素を取り扱う設備は、適切に接地すること。
  2. 水素ガスが漏洩した場合においてそれが滞留しない構造とすること。
  3. 換気設備等により、漏洩ガスを排除すること。
  4. 防爆型機器の採用により、着火源を排除すること。
  5. 漏洩検知器が漏洩を検知した場合に、水素の供給を停止できること。
  6. 水素の供給不能状態を検知し、自動的に不活性ガスに置換する機構を設けること。
  7. 運転時に空気混入を防止するため焼結設備の内部を正圧に保持すること。
  8. 焼結設備から排出される水素を滞留することなく安全に排出するための措置を講じること。 具体的には、換気装置又は排出口にパイロットバーナ等を設け、水素を燃焼させることなど。
  9. 焼結設備の内部で水素を燃焼させるものは、燃焼が停止した場合に水素の供給を自動的に停止する構造とすること。
  10. 水素の爆発下限値を考慮して、焼結雰囲気として数%水素-不活性ガスの混合ガスにて焼結を実施する。

MOXを取り扱う設備・機器を収納するグローブボックス内の火災防止の観点で,設計上及び管理上措置すべき事項。

解答例:

設計上措置すべき事項

  1. グローブボックスの構成部材は、可能な限り不燃性又は難燃性材料とする。 また、火災の発生を防止するため、あるいは万一火災が発生した場合にその拡大を防止するため、 グローブボックス内温度上昇警報設備を設け、 消火措置として自動的に不活性ガスをグローブボックス内に放出する消火設備用のノズル・配管設備等の設計対策を行う。
  2. 焼結設備その他の加熱を行う設備は、当該設備の熱的制限値を超えて過熱されるおそれがないように インターロックを設けること。

管理上措置すべき事項

  1. グローブボックス、オープンポート及びフード(グローブボックス等)内で アルコール等の引火性液体を取り扱う場合は、次の事項を遵守すること。
    (a) グローブボックス等内で着火源(裸火、電熱器等)を使用しないこと。
    (b) グローブボックス等内に備えてある金属消火剤がすぐ使用できる状態になっていること。
    (c) 引火性液体をグローブボックス等へ入れる場合は、可能な限り少ない量とすること。
    (d) グローブボックス等内では、引火性液体の蒸気がグローブボックス等の床面に集まり爆発限界になりやすい。 よって、引火性液体は、1回の使用量を制限する。
  2. グローブボックス等内で発する設備機器等の近傍には、 火災又は爆発するおそれのある引火性液体及び可燃物等は置かないこと。
  3. グローブボックス等内に入れる可燃物(可燃性溶剤、紙等)は、最小限にとどめること。
  4. グローブボックス等内で発生した可燃性廃棄物は、金属製の容器に収納すること。
  5. グローブボックス等内の金属消火剤が吸湿固化していないことを定期的に確認すること。
  6. ヒータ部が露出した電熱器を使用しないこと。

(3) MOX燃料製造施設におけるMOXのグローブボックス内での取扱いに関して, グローブボックス作業者のγ線による手部被ばくを低減するために措置すべき事項について説明せよ。

解答例:

  1. 作業環境の線量率の低減のため、グローブボックス等内の整理整頓、清掃を定期的に行うこと。
  2. グローブボックス等内で発生した廃棄物は、定期的に整理、排出すること。
  3. グローブボックス等作業は、計画的、能率的かつ慎重に行うこと。 また、身体防護具(含鉛手袋)を着用し、被ばくの低減に努めること。

(4) MOX燃料製造施設におけるグローブボックスの閉じ込め機能について説明し, グローブボックス作業開始前の日常点検として実施すべき事項について説明せよ。

解答例:

閉じ込め機能

プルトニウムは、内部被ばく防止の観点から、ウランに比べて極めて高いレベルで厳重な閉じ込め対策 (包蔵性管理)が要求される。
グローブボックス内の負圧は、グローブボックスの給気と排気のバランスにより維持される。 排気は、排気口から排風機の強制排気により、給気は給気口から工程室内の空気がダンパーを介して吸引され、 グローブボックス内の負圧がつくられる。
グローブボックスの給気口と排気口には、プレフィルタと高性能(HEPA)エアフィルタが備えられている。 高性能エアフィルタは、給気口に1段、排気口以降の排気系統に2または3段が設置され、 環境への漏洩防止をより確実なものにしている。 高性能エアフィルタの性能は、0.15 μm径の粒子に対して99.97%以上の補集効率となっている。
グローブボックスの漏洩率は、グローブボックスの設置時に使用前のリーク率検査として、 1時間につき0.1体積%以下の気密性を有していることを確認している。
なお、万一、グローブが破損や抜けた場合でも、グローブボックスの開口部(ポート) における空気流入風速が約45 m/sec以上の風量を確保できる設計としている。

(newclears注:風速45 m/sは、速すぎてかえって危険とされる数値のはずである。 0.5 m/secの誤りだと思われる。)

作業開始前の日常点検として実施すべき事項

グローブボックス等の始業前点検の項目は以下の通り。

① グローブボックスの負圧
- 点検方法:負圧
- 判定基準:負圧が規定値の範囲内であること

② グローブ
- 点検方法:目視
- 判定基準:亀裂、ピンホール、変色がないこと。取付け状態が正常であること。

③ 温度上昇警報
- 点検方法:目視
- 判定基準:温度が出力されていること。

④ 負圧警報
- 点検方法:目視
- 判定基準:負圧が出力されていること。

(5) ウラン燃料製造施設で非密封のウランを取り扱う区域において,ウランによる作業環境の汚染防止のために, 設計上措置すべき事項について説明せよ。

解答例:

ウラン加工施設の基本設計において非密封のウランを取扱う区域、すなわち第1種管理区域では、
- ウランを収納する設備・機器が飛散や漏洩のない構造
- 局所排気系や第1種管理区域の給排気設備の設置
- 床・壁の表面はウランが浸透しにくく除染が容易なものとする
さらに非密封のウランを取扱う区域において法令に基づいて設計上措置すべき事項は、
- フードの開口部は風速を適切に維持する
- 換気設備の換気能力
- 換気設備は逆流しない
- ろ過装置の場合、機能を維持しうるものであり、汚染の除去又は取り替えが容易な構造とすること。

参考資料: 「ウラン加工施設安全審査指針」の指針4.「閉じこめの機能、1. 作業環境の汚染防止に対する考慮」、 「加工施設の設計及び工事の方法の技術基準に関する規則」第七条、第九条、第十条

解説: 上記(4)は第35回の第2問の(4)と類似である。 (5)は第35回の第2問の(1)と類似である。

第4問

核燃料サイクル施設における核燃料物質の取扱いに関して,以下の問に答えよ。

(1) ウラン濃縮用六フッ化ウランを製造する転換施設において, 二酸化ウラン粉末から六フッ化ウランガスを製造する以下の工程について,反応の概要を説明し, 使用される反応装置を挙げよ。
① HFフッ化工程
② F2フッ化工程

解答例:

① HFフッ化工程
HFガスによりUO2からUF4を生成する。 運転温度は、400から600℃であり、流動床型反応炉やロータリーキルンが用いられる。

② F2フッ化工程
UF4とフッ素ガスとの反応により生成させる。 UF6の転換には、流動床型反応炉やフレームタワー型反応炉が用いられている。 流動床型反応炉の運転温度は、400から540℃程度である。 発生したUF6ガスは、コールドトラップに送られ0から50℃の温度で冷却、固化される。

参考文献: JNC公開資料「ウラン採鉱から濃縮・再転換まで」W6413 2003-001

(2) 六フッ化ウランの取扱いに関して,以下の文章の空欄に入る適当な語句を番号とともに記せ。

「六フッ化ウランは,シリンダーに充填され保管されている状態では[①固体]であるが, 密閉した系内で加熱し,液化する際には[②体積膨張]によりシリンダーやバルブの破損の可能性があるので, シリンダーヘの過充填防止など作業上の注意が必要である。 また,万一空気中に漏洩した場合には,空気中の[③]との反応により[④UO2F2]と[⑤HF]が生成し, 吸入した場合には人体障害を起こす。」

(newclears注:出典では①の解答例は「個体」となっていたが、「固体」の誤記と判断した。 ④のフッ化ウラニルは次の反応式で生成される。 UF6+2H2O→UO2F2+4HF)

(3) 濃縮施設において天然ウランをガス拡散法や遠心分離法により濃縮する場合, 所定の濃縮度まで分離操作を何回も繰り返す必要がある。 多くの単位分離器を連結したカスケードの種類である「理想カスケード」,「方形カスケード」, 及び「ステップカスケード」について,それぞれ説明せよ。

解答例:

理想カスケード
n段目の分離機のテイル濃度とn-1段目のフィード濃度が同じであるため 混合損失がなく循環流量も最小になるカスケードのこと。

方形カスケード
同じ大きさの分離機で構成され、各段の流量が同じカスケードのこと。 方形カスケードは混合損失が大きく、循環流量も多くなる。 循環流量が多いためガスを循環させるためのエネルギー消費が大きくなるが、 分離機の設計製作面で低コスト化がはかれる。

ステップカスケード
大きさの異なる方形カスケードを組み合わせて、理想カスケードに近づけたものをいう。 大中小の3種類程度異なる大きさの分離機によってカスケードを組むとすれば、 分離機の設計製作費もあまり増加せず、しかも理想カスケードに近い循環流量の方形カスケードを組むことができる。

参考文献: 公開資料「燃料サイクルフロントエンドⅠ ウラン資源・ウラン精錬およびウラン濃縮 教育資料1 PNC TN8420 91-009」

(4) ピューレックス法の使用済燃料の再処理施設で発生する高レベル放射性液体廃棄物を貯槽にて安全に保管する上で, 以下の項目について設計上措置すべき事項を説明せよ。
① 崩壊熱
放射線分解

解答例:

① 崩壊熱
崩壊熱により溶液が沸騰するおそれのある場合は、例えば、 電源系統を含め独立2系統の冷却水系により冷却し、冷却能力の喪失による溶液の沸騰を防止する。 さらに、電源の信頼性を向上させるため非常用の発電機からも受電できる設計とする。 このほか、常時、空の予備貯槽を用意しておき、万ーの場合にはこの貯槽に溶液を移し変えることができるようにしておく。

放射線分解
溶液の放射線分解で発生する水素濃度が可燃限界濃度(4%)に達する場合は、 圧縮空気系から空気を供給するか、排風機による排気等により水素を可燃限界濃度未満に抑制する。

(5) ピューレックス法の使用済燃料の再処理施設において,放射性液体を取り扱う塔槽類等をセル内に設置する際に, 閉じ込めの観点で設計上措置すべき事項を説明せよ。

解答例: 放射性液体を内蔵する系統および機器は、原則として、セル等 (セル、グローブボックス及びこれらと同等の閉じ込め機能を有する施設)に収納する。 また、万ーの放射性物質の漏洩を考慮し、セル等には、ステンレス鋼製の漏洩受け皿、漏洩検知器を設置し、 漏洩液の性状に応じた適切な移送先に移送処理ができる設計とする。

第5問

核燃料物質の取扱いに関して次の事項を簡単に説明せよ。

(1) かご型コンテナ(バードケージ)
(2) TRU廃棄物
(3) 減容処理
(4) 直接線とスカイシャイン線
(5) ウラン再転換工程におけるAUC法とIDR法

解答例:

(1) かご型コンテナ(バードケージ)
臨界安全管理のための工学的手法の1つである。 核燃料を含む単ーユニット群の間の中性子相互干渉を抑えるために、 各ユニットをバードケージと呼ばれる強固な籠の中に収める。 こうすることで、籠が妨げとなって、各ユニットが不用意に密接して体系が臨界になることを避けられる。

(2) TRU廃棄物
再処理工場またはMOX燃料加工工場から発生する低レベル放射性廃棄物の一種である。 この廃棄物にはTRU核種が含まれる。 TRUとは transuranics または transuranium の略称である。 原子炉運転中に主に238Uが中性子を吸収してβ崩壊を繰り返し、 ウランより高い原子番号をもつ元素になった種々の核種を指す。 TRU核種が放射性であり、α核種が多いのが特徴である。

別解答: 原子力発電所からの使用済燃料を再処理すると、核分裂生成物の核種(FP)の他 いろいろな高レベル放射性廃棄物が発生する。 この中で原子番号がウラン(U)より高いネプツニウム(Np)、プルトニウム(Pu)、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm) 等の核種群の放射性廃棄物は、アルファ線を放射する核種であり、 かつ半減期が非常に長いので、廃棄物処理処分の観点から他の核種群と区別して、TRU(超ウラン)廃棄物と呼んでいる。 (引用先:原子力百科事典 ATOMICA

(newclears注:引用先ではなくて引用元ではないか。)

(3) 減容処理
放射性廃棄物を貯蔵や処分するまえに、濃縮(水分を蒸発させる)、焼却(布、プラスチックを灰にする)、 切断(放射性のある部分とない部分を分離する)、圧縮(金属片をおしつぶす)、溶融(金属片、粉末を溶かす) などして体積を減らし、貯蔵や処分を容易にすること。 (引用先:原子力百科事典 ATOMICA

(4) 直接線とスカイシャイン線
直接線は、線源から直接的に評価点に到達する放射線のことである。 スカイシャイン線は、天井方向に透過した放射線のうち、上空で大気分子との衝突で散乱されて 再び地上に到達する放射線のことである。 原子力施設の敷地境界での線量は、スカイシャイン線と直接線を合算したものとして評価される。

(5) ウラン再転換工程におけるAUC法とIDR法
AUC法
UF6炭酸ガス(CO2)とアンモニアガス(NH3)と共に水中に吹き込み、 次式の反応によりAUC((NH4)4UO2(CO3)3)を生成する。

UF6 + 5H2O + 10NH3 + 3CO2 → (NH4)4UO2(CO3)3 + 6NH4F

沈殿したAUCはろ過され、流動床型反応炉にて以下の反応によりUO2に分解される。

(NH4)4UO2(CO3)3UO3 + 3CO2 + 4NH3 + 2H2O

UO3 + H2UO2 + H2O

一次粒子の結晶は大きく、粉末の流動性に優れているため、予備成形や粘結材の添加などによる造粒工程は不要。 焼結性に優れ、低温で焼結可能。

IDR法
UF6ガスを水蒸気およびH2と反応させることによって直接UO2粉体を製造する方法であり、 ロータリーキルンが用いられる。以下にIDR法の反応式を示す。

UF6 + 2H2O → UO2F2 + 4HF

UO2F2 + H2O → UO3 + 2HF

UO3 + H2UO2 + H2O

すなわち、

UF6 + 2H2O + H2UO2 + 6HF

一次粒子が非常に微細であるためペレット成形前の造粒工程が重要。 活性で焼結性が良いため密度調整のためポアフォーマが添加される。

参考文献:「燃料サイクルのあらまし」残念ながらリンク切れ

f:id:newclears:20191128230535g:plain

谷内 茂康; 中村 仁一; 天谷 政樹; 中島 邦久; 小室 雄一; 中島 勝昭; 小林 泰彦; 佐藤 忠; 須賀 新一; 野口 宏; 笹本 宣雄; 櫛田 浩平 第36回核燃料取扱主任者試験問題・解答例集,2004年, JAERI-Review 2004-020, https://doi.org/10.11484/jaeri-review-2004-020

第36回 核燃料物質の化学的性質及び物理的性質

核燃料物質の化学的性質及び物理的性質

第1問

軽水炉燃料として現在使用されているUO2燃料にPuO2を加えたMOX(混合酸化物)燃料は, プルサーマル燃料として知られている。 MOX燃料に関する次の物性は,PuO2濃度を増すとどのように変わるのか, 変化の方向をその理由を付けて簡単に記述せよ。

(1) 融点
(2) 熱伝導度
(3) 熱膨張率
(4) クリープ速度
(5) スエリング

解答例

(1) 融点
融点はPuO2の濃度を増すと[低下]する。 PuO2の融点は[2390]℃で、UO2の融点[2840]℃よりやや小さい。 両者は高温で[全率固溶体]を形成し、固溶体の融点はPuO2濃度の増加とともに直線的に[低下]する。

(2) 熱伝導度
燃料ペレットの熱伝導率は[フォノン](格子振動を量子化したもの)の散乱状態に大きく依存している。 すなわち、不純物原子の存在等によりUO2結晶中でのフォノン散乱が多くなると、燃料ペレットの熱伝導率は[低下]する。 UO2対するPuO2濃度を増加させることは、フォノンの散乱中心として働くPuを UO2結晶格子中に[増加]させることを意味する。 つまり、PuO2の濃度増加とともにペレットの熱伝導率は[低下]する。

(3) 熱膨張率
U4+とPu4+の[イオン半径]が同等であること 及びPuが固溶しても結晶構造が変わらないため熱膨張率に影響を及ぼす[原子間ポテンシャル]が UO2とPuO2で同等と考えられる。 このためPuO2を固溶しても[原子間ポテンシャル]の変化が小さく、[熱膨張率]の変化は小さい。

(4) クリープ速度
クリープ速度は、PuO2の濃度を増すと[格子欠陥]が増えてクリープ変形がしやすくなり[大きく]なる。

(5) スエリング
スエリングは、PuO2ホットスポットでの燃焼度の[増大]によるスエリングの増大と 天然UO2の[焼きしまり]の遅延が打ち消しあって、PuO2濃度が増してもほとんど変化しない。

第2問

高出力で照射されたUO2燃料ペレットの断面の組織再編模式図を以下に示す。 この模式図を参考にして,次の文書中の空欄に入る適切な語句又は数値を番号とともに記せ。 なお,同じ番号には同じ語句又は数値が入る。

f:id:newclears:20191128230347p:plain

ペレットを照射していくとUO2ペレットのミクロ組織は温度に依存して変化していく。 高出力で照射されたペレットの断面を見てみると,ペレットの外側つまり被覆管側から内側に向かって,
照射前とそれ程ミクロ組織が変わらない不変領域,
結晶粒の大きくなった[①等軸晶]領域,
径方向に長い結晶粒を持つ[②柱状晶]領域,
中心の[③燃料中心空孔]領域
に分けられる。 [①等軸晶]の領域の成長は原子の[④拡散]によって結晶粒が大きくなったものであり, 1500℃以上の高温で顕著になる。 また温度以外にも燃料の[⑤製造履歴],[⑥添加物]等の影響を受ける。 [②柱状晶]の領域は,ペレットの気孔内でのUO2の[⑦蒸発]―[⑧凝縮]機構で形成される。 大きな温度勾配下で気孔内面のUO2は高温側で[⑦蒸発]し,低温側で[⑧凝縮]する。 これに伴い,気孔は温度勾配と逆方向に移動して,その後に[②柱状晶]が生成される。 一方[③燃料中心空孔]は,気孔が中心部に集結することにより形成されると言われている。 軽水炉燃料の通常運転出力では[①]までで,[②]は生成しないと考えられている。

一方,約50,000 MWd/tを超える高燃焼度下ではUO2ペレットの最外周部に 結晶が細粒化した多孔質領域が生じる。 これは[⑨リム]効果と呼ばれ,ペレット外表面近傍で,238Uの中性子共鳴吸収による [⑩239Pu]の生成が大きくなり,局所燃焼度が上がった為と思われる。

注:⑤⑥は他にO/U比等、粒成長に影響を与える項目なら可

第3問

次の問に答えよ。

(1) アクチノイド元素はAcからLrまでの15個の元素群である。 原子番号の小さい順に7つの元素を示すと,Ac,[①Th],[②Pa],[③U], [④Np],[⑤Pu],[⑥Am]となる。 ①~⑥に入る元素を元素記号で示せ。

(2) ランタノイド元素は水溶液中では3価を示すがアクチノイド元素では安定な原子価は元素により異なる。 Cm,Np,Uの空気に接触している硝酸水溶液中での安定な原子価を示せ。

解答例: Cm [3]価、Np [5]価、U [6]価

(3) ピューレックス法再処理工場ではTBPによる溶媒抽出によりウラン,プルトニウム核分裂生成物より分離する。 ピューレックス法再処理においてウランとプルトニウムの相互分離はどのように行われるか。簡単に説明せよ。

解答例: 使用済み燃料の硝酸溶解液を、パルスカラム、ミキサセトラ、遠心抽出器などの溶媒抽出装置を用いて 有機溶媒と接触させることにより、まずウランとプルトニウムだけを[有機]相に抽出し、 核分裂生成物を[水相]に残す([共除染])。 次にこの有機相を[硝酸ヒドロキシルアミン]などの還元剤を含む水相と接触させることにより、 プルトニウム原子価を調整してプルトニウムだけを[水相]に逆抽出し、ウランと分離する。

(4) UO2+x (x>0),PuO2-y (y>0) のように原子数の比が整数とならない現象を何というか。 また,この理由を簡単に説明せよ。

解答例: [不定比性]。
2成分系で1固相-気相平衡では自由度F=2となり、平衡は温度と組成xで定まり不定比性が現れる。 一方、2固相-気相平衡が成立するとF=1となり平衡は温度のみで定まる。 どちらの平衡系を取るかは、系の自由エネルギーによって定まり、自由エネルギーの小さい平衡系の方が実現する。 アクチノイド元素は比較的[励起されやすい原子価電子を持ち、容易に複数の原子価を取りうるので、 多成分系での組成変化にともなう金属元素原子価の変化はエネルギー的に[容易]であり、このため、 不定比性を取りやすい。

(5) UO2,UN,金属ウランの熱伝導度は大きく異なる。 これらの熱伝導度の大小関係を述べるとともにその理由を簡単に説明せよ。

解答例: 金属ウラン、UN、UO2の順に熱伝導度が[小さく]なる。
金属ウランでは[電子]による熱伝導が支配的であり、 [フォノン]による熱伝導が支配的なUO2に比べて高い熱伝導度を有する。 UNはセラミックスでありながら金属的な性質も持っているため、 フォノンによる熱伝導に加えて電子による熱伝導の寄与があり、 [フォノン]による熱伝導が支配的なUO2に比べて高い熱伝導度を有する。 金属ウランとUNの熱伝導度の差は、熱伝導度に占める電子伝導の割合の差に起因するものと考えられる。

第4問

核燃料の原子炉内挙動に関する次の問に答えよ。

(1) 軽水炉燃料において燃料ペレット中心の温度は核燃料被覆管の表面温度から どのような式や物性値を用いて推定されるか。簡単に説明せよ。

解答例: 燃料被覆管の表面温度から被覆管の内面温度は、被覆管の熱伝導度と燃料の線出力を用いて次のように求められる。 q''':発熱密度 (W/m3)、 T0:燃料中心温度、 T1:ペレット表面温度、 T2:被覆管内面温度、 Tw:被覆管表面温度、 Rf:ペレット半径、 R2:被覆管内径、 Rc:被覆管外径、 bg:ギャップ幅、 bg:被覆管肉厚 (m)、 hc:ギャップコンダクタンス (W/m2℃)、 kf:ペレットの熱伝導率 (W/m℃)、 kc:被覆管の熱伝導率 (W/m℃) とし、出力密度分布が一様とすると線出力密度q' (W/m)は次式で与えられる。


q' = \pi R _ f ^ 2 q'''

被覆管の内面温度T2は、被覆管表面温度Twより被覆管の熱伝導率kcを用いて次の式で与えられる。


T _ w - T _ 2 = \frac{q''' R _ f ^ 2}{2 k _ c} \ln \frac{R _ c}{R _ 2}

ペレット表面温度T1は、燃料棒のペレット外表面と被覆管内表面の熱伝達: すなわちギャップコンダクタンスhcを用いて次の式で与えられる。


T _ 1 - T _ 2 = \frac{q''' R _ f ^ 2}{2}\frac{1}{h _ c R _ 2}
= \frac{q'}{2\pi} \frac{1}{h _ c R _ 2}

ギャップコンダクタンスは、ギャプガスの組成や圧力、ペレットと被覆管の接触状態等に依存する。 例えばFPガス放出により、ギャプガスがヘリウムガスから混合ガスに変化するとギャプコンダクタンスは低下する。 ギャプコンダクタンスの評価には、Ross and Stouteの関係式が用いられることが多い。

ペレット中心温度T0は、ペレットの熱伝導率kfのペレット表面温度T1から ペレット中心温度T0までの熱伝導率積分を用いて次の式で与えられる。


\int _ {T _ 1} ^ {T _ 0} k _ f dT = \frac{q''' R _ f ^ 2}{4} = \frac{q'}{4\pi}

ペレットの熱伝導率は、ペレット気孔率、組成、燃焼度等に依存し、燃焼度とともに低下する傾向を示す。

(2) 核燃料の破損については原因が理解されその対策が採られてきている。 最近考えられている高燃焼度化に対してどのような対策が採られているか簡単に説明せよ。

解答例: 高燃焼度化に伴う燃料破損の可能性としては、[PCI破損]、[水側腐食]による破損等が考えられる。 高燃焼度では、[クリープダウン]により、ギャップが[閉じる]とともに、スエリングやボンディングが生じ、 これに被覆管の[水側腐食]と[水素吸収による脆化]が重畳し、PCIが厳しくなる。 このPCI破損を防ぐため、半径方向に[c軸]を集積させた[集合組織調整管]が採用されている。 また、結晶粒界までの距離を[大きく]してFPガス放出を低減させる大粒径ペレットとともに、 粒界に滑りやすい物質を析出させてクリープ特性を向上させる改良ペレットの開発も行われている。 水側腐食については、冷却水温度が高いPWR燃料で腐食破損を起こす可能性があり、 新被覆管材料の開発が行われている。

第5問

核燃料に関連して,次の事項を簡単に説明せよ。

(1) マイナーアクチニド
(2) 酸素ポテンシャル
(3) ウラニルイオンとウラナスイオン
(4) 応力腐食割れ
(5) 焼きしまり

解答例

(1) マイナーアクチニド
周期表原子番号89の[アクチニウム (Ac)] から103の[ローレンシウム (Lr)] までの15の元素をアクチノイド元素と言い、 全て放射性の同位元素である。 このうちの超ウラン元素からPuを除いた[ネプツニウム (Np)]、[アメリシウム (Am)]、[キュリウム (Cm)]、 [バークリウム (Bk)]、[カリホルニウム (Cf)]、[アインスタイニウム (Es)]、[フェルミウム (Fm)]、 [メンデレビウム (Md)]、[ノーベリウム (No)]、 [Lr]の9核種をマイナーアクチノイド (Minor Actinide)と言う。 これらのマイナーアクチノイドは長半減期であり、強い放射能を帯びているため、燃料の再処理や最終処分で問題となる。 (newclears注:マイナーアクチノイドとマイナーアクチニドは区別されない)

(2) 酸素ポテンシャル
燃料の[平衡酸素圧]に対応する酸素1モルあたりの[ギブス自由エネルギー変化]を酸素ポテンシャルと呼び、 燃料の[化学的特性]を表すパラメータである。 燃料の酸素ポテンシャルは燃料の[不定比性]を支配するとともにFPの[化学形]を左右し、 燃料・被覆管反応等の化学反応を支配する。
閉じた系の燃料棒内のガス相の平衡酸素分圧PO2 (atm) と 固相酸化物の酸素の部分モルギブスエネルギー \Delta \bar{G} _ {O _ 2}との間には..


\Delta \bar{G} _ {O _ 2} = R T \ln P _ {O _ 2}

の関係があり、(R:ガス定数、T:絶対温度) 燃料とFPの酸化物の \Delta \bar{G} _ {O _ 2}の大小関係によりFPの化学形が決まる。 すなわち、燃料より高い \Delta \bar{G} _ {O _ 2}を持つFPは金属として析出し、 低い \Delta \bar{G} _ {O _ 2}を持つFPは酸化物として存在する。
UO2の酸素ポテンシャルは、燃焼度とともに貴金属FPが[増加]することから 余剰酸素の増加にともない[増大]すると推定されるが、実測値は、燃焼にあまり依存しない。 これは、余剰の酸素が被覆管と反応するためと推定されている。

(3) ウラニルイオンとウラナスイオン
4価及び6価のウラン化合物は水溶液中でも安定度が高い。 水溶液中では普通6価のイオンは[ラニ]イオン(UO22+)、 4価のイオンは[ウラナス]イオン(U4+)の形となっている。 水溶液中で前者は[]色、後者は[]色(ウグイス色)を示す。 なお、U-235は、U-238より少し[酸化]されやすいため、 6価のウラン中のU-235の比率は、4価のウラン中のU-235の比率よりわずかに大きい。 この性質を利用して、分離を繰り返せば、U-235の濃縮が可能で、これをイオン交換法または、化学法という。

(4) 応力腐食割れ
UO2は熱伝導度が小さいため、高出力運転時にはペレット中心温度が[高く]なる。 その結果、ペレットの熱膨張により径方向ギャップが[減少]し、ペレット-被覆管力学的相互作用 (Pellet-Cladding Mechanical Interaction : PCMI) が生じて、被覆管に応力が発生する。 燃料の燃焼度が10 MWd/kgU程度以上に達した照射環境で、腐食性のFPが蓄積した状態で燃料棒の出力を上昇させると、 強いPCMIが発生する。 その結果、腐食性物質などの作用により被覆管の[脆性割れ]が発生し、燃料棒が破損(PCI破損)する。 この破損機構は、被覆管の[応力腐食割れ] (Stress Corrosion Cracking : SCC) であると考えられており、SCCの腐食性物質としては、FPヨウ素などが有力視されている。 一部には、照射による被覆管の脆化、または、組織変化が原因であるという説もある。 このPCI破損の防止対策として、燃料の改良(燃料棒の[細径化]による線出力の低減、 チャンファあるいはディッシュなどのペレット形状の改良、ジルコニウムライナー付き被覆管の採用など) と[原子炉運転手順]の改良([ならし]運転、Pre-Conditioning Interim Operating Management Recommendation : PCIOMR) などが実施された結果、PCIによる燃料棒破損の問題は実質的には既に解決されている。

(5) 焼きしまり
初期密度95-97%TD(理論密度)程度であるUO2ペレットが、照射初期段階で収縮する現象で、 数千~1万 MWd/tまでの低燃焼度で観察される。 これは、製造時の[気孔]が、照射下の拡散等により収縮及び消滅するのが主な機構である。 焼きしまりが生じると[ギャップ]が大きくなりペレット・被覆管間の熱伝達が変化し燃料温度が上昇する。 燃焼が進むとペレットの[スエリング]が進行して体積を増しギャップは[閉じて]いく。 以前は、焼きしまりが大きいためにPWR燃料のつぶれ破損が生じたことがあるが、 現在は初期密度を高くしてあるためこのような破損は生じていない。

谷内 茂康; 中村 仁一; 天谷 政樹; 中島 邦久; 小室 雄一; 中島 勝昭; 小林 泰彦; 佐藤 忠; 須賀 新一; 野口 宏; 笹本 宣雄; 櫛田 浩平 第36回核燃料取扱主任者試験問題・解答例集,2004年, JAERI-Review 2004-020, https://doi.org/10.11484/jaeri-review-2004-020

第36回 核燃料物質に関する法令

核燃料物質に関する法令

核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」及びその関係法令につき解答せよ。 以下の問において、「原子炉規制法」とは、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」をいう。

第1問

次の問に答えよ。

(1) 核燃料物質の加工の事業に関する規則第7条の5に規定する 加工事業者が採るべき加工設備の操作に関する措置を5つ挙げよ。

解答例
加工規則第7条の5(加工設備の操作)参照。 1号から8号のうち5つ記載する。

(加工設備の操作)
第七条の五 法第二十一条の二第一項の規定により、加工事業者は、次の各号に掲げる加工設備の操作に関する措置を採らなければならない。ただし、法第二十二条の八第二項の認可を受けた場合は、この限りでない。
一 核燃料物質の加工は、[加工設備]で行うこと。
二 核燃料物質の加工は、いかなる場合においても、核燃料物質が[臨界に達するおそれが]ないように行うこと。
三 加工設備の操作に[必要な知識]を有する者に行わせること。
四 加工設備の操作に[必要な構成人員]がそろつているときでなければ操作を行わないこと。
五 操作開始に先立つて[確認すべき事項]、操作に必要な事項及び操作停止後に[確認すべき事項]を定め、これを操作員に守らせること。
六 [非常の場合に採るべき]処置を定め、これを操作員に守らせること。
七 [換気設備、放射線測定器及び非常用設備]は、常にこれらの機能を発揮できる状態に維持しておくこと。
八 加工設備の操作の[訓練]のために操作を行う場合は、[訓練を受ける者]が守るべき事項を定め、操作員の監督の下にこれを守らせること。

(2) 使用済燃料の再処理の事業に関する規則第15条に規定する 再処理事業者が採るべき核燃料物質の貯蔵に関する措置を4つ挙げよ。

解答例
再処理規則第15条(貯蔵)参照。 1号から6号のうち4つ記載する。

(貯蔵)
第十五条 法第四十八条第一項の規定により、再処理事業者は、次の各号に掲げる核燃料物質の貯蔵に関する措置を採らなければならない。
一 核燃料物質の貯蔵は、[貯蔵施設]において行うこと。
二 貯蔵施設の目につきやすい場所に、[貯蔵上の注意事項]を掲示すること。
三 核燃料物質の貯蔵に従事する者以外の者が[貯蔵施設に立ち入る]場合は、その貯蔵に従事する者の指示に従わせること。
四 使用済燃料は、[冷却]について必要な措置を採ること。
五 核燃料物質の貯蔵は、いかなる場合においても、核燃料物質が[臨界に達するおそれが]ないように行うこと。
六 プルトニウム又はその化合物の貯蔵は、プルトニウム又はその化合物が[漏えい]するおそれがない構造の容器に封入して行うこと。ただし、[グローブボックスその他の気密設備の内部]において貯蔵を行う場合その他プルトニウム又はその化合物が[漏えい]するおそれがない場合は、この限りでない。

第2問

次の文章は,原子炉等規制法及びこれに関連する法令に関するものである。 その内容が正しいものには○印を,間違っているものには×印を番号とともに記せ。 また,×印を記したものについては,その理由を記せ。

(1) 「加工」とは,核燃料物質を原子炉に燃料として使用できる形状又は組成とするために, これを物理的又は化学的方法により処理することをいう。

解答例:[
備考:法律第2条(定義)

(2) 「使用済燃料」とは,原子炉に燃料として使用した核燃料物質その他原子核分裂をさせた核燃料物質をいう。

解答例:[
備考:法律第2条(定義)

(3) 「保全区域」とは,再処理施設の保全のために特に管理を必要とする場合であって, 管理区域の内側に設置するものをいう。

解答例:[] 理由:「管理区域の内側」ではなく、「管理区域以外」のものをいう。
備考:再処理規則第1条(定義)

(4) 核燃料取扱主任者は,加工の事業において,特定核燃料物質の防護に関する業務を管理する。

解答例:[] 理由:「加工の事業において特定核燃料物質の防護に関する業務を管理する」のではなく 「加工の事業における核燃料物質の取扱いに関し誠実に職務を遂行しなければならない」
備考:法律第22条の4(核燃料取扱主任者の義務等)、法律第22条の2の2(核燃料取扱主任者)

(5) 使用済燃料貯蔵事業者は,経済産業省令で定める者を使用済燃料取扱主任者として選任し, 使用済燃料の取扱いに関して保安の監督を行わせることができる。

解答例:[
備考:法律第43条の22(使用済核燃料取扱主任者)

(6) 加工事業者に対して,適切な品質保証体制の確立について保安規定への記載と 品質マネージメントシステムの認証取得が義務づけられている。

解答例:[] 理由:加工事業者は、「品質保証、品質保証体制、品質保証の実施に係る組織、保安活動の計画、 保安活動の実施、保安活動の評価、保安活動の改善」に関する加工規則の要求を満たさなければならない、 さらに保安規定に「加工施設の品質保証に関すること」を規定する。 しかし品質マネージメントシステムの認証取得は義務付けられていない。
備考:加工規則第7条の2の2~第7条の2の8(品質保証、品質保証体制、品質保証の実施に係る組織、保安活動の計画、保安活動の実施、保安活動の評価、保安活動の改善)、 及び第8条(保安規定)

(7) 再処理事業者は,再処理施設について10年を超えない期間毎に保安活動の実施状況の評価と 最新の技術的知見の反映状況等を評価するための定期的な評価を行わなければならない。 この定期的な評価の要求項目として確率論的安全評価が挙げられているが, 高経年化対策の検討については任意でよいこととなっている。

解答例:[] 理由:定期的な評価の要求項目として「確率論的安全評価」を特定してはいない。 また、高経年化対策の検討については、事業を開始した日以降20年を経過する日まで、 「経年変化に対する技術的評価を行うこと。」及び「前号の技術的評価に基づき再処理施設の保全のために実施すべき措置に関する十年間の計画を策定すること。」 となっている。
備考:再処理規則16条の2(再処理施設の定期的な評価)

第3問

(1) 次の(ア)~(カ)は,加工施設の設計及び工事の方法の技術基準に関する規則に定められた 火災等による損傷の防止に関するものである。 文章中の空欄にあてはまる適切な語句を番号とともに記せ。

(ア) 加工施設が火災の影響を受けることにより加工施設の安全に著しい支障が生じるおそれがある場合は, 必要に応じて[①消火設備]及び警報設備(警報設備にあっては自動火災報知設備,漏電火災警報器 その他の火災の発生を自動的に検知し,警報を発する設備に限る。) を施設しなければならない。

(イ) 非常用電源設備その他の[②安全上重要な施設]であって,火災により損傷を受けるおそれがあるものについては, 可能な限り[③不燃性]又は[④難燃性]の材料を使用するとともに, 必要に応じて防火壁の設置その他の適切な防火措置を講じなければならない。

(ウ) 水素を取り扱う設備(爆発の危険性がないものを除く。)は,適切に[⑤接地]しなければならない。

(エ) 水素その他の可燃性ガスを取り扱う設備(爆発の危険性がないものを除く。)を設置するグローブボックス及び室は, 当該設備から可燃性ガスが漏えいした場合においてもそれが[⑥滞留]しない構造とすること その他の爆発を防止するための適切な措置を講じなければならない。

(オ) 焼結設備その他の加熱を行う設備(以下「焼結設備等」という。)は, 当該設備の[⑦熱的制限値]を超えて加熱されるおそれがないものでなければならない。

(カ) 水素その他の可燃性ガスを使用する焼結設備等(爆発の危険性がないものを除く。)は, (ウ)から(オ)に定めるところによるほか,次に掲げるところにより施設しなければならない。

  • 焼結設備等の内部において空気の混入により可燃性ガスが[⑧爆発]することを防止するための適切な措置を講じること。
  • 焼結設備等から排出される可燃性ガスを[⑨滞留]することなく安全に[⑩排出]するための適切な措置を講じること。
  • 焼結設備等の内部で可燃性ガスを燃焼させるものは,燃焼が停止した場合に可燃性ガスの供給を自動的に停止する構造とすること。

備考:加工施設の技術基準規則 第4条(火災等による損傷防止)

(2) 次の(キ)~(セ)は,再処理施設の設計及び工事の方法の技術基準に関する規則に関するものである。 文章中の空欄にあてはまる適切な語句を番号とともに記せ。

(キ) 再処理施設は,核燃料物質が臨界に達するおそれがないようにするため, [⑪核的に安全な形状寸法にすること]その他の適切な措置が講じられているものでなければならない。

(ク) 再処理施設は,[⑫臨界警報設備の設置]その他の臨界事故の発生を想定した適切な措置が講じられているものでなければならない。

(ケ) 再処理施設は,これに作用する地震力による損壊により[⑬公衆に放射線障害を及ぼすこと]がないように施設しなければならない。

(コ) 再処理施設は,使用済燃料,使用済燃料から分離された物又はこれらによって汚染された物を [⑭限定された区域]に[⑮閉じ込める]機能を保持するように施設しなければならない。

(サ) 再処理施設を設置する工場又は事業所内の外部放射線による放射線障害を防止する必要がある場所には, 放射線障害を防止するために必要な[⑯しゃへい能力]を有する[⑰しゃへい設備]を施設しなければならない。

(シ) 使用済燃料の受入れ施設及び貯蔵施設は,使用済燃料の[⑱崩壊熱]を安全に除去しうるものとして施設しなければならない。

(ス) 再処理施設には,外部電源系統からの電気の供給が停止した場合において, 再処理施設の安全を確保するために必要な設備の機能を維持するために, [⑲内燃機関を原動力とする発電設備]又はこれと同等以上の機能を有する設備を施設しなければならない。

(セ) 再処理施設の安全を確保するために特に必要な設備には, [⑳無停電電源装置]又はこれと同等以上の機能を有する設備を施設しなければならない。

備考

記号 条文
(キ)(ク) 再処理施設の技術基準第3条(核燃料物質の臨界防止)
(ケ) 同 第5条(耐震性)
(コ) 同 第7条(閉じ込めの機能)
(サ) 同 第8条(しゃへい)
(シ) 同 第13条(使用済み燃料の受け入れ施設及び貯蔵施設)
(セ) 同 第19条(非常用電源設備)

第4問

原子炉等規制法に基づき,核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物(以下,「核燃料物質等」という。) を工場等の外において運搬する場合,次の文章の空欄にあてはまる適切な語句,記号又は数値を番号とともに記せ。 なお,同じ番号には同じ語句,記号又は数値が入る。

【運搬規則一般】

使用者,製錬事業者,加工事業者,原子炉設置者,外国原子力船運航者,使用済燃料貯蔵事業者,再処理事業者 及び廃棄事業者並びにこれらの者から運搬を委託された者(以下「使用者等」という。)は, 核燃料物質等を工場等の外で運搬する場合は,原子炉等規制法に基づき, 主務省令で定める技術上の基準に従って[①保安]のために必要な措置を講じなければならない。 この場合,運搬する核燃料物質等に,政令で定める特定核燃料物質を含む場合は, [①保安]及び特定核燃料物質の[②防護]のために必要な措置を講じなければならない。
核燃料物質等による[③災害の防止]及び特定核燃料物質の[②防護]のため特に必要がある場合として政令で定める場合 (B型輸送物,[④核分裂]輸送物及び[⑤0.1]kg以上の[⑥六ふっ化ウラン]を収納する輸送物を運搬する場合)に該当するときは, 使用者等は,その運搬に関する措置が主務省令の技術上の基準に適合することについて, 主務省令で定めるところにより主務大臣の[⑦確認]を受けなければならない。

備考:法律第59条の2(運搬に関する確認等)、 外運搬規則第11条の2(六ふっ化ウランに係る核燃料物質の技術基準)、 外運搬規則第15条(確認を要する核燃料物質等)、 外運搬細目告示第27条の2(主務大臣の定める六ふっ化ウラン)、 施行令第17条の4(運搬に係る特定核燃料防護のための措置が必要な特定核燃料物質)

【輸送物の区分】

我が国では,核燃料物質等を次に掲げる核燃料物質等の区分に応じ, それぞれに定める種類の核燃料輸送物として運搬することとしている。

(a) 危険性が極めて少ない核燃料物質等として主務大臣の定めるもの(例:劣化ウラン

……L型輸送物

(b) 主務大臣の定める量を超えない量の[⑧放射能]を有する核燃料物質等(上記(a)の核燃料物質等を除く) (例:新燃料集合体,低濃縮ウラン化合物)

……[⑨A]型輸送物

(c) 上記(b)の主務大臣の定める量を超える量の[⑧放射能]を有する核燃料物質等(上記(a)の核燃料物質等を除く) (例:使用済燃料,MOX燃料)

……[⑩BM]型輸送物又は[⑪BU]型輸送物

なお,[⑩BM]型輸送物については,国際輸送において関係する全ての国の承認が必要となる輸送物である。

(d) 上記(a)から(c)にかかわらず,[⑫放射能濃度]の低い核燃料物質等又は核燃料物質等により表面が[⑬汚染]された物であって 危険性が少ないものとして主務大臣の定めるもの(例:天然ウラン化合物)

……[⑭IP]型輸送物

備考:外運搬規則第3条(核燃料輸送物としての核燃料物質等の運搬)

【L型輸送物に係る技術上の基準】

L型輸送物に係る技術上の基準は,次に掲げるものとする。
イ)容易に,かつ,安全に取扱うことができること。
ロ)運搬中に予想される[⑮温度]及び[⑯内圧]の変化,振動等により,き裂,破損等の生じるおそれがないこと。
ハ)表面に不要な突起物がなく,かつ,表面の[⑬汚染]の除去が容易であること。
ニ)材料相互の間及び材料と収納される核燃料物質等との間で危険な物理的作用又は化学反応の生じるおそれがないこと。
ホ)[⑰]が誤って操作されないような措置が講じられていること。
ヘ)開封されたときに見やすい位置に「放射性」又は「Radioactive」の表示を有していること。
ト)表面における[⑱主務大臣の 原子力規制委員会の定める]線量当量率が[⑲マイクロシーベルト毎時]を超えないこと。
チ)表面の放射性物質の密度が主務大臣の定める密度を超えないこと。
リ)[④核分裂]物質が収納されている場合には,外接する直方体の各辺が[⑳十センチメートル]以上であること。

備考:外運搬規則第4条(L型輸送物に係る技術上の基準)

第5問

次の文章は,加工事業者が,加工施設を設置した工場又は事業所で放射性廃棄物を廃棄する場合, 保安のために採らなければならない措置に関するものである。 文章中の空欄にあてはまる適切な語句を番号とともに記せ。 なお,同じ番号には同じ語句が入る。

(1) 気体状の放射性廃棄物の廃棄は,次に掲げるいずれかの方法によることとされている。
a. [①排気]施設によって排出すること。
b. [②放射線障害防止]の効果を持った[③廃気]槽に保管廃棄すること。

(2) 液体状の放射性廃棄物の廃棄は,次に掲げるいずれかの方法によることとされている。
a. [④排水]施設によって排出すること。
b. [②]の効果を持った[⑤廃液]槽に保管廃棄すること。
c. 容器に封入し,又は容器に固型化して[②]の効果を持った[⑥保管廃棄]施設に[⑥]すること。
d. [②]の効果を持った[⑦焼却]設備において[⑦]すること。
e. [②]の効果を持った[⑧固形化]設備で[⑧]すること。

(3) 液体状の放射性廃棄物を[④排水]施設によって排出する場合は, [⑨排水口]において又は[⑩排水監視設備]において, 排水中の放射性物質の[⑪濃度]を監視することにより, [⑫周辺監視区域]の外側の境界における水中の放射性物質の[⑪]が経済産業大臣の定める[⑬濃度限度]を超えないようにすること。

(4) 液体状の放射性廃棄物を容器に封入して保管廃棄するときは, 当該容器に[⑭き裂]若しくは[⑮破損]が生じた場合に 封入された放射性廃棄物の全部を[⑯吸収]できる材料で当該容器を包み, 又は収容できる[⑰受皿]を当該容器に設けること等により,[⑱汚染]の広がりを防止すること。 また,液体状の放射性廃棄物を封入した容器には,[⑲放射性廃棄物]を示す標識を付け, 及び当該放射性廃棄物に関して記録された内容と照合できるような[⑳整理番号]を表示すること。

備考:加工規則第7条の8(工場又は事業所内の廃棄)

谷内 茂康; 中村 仁一; 天谷 政樹; 中島 邦久; 小室 雄一; 中島 勝昭; 小林 泰彦; 佐藤 忠; 須賀 新一; 野口 宏; 笹本 宣雄; 櫛田 浩平 第36回核燃料取扱主任者試験問題・解答例集,2004年, JAERI-Review 2004-020, https://doi.org/10.11484/jaeri-review-2004-020

第35回 核燃料取扱主任者試験 放射線の測定及び放射線障害の防止に関する技術

第35回 核燃料取扱主任者試験 放射線の測定及び放射線障害の防止に関する技術

第1問

次の文章の空欄にあてはまる適切な語句又は数値を番号とともに記せ。 (なお,同じ番号の空欄には同じ語句又は数値が入る。)

(1) 放射線を検出するのに最も簡単な検出器の一つには,中心に細い線を張った[①中心電極]をもつ気体を充満した[②ガス入り計数管]である。 これは[③電離]作用により[②]内を通過する[③]放射線が気体の分子または原子と衝突して, その通路に沿って多数の[④]イオンと[⑤電子]との対を生じる。 このとき[①中心電極]を陽極とし,外壁を陰極にすると[①]には[⑤電子]が集まり,[⑥電流]が流れることになる。 電極に集められる[⑦電荷]は,[①]と管極間の電圧に依存する。 検出器の中で放射線によって作られる[⑧陽イオン-電子対]については電圧が低いと[④]イオンと[⑤電子]は両極に達しないので, この領域を[⑨再結合]領域と呼ぶ。 また,両極の電圧が高いと[⑨再結合]は無視できる量となる。 このとき作られた[⑧陽イオン-電子対]は全て電極に集められるので印加電圧に関係なく[⑩一定値]を示す。

(2) 10 MeVの入射荷電粒子が電離箱の中でエネルギーを完全に失って停止したとすると, 粒子が電離箱内の気体で一つの[⑧陽イオン-電子対]を作るのに要する平均のエネルギーを34 eVとすると, 粒子によって気体中に毎秒約[⑪0.3×106※]個の[⑧]が作られる。 したがって,外部回路に流れる平均電流は[⑫5×10-14](C/s)である。
また電離箱と外部の回路との全静電容量を50 pFとすると外部回路に現れる電圧パルスの大きさは[⑬0.001]Vである。 [④]イオンと[⑤電子]の移動速度は,気体の種類,圧力及び印加する電界強度に関係している。
[③電離]物質として気体のかわりに半導体を使う放射線検出器を半導体検出器という。 この検出器は荷電粒子が半導体の中を通過すると[③電離]作用によって[⑥電流]の運び手となる多数の[⑭伝導体(又は、自由)]電子と[⑮ホール(又は、正孔)]を生成する。

※解説:問題の設定がおかしい。毎秒10 MeVの荷電粒子が入射するとしなければならない。

第2問

放射能測定に関して,次の各文章で下線部の語句が正しく使われていれば○印を,違っている場合は×印を付け適切な語句を番号とともに記せ。

(1) 放射線による化学作用を利用したものにフリッケ線量計及びセリウム線量計があり.主に個人線量計として取り扱われる。

解答例:× 高線量(化学)

(2) 数え落としは計数損失ともいわれ,測定器がもつ不感時間のために計数されずに数え落とされる現象をいう。

解答例:

(3) フェーデング現象はフィルムバッジのほかチェレンコフ検出器にみられる。

解答例:× 熱ルミネッセンス線量計

(4) 光電ピークの低波高側に伸びた部分はコンプトン効果によるものである。

解答例:

(5) 検出器の近傍でガンマ線がしゃへい体などの周囲の物質と光電効果を引き起こすと, しゃへい体の物質特有の制動エックス線が発生する。

解答例:× 特性エックス線

(6) 一定の距離を中性子が飛行する時間を測定し,その速度からエネルギーを決定する方法に飛行時間(TOF)法がある。

解答例:

(7) ガンマ線スペクトルの測定においてエネルギー分解能は, 高純度のGe半導体検出器よりNaI(Tl)シンチレーション検出器のほうが優れている。

解答例:× 劣っている

(8) 放射性核種から放出されるベータ線のほとんどが4~7 MeVのエネルギーの範囲にあり, 空気中の飛程は5 cm程度であるため液体シンチレーション検出器を利用して測定すると100パーセントの計数効率が得られる。

解答例:× アルファ線

(9) カロリーメータ法は10 MBq以上の放射能において物質に吸収された熱量を測定することによって吸収線量の絶対測定が可能である。

解答例:

(10) 同時計数回路は2つの入力端子をもち,これらに同時に入力があった場合は出力信号を出さずに, 一方の端子のみ入力があった場合には出力信号を出す。 主にバックグラウンド計数を低減するために使用される。

解答例:× 逆同時計数回路

第3問

ある実験室で実験者の一人がPu-241から分離して得られたアメリシウムを誤って吸入摂取してしまった。 肺モニタにより胸部計測の結果,肺中にAm-241を100 Bq検出した場合, 吸入摂取日が測定日の1日前として摂取量を求め,計算過程を示して実効線量を求めよ。
ただし,新呼吸気道モデルではアメリシウムは全ての化合物について,その吸入速度はタイプMに属し, アメリシウムの空気力学的放射能中央径(AMAD)は5マイクロメートルとする。
その場合の酸化アメリシウム1 Bqを吸入摂取したときの胸部残留曲線から1日後の胸部残留率を求めた値は0.058とし, 実効線量係数は2.7×10-2 mSv/Bqとする。
また,実験室はアメリシウムによって汚染しているため,汚染の除去として主要な注意事項を5つあげよ。

解答例

吸入摂取量=100 Bq/0.058=1.72×103 Bq
実効線量=1.72×103 Bq×2.7×10-2 mSv/Bq=46 mSv
答 46 mSv

汚染の除去で主要な注意事項
(1) α線は飛程が短いので、α線測定用のサーベイメータまたは表面汚染モニターで検査面との距離(1 cm程度)を離さないように念を入れて測定する。
(2) 汚染場所が分かるように印を付け、標示をする。場合によってはロープ等をはり、立ち入りを制限する。
(3) 汚染除去に際しては、粉末状の場合は、再浮遊をできるだけ少なくするようにする。 拭き取り紙等を水で濡らし、覆うようにして拭き取る。 粉末が飛散して汚染が拡大しないように中心に向かって拭き取る。
(4) 中性洗剤、EDTAなどのキレート剤などを用いて除染する。 除染は、温和な除染剤から、必要に応じて次第に浸漬性の強いものを試みる。
(5) 放射性廃棄物はポリエチレン袋などに密封し、廃棄物の分類に従って容器に納める。

第4問

次の文章中の空欄にあてはまる適切な語句を下欄から選び.番号とともに記号で記せ。 (なお,同じ番号の空欄には同じ語句が入る。)

放射線防護剤とは放射線の生物効果を減少させる化合物である。 放射線防護剤を用いて照射したときと,用いずに照射した時とで同じ生物効果を生じる放射線線量の比を[①線量減少比 (DRF)]という。 防護剤の作用機序は[②フリーラジカル]を除去してその有害作用から細胞を守ることである。 SH化合物であるシステインと[③システアミン]は初期に見出された防護剤であるが,毒性が強いことが問題である。 すなわち放射線防護に必要な量のシステインを摂取すると[④造血臓器 嘔吐※]等の副作用が生じる。 一方,[⑤アミフォスチン (WR2721)]はより有効であり,マウスの[⑥LD50/30M]に対する[①線量減少比 (DRF)]が理論的最高値3に近いことから, [⑦間接作用]に優れた防護効果をもたらすことが示され,放射線治療でも用いられている※。 [⑧グルタミン※]も同じく放射線の[⑨生物学的効果比 (RBE)]を修飾することからX線については放射線防護剤の効果が得られる。 放射線防護剤の効果は,放射線のLETが増大するに連れて[⑩小さく]なる。

(イ)小さく (ロ)グルタミン (ハ)腸死 (ニ)間接作用 (ホ)システアミン (ヘ)嘔吐 (ト)DNA損傷 (チ)消化器官 (リ)フリーラジカル (ヌ)アスコルビン酸 (ル)脱毛 (ヲ)LD50/30M (ワ)塩素 (カ)直接作用 (ヨ)造血臓器 (タ)ミソニダゾール (レ)大きく (ソ)線量減少比 (DRF) (ツ)アミフォスチン (WR2721) (ネ)生物学的効果比 (RBE)

※newclears注
システインが高い放射線防護作用を示すことが発見されたが,吐き気や嘔吐などの有害作用が明らかとなった.」
「アミフォスチンは低血圧を引き起こすため投与量が制限されることとなり,広く放射線防護薬として臨床で使われるには至っていない.」
システアミンもよく知られた放射線防護薬である。 参考文献
L-アスコルビン酸(ビタミンC)は,薬剤自体は抗酸化能力をもつが,マウスの生体内において放射線防護効果は見られなかった (むしろ腫瘍組織においては放射線増強効果として作用した)。 参考文献
放射線増感剤は,低酸素状態にある癌細胞にも放射線が有効に働くことをねらったもので,ミソニダゾールが試みられている。 参考文献
グルタミンについては適当な文献が見つからない。

第5問

次の事項について簡単に説明せよ。

(1) チェックポイント制御
(2) アポトーシス
(3) 染色体異常
(4) 線量・線量率効果
(5) 逆線量率効果

解答例 (1) チェックポイント制御
細胞はG1→S→G2→M→G1の細胞周期を繰り返して増殖するが、この順序は厳密に守られている。 細胞周期におけるチェックポイント制御は、このイベントが順序どおり正しく行われることを保証する監視機構の働きをいう。 例えば、ある種の酵母において、X線を照射するとG2期からM期に入る際のチェックポイント制御が働いて、 細胞周期の進行が止まり、時間かせぎをしているうちにX線で損傷したDNAが修復され、そこでまた細胞周期が再開する。 この酵母のある変異種では、この機構を欠いたものがあり、M期に進行して異常分裂し、 低線量のX線でも死んでしまったという発見からこの機構が定義された。

(2) アポトーシス
損傷を受けた細胞が積極的に自己を排除するために起きる細胞の死をいう。

(3) 染色体異常
染色体の数や構造に変化が見られることをいう。発育不良や奇形の原因ともなる。

(4) 線量・線量率効果
線量あるいは線量率が変化すると放射線の生物学的効果が異なることをいう。
解説:低線量・低線量率の放射線リスク推定は、高線量・高線量率の実存データからの直線外挿より低い値になる。 ICRP Publication 60では、低LET放射線被ばくのとき、0.2 Gy以下か、それ以上では0.1 Gy/h以下の線量率の場合に限り、 線量・線量率効果係数2を勧告し、直線外挿リスクに比べこの係数だけリスクを低く見積っている。

(5) 逆線量率効果
高LET放射線(とくに核分裂中性子)は低線量率あるいは分割によって初から有効性が増大することがある。 このような場合、高線量率よりも低線量率で最初の勾配がもっと急である。 これは、逆線量率効果と呼ばれる。
解説:放射線防護の上から注目すべきRBEの最大値RBEMは、 低線量率・高LET反応の最も急な勾配と低線量率・低LET反応の最も緩い勾配の比で与えられる。 (参考図、ICRP Publication 60 附属書B、B64項より)

f:id:newclears:20191128225953p:plain 高LET放射線に対する生物学的効果比(RBE)を求めるときの概念図

出典

谷内 茂康; 佐藤 忠; 須賀 新一; 小室 雄一; 内田 正明; 中島 邦久; 中村 仁一; 雨澤 博男; 大村 英昭; 湊 和生; 武田 常夫; 櫛田 浩平; 傍島 眞 核燃料取扱主任者試験問題・解答例集,1999~2003年, JAERI-Review 2003-025,https://doi.org/10.11484/jaeri-review-2003-025

第34回 核燃料取扱主任者試験 核燃料物質に関する法令

第34回 核燃料取扱主任者試験 核燃料物質に関する法令

※転載元の解答例集に誤り,あるいは法改正による変更箇所が(他と比べて)多く含まれているように思われます。 newclearsが気付いた箇所は修正しながら転載しましたが、誤りが残っている/さらなる誤りを起こした恐れもあるので、ご注意ください。

第1問

原子力基本法」,「核原料物質.核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」 (以下.本問において「原子炉等規制法」という。) 及びその関係法令に関する次の問に答えよ。

(1) 次の記述中,空欄の部分に入れるべき適当な語句又は数値を番号とともに記せ。 なお,同じ番号の空欄には同じ語句又は数値が入る。

  • 原子力基本法においては,原子力の研究,開発及び利用の基本方針は,[①平和の目的]に限り, [②安全の確保]を旨として,民主的な運営の下に,自主的にこれを行うものとし,その成果を公開し, 進んで国際協力に資するものとすることが定められている。 (基本法第2条)

  • 原子炉等規制法の目的は,原子力基本法の精神にのつとり,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の利用が[①平和の目的]に限られ, かつ,これらの利用が計画的に行われることを確保するとともに,これらによる[③災害を防止]し,及び核燃料物質を防護して, [④公共の安全]を図るために,精錬,加工,再処理及び廃棄の事業並びに原子炉の設置及び運転等に関する必要な規制等を行うことなどである。 (法律第1条)

  • 核燃料物質の加工の事業に関する規則において,「[⑤放射線業務従事者]」とは,核燃料物質の加工,加工施設の保全, 核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物(「核燃料物質等」)の運搬,貯蔵又は廃棄等の業務に従事する者であって, 管理区域に立ち入るものをいう。 (加工規則第1条)

  • [⑤放射線業務従事者]の線量限度は,実効線量について,平成13年4月1日以降[⑥5年]年ごとに区分した各期間につき[⑦100]ミリシーベルト, 1年間につき50ミリシーベルトである。 また,等価線量は,眼の水晶体については1年間につき150ミリシーベルト,皮膚については1年間につき500ミリシーベルトである。 (線量告示第6条)

  • 緊急作業に係る[⑤放射線業務従事者]の線量限度は,実効線量について[⑧100]ミリシーベルトである。 (線量告示第8条)

(2) 次の文章は,原子炉等規制法及びその関連法令に関するものである。 その内容が正しいものには○印を,誤っているものには×印を,番号とともに記せ。 また,誤っているものについては,その理由を付すか,誤りを訂正せよ。

(newclears注:文章中、核燃料物資という単語が複数回登場するが、正しくは核燃料物質ではなかろうか。 物質と物資が混同されるケースがインターネット上では跋扈しているようである)

① 加工事業者,使用済燃料貯蔵事業者,再処理事業者及び廃棄物管理事業者は, 政令で定める施設の性能について,経済産業大臣が定期に行う検査を受けなければならない。 この検査は,加工施設及び再処理施設にあっては毎年2回,使用済燃料貯蔵施設及び特定廃棄物管理施設にあっては1年ごとに行われる。

解答例:× 訂正:毎年2回→毎年1回

法律第16条の5、 法律第13条の11、 法律第46条の2の2、 法律第51条の10

② 加工事業者,使用済燃料貯蔵事業者,再処理事業者,廃棄物埋設事業者及び廃棄物管理事業者は, 経済産業省令で定めるところにより,事業の実施に関し経済産業省令で定める事項を記録し, これをその工場又は事業所(使用済燃料貯蔵事業者又は廃棄事業者にあっては事業所)に備えて置かなければならないこととなっている。 その記録に当たっては,各記録事項とも当該事項を間接的に推定することができる記録でもよいこととなっている。

解答例:○

法律第21条、 法律第43条の17、 法律第47条、 法律第51条の15

③ 加工事業者,使用済燃料貯蔵事業者,再処理事業者及び廃棄事業者並びにその従業者は,保安規定を守らなければならない。 また,これら事業者は,保安規定の遵守状況を自ら定期的(年4回)に検査し,その結果を経済産業大臣に報告しなければならない。

解答例:× 訂正:保安規定の遵守状況を~報告しなければならない。→ 保安規定の遵守状況の検査を毎年4回受けなければならない。

法律第22条、 法律第43条の20、 法律第50条、 法律第51条の18

④ 原子炉等規制法第63条の規定により,製錬事業者,加工事業者,原子炉設置者,外国原子力船運航者,使用済燃料貯蔵事業者, 再処理事業者,廃棄事業者及び使用者(第66条第1項に規定する者を含む。)並びにこれらの者から運搬を委託された者及び受託貯蔵者は, その所持する核燃料物資について盗取,所在不明その他の事故が生じたときは,遅滞なく,その旨を警察官又は海上保安官に届け出なければならない。

解答例:○

法律第63条

⑤ 製錬事業者,加工事業者,原子炉設置者,使用済燃料貯蔵事業者,再処理事業者, 廃棄事業者又は使用者がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反する事実がある場合においては, これらの者の従業者は,その事実を原子力安全委員会に申告することができるが, 事業者は,申告をしたことを理由として,その従業者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならず, これに違反した場合には,罰則が課せられる。

解答例:× 訂正:原子力安全委員会→主務大臣

法律第66条の2

⑥ 加工事業者は,加工施設において,核燃料物資が臨界に達し,又は達するおそれがあるときや 放射線業務従事者について線量限度を超え,又は超えるおそれのある被ばくがあったときには, その旨を直ちに,その状況及びそれに対する処置を10日以内に経済産業大臣に報告しなければならないが, その他の加工施設の故障(加工に及ぼす軽微なものを除く。)があったときは,30日以内に報告すればよい。

解答例:× 訂正:30日以内に報告すればよい。→ (同様に)その旨を直ちに,その状況及びそれに対する処置を10日以内に経済産業大臣に報告しなければならない。

第2問

原子炉等規制法に基づく加工事業及び再処理事業の規制に関して,以下の(1)から(3)の小問のうち二つを選択して答えよ。

(1) 臨界管理上のすべての単一ユニットについて形状管理を行うとして設計されている加工施設(施設Aと称する。)と, 一部の単一ユニットについて濃度管理または質量管理を行う(それ以外の単一ユニットについては,形状管理を行う。)として設計されている加工施設(施設Bと称する。)がある。 それぞれの施設に係る設計及び工事方法の認可申請書及び保安規定を作成する際に,単一ユニットの臨界管理に関してどのような記載を盛り込むべきと考えるか。 簡潔に述べよ。

解答例

施設A: 単一ユニットの[形状と寸法]に対して、[核的に安全]な制限値を設定する。 この制限値の維持・管理については、起こるとは考えられない独立した[2つ]以上の異常が同時に起こらない限り臨界に達しないものとする。

施設B: 形状管理を行う単一ユニットに対しては施設Aと同じ。 濃度管理または質量管理を行う単一ユニットに対しては、燃料の濃度または質量に対して[核的に安全]な制限値を設定する。 この場合、誤操作等を考慮してもユニット内の燃料の濃度または質量が制限値を超えないような、十分な対応策を講じる。 制限値の維持・管理については、起こるとは考えられない独立した[2つ]以上の異常が同時に起こらない限り臨界に達しないものとする。

解説: 一般のウラン加工施設を想定した問題と解釈して、ウラン加工施設安全審査指針の指針10.を参照した。 よって、上記が満足されるならば、臨界事故に対する記述は必要ない。 しかし、ウラン濃縮度が[5%]を超える加工施設及びウラン・プルトニウム混合酸化物加工施設では、万一の臨界事故を想定し、これに対する適切な対策を講じる必要がある。

(2) 加工施設の使用前検査に関して次の問に答えよ。

イ.使用前検査について,「認可を受けた設計及び方法」及び「経済産業省令で定める技術上の基準」を必ず用いて,説明せよ。

解答例

設工認(設計及び工事の方法の認可)の認可のあと工事を行う。 使用前検査の申請を行い、施設の完成後の使用前検査を受け、その工事が認可を受けた設工認の方法に従って行われていること、 またその性能が技術上の基準に適合するものであれば、使用前検査合格の後、施設の使用が可能となる。

(newclearsによる解答例(2019年10月): 加工事業者は、加工施設の[工事及び性能]について原子力規制委員会の[検査]を受け、[これに合格した]後でなければ、加工施設を使用してはならない。 検査においては、その[工事]が 認可を受けた設計及び方法 に従って行われていること、及び、 その[性能]が 経済産業省令で 原子力規制委員会規則で定める技術上の基準 に適合するものであること、に適合しているときに合格とする。 )

備考: 法第16条の2(設計及び工事の方法の認可)、 法第16条の3(使用前検査)、 加工規則第3条の5(使用前検査の申請)、 加工規則第3条の6(使用前検査の実施)、 加工規則第3条の6の2(性能の技術上の基準)

ロ.経済産業省令で定める技術上の基準のうち,3つを記せ。

解答例

加工規則第3条6の2(性能の技術上の基準)参照(1号から5号のうち、3つ記載する)

(newclears注:下記は平成17年12月28日経済産業省令第125号時点のもの。2019年10月現在、3条6の2は削除されている)

(性能の技術上の基準)
第三条の六の二 法第十六条の三第二項第二号の経済産業省令で定める技術上の基準は、次の各号に掲げるとおりとする。
 一 申請書等及びその添付書類に記載した[警報装置]、[非常用動力装置]その他の非常用装置、[安全保護回路]及び[連動装置](一定の条件が充足されなければ機器を作動させない装置をいう。)が、申請書等及びその添付書類に記載した条件において確実に作動すること。
 二 放射性廃棄物の廃棄施設の[処理能力]が、申請書等及びその添付書類に記載した能力以上であること。
 三 [主要]な放射線管理施設の性能が、申請書等及びその添付書類に記載した性能を満足するものであること。
 四 加工施設中人が常時立ち入る場所、加工施設の使用中特に人が立ち入る場所その他放射線管理を特に必要とする場所における[線量当量率及び空気中の放射性物質の濃度]が、申請書等及びその添付書類に記載した値以下であること。
 五 核燃料物質が[臨界に達すること]を防ぐ能力及び核燃料物質等を[限定された区域に閉じ込める]能力が、申請書等及びその添付書類に記載した能力を満足するものであること。

(3) 以下は,加工施設を設置した工場または事業所において,液体状の放射性廃棄物を排水施設によって排出する方法で廃棄する場合についての, 核燃料物質の加工の事業に関する規則の規定の抜粋である。

<核燃料物質の加工の事業に関する規則の規定(抜粋)>

排水口において又は排水監視設備において排水中の放射性物質の[①濃度]を監視することにより, [②周辺監視区域の外側の境界における水中の放射性物質の濃度]が経済産業大臣の定める[③濃度]限度を超えないようにすること。

次の問に答えよ。

イ.空欄を埋めよ。

ロ.加工施設に起因する外部放射線に被ばくするおそれがあり,かつ, 水中の一種類だけの放射性物質を経口摂取するおそれがある場合についての二重下線部の限度について説明せよ。 (空気中の放射性物質の吸入摂取は無視するものとする。)

線量当量告示第9条(周辺監視区域外の濃度限度等)第1項
放射性物質の種類が明らかでかつ1種類である場合にあっては、別表第1の第1欄に掲げる放射性物質の種類に応じて、 空気中の濃度については第5欄、水中の濃度については第6欄に掲げる濃度」を超えないようにすること。

第3問

次の文章は,原子炉等規制法に基づく加工事業及び再処理事業の規制に関する記述である。 その内容が正しいものには○印を,誤っているものには×印を,番号とともに記せ。 また,誤っているものについては,その理由を付すか,誤りを訂正せよ。 なお,記述中,単に「事業者」とあるものは加工事業者及び再処理事業者を,「施設」とあるものは加工施設または再処理施設を意味する。

(1) 加工事業の許可の基準は,
一 その許可をすることによって原子力の開発及び利用の計画的な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと。
二 その事業を適確に遂行するに足りる技術的能力及び経理的基礎があること。
三 加工施設の位置,構造及び設備が核燃料物質による災害の防止上支障がないものであること。
である。

解答例:× 訂正:原子力~に支障を及ぼすおそれがないこと。 →加工の能力が著しく過大にならないこと。 (法律第14条)

(2) 施設を解体しようとするとき,再処理事業者は原子炉等規制法に基づき経済産業大臣に届出を行わなければならないが, 加工事業者には,解体の届出は義務付けられていない。

解答例:× 訂正:が,加工事業者には,~義務付けられていない。 →が,加工事業者も同様に届け出なければならない。 (法律第50条の2、法律第22条の2)

(3) 事業者は,施設定期自主検査を年1回行えばよい。

解答例:× 訂正:年1回行えばよい。 →(加工規則第7条の4の2参照...newclears注:適切な訂正例が分からない。 定期検査の頻度を問うているのだとしたら、年1回=1年ごと、と解釈すれば正しい。 その解釈が不適切なのか、あるいは1つの「施設定期自主検査」ではなく複数の検査内容を実施しなければならないから誤りなのか?)

使用済燃料の再処理の事業に関する規則第12条
(再処理施設の施設定期自主検査)
第十二条 法第四十八条第一項の規定により、再処理事業者は、次の各号(法第五十条の五第二項の認可を受けた場合は第一号を除く。)に掲げる検査に関する措置を採らなければならない。
一 令第二十八条に規定する再処理施設(次号に規定するものを除く。)は、当該施設の性能が法第四十六条の二の二に規定する原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合しているかどうかについての検査を一年ごとに行うこと。
二 警報装置、非常用動力装置その他の非常用装置については、当該装置の各部分ごとの当該作動のための性能検査を一月ごとに、当該装置全体の当該作動のための総合検査を一年ごとに行うこと。
三 再処理施設の保安のために直接関連を有する計器及び放射線測定器については、校正を一年ごとに行うこと。
2 法第五十条の五第二項の認可を受けた再処理事業者は、第十九条の五第一項第五号の性能維持施設の性能が維持されているかどうかについての検査を第七条の十の二の規定により定める施設定期検査を受けるべき時期ごとに行わなければならない。

核燃料物質の加工の事業に関する規則第7条4の2
(加工施設の施設定期自主検査)
第七条の四の二 法第二十一条の二第一項の規定により、加工事業者は、次の各号(法第二十二条の八第二項の認可を受けた場合は第一号を除く。)に掲げる検査に関する措置を採らなければならない。
一 令第九条に規定する加工施設(次号に規定するものを除く。)は、当該施設の性能が法第十六条の四の二に規定する原子力規制委員会規則で定める技術上の基準に適合しているかどうかについての検査を一年ごとに行うこと。
二 警報装置、非常用動力装置その他の非常用装置については、当該装置の各部分ごとの当該作動のための性能検査を一月ごとに、当該装置全体の当該作動のための総合検査を一年ごとに行うこと。
三 加工施設の保安のために直接関連を有する計器及び放射線測定器については、較正を一年ごとに行うこと。
2 法第二十二条の八第二項の認可を受けた加工事業者は、当該認可若しくは同条第三項において準用する法第十二条の六第三項の変更の認可に係る申請書又はそれらの添付書類に記載された加工施設の性能が維持されているかどうかについての検査を一年ごとに行わなければならない。

(4) 事業者は,設備の操作の訓練のために操作を行う場合には,訓練を受ける者が守るべき事項を定め, 核燃料取扱主任者の監督の下にこれを守らせねばならない。

解答例:× 訂正:事業者は,設備の操作の訓練のために操作を行う場合には,事業者及びその従業者は保安規定に基づき行わなければならない。 核燃料取扱主任者は、核燃料物質の取扱に関して保安の監督を行う。 (法律第22条、法律第51条の18)

(5) 加工事業者は,毎週1回以上,また,再処理事業者は,毎日1回以上,従事者に施設について,巡視及び点検を行わせなければならない。

解答例:×

訂正:加工事業者は,毎週1回以上,また,再処理事業者は,毎日1回以上, →加工事業者及び再処理事業者は、毎日1回以上,

訂正:従事者→従業者

(加工規則第7条の4、再処理規則第11条)

(6) 1,000 kgを超える濃縮度5%のウランを取り扱うウラン加工施設を設置する加工事業者は, 防護区域を定め,さらにその周辺に周辺防護区域を定めなければならない。

解答例:× 訂正:防護区域を定め~周辺防護区域を定めなければならない。 →防護区域を定めなければならない。 (法律第21条の2、法律施行令第4条3、加工規則7条の9)

(7) 全ての加工施設は,臨界警報設備の設置その他臨界事故の発生を想定した適切な措置が講じられていなければならない。

解答例:× 訂正:全ての加工施設は、 →臨界質量以上のウラン又はプルトニウムを取り扱う加工施設は、 (加工総理府令第3条)

(8) 再処理施設の安全上重要な施設については多重性が求められているが,加工施設の安全上重要な施設については多重性が求められていない。

解答例:○ (加工総理府令第11条、再処理総理府令第11条)

(9) 施設において,プルトニウム及びその化合物並びにこれらの物質の一又は二以上を含む物質を取り扱うグローブボックスは, その内部を常時負圧状態に維持しうるものでなければならない。

解答例:× 訂正:~ならない。 →~ならない。かつ、給気口及び排気口を除き密閉することができる構造であることでなければならない。 (加工総理府令第7条、再処理総理府令第7条)

(10) 施設において,プルトニウム及びその化合物並びにこれらの物質の一又は二以上を含む物質を取り扱う室(保管廃棄する室を除く。)は, その内部を負圧状態に維持しうるものでなければならない。

解答例:○ (加工総理府令第7条、再処理総理府令第7条)

第4問

次の文章は,核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律及びその関連する法令において定められている核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物の廃棄に関するものである。 文章中の空欄の部分に入る適切な語句を番号とともに記せ。

(1) 加工事業者は,核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物で廃棄しようとするもの (以下本問で「放射性廃棄物」という。)(輸入されたものを除く。)を加工施設を設置した工場又は事業所の外で廃棄する場合には, [①保安]のために必要な措置を講じなければならない。当該措置には以下の措置が含まれる。

  • a 放射性廃棄物は,[②放射線障害防止]の効果を持った廃棄施設に廃棄すること。
  • b 当該廃棄施設を設置した者に,当該放射性廃棄物に関する[③記録の写し]を交付すること。
  • c 廃棄に従事する者の[④線量当量]が経済産業大臣の定める[⑤線量当量限度]を超えないようにすること。

(2) 放射性廃棄物を輸入した加工事業者は,当該放射性廃棄物を加工施設を設置した工場又は事業所の外で廃棄する場合には, 以下に揚げる[⑥保安]のために必要な措置を講じて[⑦廃棄物管理設備]に廃棄しなければならない。

  • a 輸入した放射性廃棄物は,放射線障害防止のため[⑧容器]に[⑨封入し、又は容器に固型化]した物であること, 放射性物質が容易に[⑩飛散]し,及び[⑪漏えい]しないものであること, 著しい[⑫破損]がないこと,等の基準に適合するものとすること。

  • b 輸入した放射性廃棄物を[⑬廃棄物管理設備]に廃棄する場合には,当該放射性廃棄物に関し[⑭封入又は固型化]の方法, 放射性物質の種類ごとの[⑮放射能濃度]などの事項を記載した書類を作成し, [⑯当該廃棄物管理設備]を設置した[⑰廃棄物管理事業者]に交付すること。

  • c 輸入した放射性廃棄物には,b. の書類に記載された事項と照合できるような[⑱整理番号]を表示すること。

(3) 放射性廃棄物を輸入した加工事業者は,当該放射性廃棄物を加工施設を設置した工場又は事業所の外で廃棄する措置が経済産業省令の規定に適合することについて, 当該放射性廃棄物を[⑲廃棄物管理設備]に廃棄する前に,経済産業大臣の[⑳確認]を受けなければならない。

備考: 法律第11条の2、 外廃棄規則第2条、 法律第58条の2、 外廃棄規則第2条、第4条

第5問

「核原料物質,核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(以下,「原子炉等規制法」という。)」に基づき, 核燃料物質又は核燃料物質によって汚染された物(以下,「核燃料物質等」という。)を工場等の外において運搬する場合, 次の文章の空欄の部分に入る適切な語句又は数値(必要に応じて単位を付すこと。)を番号とともに記せ。 なお.同じ番号の空欄には同じ語句又は数値が入る。

【輸送規則一般/届出】

(1) 使用者,製錬事業者,加工事業者,原子炉設置者,外国原子力船運航者,再処理事業者及び廃棄事業者並びにこれらの者から運搬を委託された者(「使用者等」という。)は, 核燃料物質等を工場等の外で運搬する場合は,原子炉等規制法に基づき,経済産業省令等で定める技術上の基準に従って[①保安]のために必要な措置を講じなければならない。 この場合,運搬する核燃料物質に,政令で定める[②特定核燃料物質]を含む場合は,[①保安]及び[②特定核燃料物質]の[③防護]のために必要な措置を講じなければならない。
使用者等は,[②特定核燃料物質]等を運搬する場合,当該運搬の経路のある区域を管轄する[④都道府県公安委員会]に届け出て,届出を証明する文書(運搬証明書)の交付を受けなければならない。 (法律第59条の2)

【輸送物の区分】

(2) 我が国では,[⑤放射能],[⑥放射能],線量当量率を基準として,核燃料物質等を以下の4つの輸送物に区分している。 更に,臨界安全性の確保が必要な輸送物は,[⑦C型輸送物]と区分されている。

a [⑥放射能],線量当量率が極めて小さい核燃料物質等(例:劣化ウラン [⑩L型輸送物
b [⑥放射能]が主務大臣の定める値以下で,輸送物の表面及び表面から1 mの点での線量当量率が各々[⑧ 20 μSv 2 mSv/h],[⑨100 μSv/h]以下のもの(例:新燃料) [⑪A型輸送物
c [⑥放射能量]が主務大臣の定める値を超え,輸送物の表面及び表面から1 mの点での線量当量率が各々[⑧ 20 μSv 2 mSv/h],[⑨100 μSv/h]以下のもの(例:使用済燃料) B型輸送物
d [⑤放射能]の極めて低いもの又は表面のみ汚染している物質(例:天然ウラン,低レベル放射性廃棄物 [⑫IP型輸送物

なお,B型輸送物のうち,[⑬BM型]は国際輸送において関係する全ての国の承認が必要となる輸送物である。 (外運搬規則3条~10条)

【輸送物の試験】

(3) 収納される[⑥放射能量]が多いB型輸送物及び臨界安全性の確保が必要な[⑦C型輸送物]については, 国際原子力機関(IAEA)輸送規則に基づき,過酷な事故を想定した落下試験(9 m,非降伏面), [⑭耐火試験](800℃,30分),[⑮浸漬試験](深さ15 m,8時間)等の特別の試験条件が課されている。

【主務大臣の承認等】

(4) B型輸送物,[⑦C型輸送物]及び0.1 kg以上の[⑯六フッ化ウラン]を収納する輸送物を運搬する場合は, 使用者等は,核燃料輸送物が技術上の基準に適合することについて主務大臣の[⑰確認]を受けなければならない。 また,使用者等は,運搬に使用する容器について,あらかじめ,主務省令で定めるところにより,主務大臣の承認を受けることができる。 この場合において,主務大臣の承認を受けた容器([⑱承認容器])については,技術上の基準のうち容器に関する基準は満たされたものとする。 (法律第59条の2)

【輸送時の放射線被ばく及び臨界安全性の管理】

(5) 1985年版IAEA輸送規則においては,輸送物等(オーバーパック,貨物コンテナ,非梱包のLSA-1,SCO-1を含む)について, 臨界安全性及び輸送中の放射線被ばくの両方を管理する指数として[⑲輸送指数]が用いられていたが, 1996年版IAEA輸送規則においては,核分裂性物質を含む輸送物等の集積の臨界安全性を管理するために臨界安全指数(CSI)が新たに定義され, 放射線被ばくの管理に用いられる指数は,従来の呼称である[⑲輸送指数]として再定義されている。

(a) 臨界安全指数(CSI)は,臨界安全評価で決定される輸送制限個数で50を除した値と規定される。

(b) [⑲輸送指数]は,輸送物の表面から1 mでの線量当量率をmSv/h単位で表記した値の最大値を[⑳100]倍した値と規定されている。
臨界安全の管理からCSI≦50,放射線被ばく管理からTI≦10の限度が設けられているが, 専用積載の場合は追加的な運用管理によりこれらを超えることができるとしている。 (放射線安全輸送規則)

出典

谷内 茂康; 佐藤 忠; 須賀 新一; 小室 雄一; 内田 正明; 中島 邦久; 中村 仁一; 雨澤 博男; 大村 英昭; 湊 和生; 武田 常夫; 櫛田 浩平; 傍島 眞 核燃料取扱主任者試験問題・解答例集,1999~2003年, JAERI-Review 2003-025,https://doi.org/10.11484/jaeri-review-2003-025