第35回 核燃料取扱主任者試験 核燃料物質の取扱いに関する技術

第35回 核燃料取扱主任者試験 核燃料物質の取扱いに関する技術

第1問

核燃料施設における核燃料物質の取扱いに関し,以下の問に答えよ。

(1) 次の文章の空欄にあてはまる適切な語句を番号とともに記せ。

「核燃料施設における単一ユニットは,技術的にみて想定されるいかなる場合でも, 単一ユニットの形状寸法,質量,[①容積],[②溶液濃度]の制限及び[③中性子吸収材の使用]等並びにこれらの組み合わせによって核的に制限することにより 臨界を防止する対策が講じられていることが要求されている。

核燃料施設における複数ユニットの配列については,技術的にみて想定されるいかなる場合でも, [④ユニット相互間における間隔の維持],[⑤ユニット相互間における中性子遮蔽材の使用]等により臨界を防止する対策が講じられていることが要求されている。」

解説:「ウラン加工施設安全審査指針」の指針10及び指針11からの出題である。

(2) 質量管理を行っている単一ユニット間の核燃料物質の移動に関して,臨界防止のために講ずべき措置について説明せよ。

解答例
[1] 誤搬送の防止:信頼性の高いインターロック、ダブルチェック、収納した容器の識別番号の管理、搬送経路の限定。
[2] 在庫量、異動量の確認:秤量値の信頼性確保、秤量器定期的校正、秤量データのクロスチェック。
[3] 核的制限値の設定条件を満足することの確認:臨界管理条件の確認(減速条件の異なるユニット間の移動の場合)。
[4] 移動時の相互干渉の防止:バードケージの使用。
上記4項目が必要、他に、二重装荷の防止(安全係数との関係)や臨界管理チェックフローを記述しても可。

(3) ウラン加工施設の耐震重要度分類について,次の文章の空欄にあてはまる適切な語句を番号とともに記せ。(なお,同じ番号の空欄には同じ語句が入る。)

「第1類の設備・機器とは,[①非密封ウラン]を取り扱う設備・機器及び[①非密封ウラン]を[②閉じ込める]ための設備・機器 並びに[③臨界安全上の核的制限値]を有する設備・機器及び[③臨界安全上の核的制限値]を維持するための設備・機器であって,その機能を失うことによる影響,効果の大きいもの。

第2類の設備・機器とは[①非密封ウラン]を取り扱う設備・機器及び[①非密封ウラン]を[②閉じ込める]ための設備・機器 並びに[③臨界安全上の核的制限値]を有する設備・機器及び[③臨界安全上の核的制限値]を維持するための設備・機器であって,その機能を失うことによる,影響,効果の小さいもの 及び[④化学的制限値]又は[⑤熱的制限値]を有する設備・機器。」

参考文献:「ウラン加工施設安全審査指針」の指針13

(4) ウラン加工施設において,停電等の外部電源系の機能喪失時にも,十分な容量及び信頼性のある非常用電源系を有することにより, 作動できるようにする必要のある設備を挙げよ。

解答例
1. 第1種管理区域の排気設備、
2. 放射線監視設備、
3. 火災、臨界等の警報設備、緊急通信・連絡設備、非常用照明灯等、安全上必要な設備・機器。
参考文献:「ウラン加工施設安全審査指針」の指針16

(5) MOX燃料製造では,ウラン燃料と異なり,プルトニウム及びその娘核種に起因する発熱の燃料製造への影響を考慮する必要がある。
① 発熱源として支配的なプルトニウム同位体を1つ挙げよ。

解答例、 Pu-238。

MOX粉末を空気雰囲気中で取扱いや保管をする場合,発熱によるMOX燃料製造への影響について説明し, 併せて発熱の影響を軽減するための対応策について説明せよ。

解答例、
MOX粉末は熱伝導率が低いため多量のMOX粉末を扱う場合には、保管容器中で局所的な温度上昇をもたらし、空気に曝されている原料粉末は酸化する。 したがって、同一ロットの粉末組成の均一性に問題が生じ、計量データの信頼性に影響する恐れがある。 また、局所的な温度上昇は、ポアフォーマの溶融や分解、バインダー、潤滑剤の分解といったことが起こり、 成型不良や焼結密度においてばらつきが生じ、ペレットの均一性に影響する。
対応策としては、放熱性能の良い保管容器(材質、構造)の採用や貯蔵設備の冷却能力の強化、あるいは取扱量を制限して局所的な温度上昇を抑える。 また、耐熱性のある添加剤を使用することでペレットの均一性を改善する。

第2問

核燃料加工施設における閉じ込め及びしゃへいに関して,以下の問に答えよ。

(1) ウラン加工施設の管理区域は,第1種管理区域と第2種管理区域に区分されるが, 第1種管理区域について説明し,併せて当該区域に対して周辺環境の汚染防止のために講ずべき措置について説明せよ。

解答例

ウラン加工施設の管理区域は、ウランを密封して取扱い又は、貯蔵し、汚染の発生するおそれのない区域(第2種管理区域)と そうでない区域(第1種管理区域)とに区分して管理されている。 したがって、第1種管理区域では空気または物の表面がウランで汚染する恐れがある。
周辺環境への汚染防止には、第1種管理区域は漏洩の少ない構造とするとともに、 当該区域の外から当該区域に向かって空気が流れるように給排気のバランスをとる。 また、汚染の恐れのある空気を排気する系統には、周辺環境の汚染を合理的に達成できる限り少なくするため、 高性能エアフィルタ等適切なウラン除去設備を設けること。 事故時においてウランの飛散のおそれのある部屋は漏洩の少ない構造であること。

参考文献:「ウラン加工施設安全審査指針」の指針4

(2) ウラン加工施設における六フッ化ウランの取扱いに関して,六フッ化ウランを収納したシリンダーから工程へ供給する際の環境への漏洩防止, 及び作業者の安全上注意すべき点について,六フッ化ウランの物理的,化学的性質と併せて説明せよ。

解答例

UF6は、常温・常圧下では無色透明の固体であるが、低圧にしたり温度を高めると容易に気化し、高温・高圧化では液体となる。 UF6は、三重点(64℃、1138 mmHg)以上の温度と圧力下で液化し、UF6シリンダーに充填されてウラン濃縮工場に出荷される。
UF6シリンダーなどの容器に充填されたUF6を加熱液化する場合には35%程度の体積膨張があるので 液圧破裂を避けるためには、過充填を避けるように注意する。
UF6は液化してUF6シリンダーに充填されるが、シリンダー運搬時にはシリンダー内のUF6は固体となっており、 重心位置が空シリンダーと大きくズレている場合が多いので、転倒防止に注意する。
UF6は、水とは烈しく反応する。このとき

UF6+2H2O→UO2F2+4HF

の反応によって有害なフッ化水素を発生するので取り扱いには注意する。
ガラスに対しては、水分が存在すれば次の反応によって

UF6+2H2O→UO2F2+4HF
SiO2+4HF→SiF4+2H2O

SiF4UO2F2が生成する。 また、UF6は金属と反応してUF4を生成するが、純金属ではAl, Ni, Cuなどが比較的耐食性が高い。 通常の有機溶媒に対して激しく反応し、また、通常のゴムは気体UF6によって火を発して作用する場合があるので パッキングとしてはフッ素樹脂系あるいは金属系のものが用いられる。

参考文献:「燃料サイクル フロントエンドI ウラン資源・ウラン精錬およびウラン濃縮 教育資料1 PNC TN8420 91-009」p.26、27

(3) MOX燃料加工施設において,MOXを取り扱う設備・機器を収納するグローブボックスを常時負圧に維持するために講ずべき措置について説明せよ。

解答例

グローブボックス負圧機器、
[1]グローブボックス自体の気密性、HEPAフィルタの性能(給気系、排気系)
[2]専用の排気系(ダクト、排風機)の設置、給気と排気のバランス、
[3]負圧維持のための排風機の多重化(故障により停止した場合に自動切り替え)、
[4]排風機電源の多重化、
[5]負圧警報設備の設置、点検、
[6]フィルタ目詰まりによる排気風量の低下に伴う負圧低下、フィルタ前後圧の監視、フィルタ交換。

(4) MOX燃料加工施設において,作業環境の汚染及びその拡大を防止するために, 作業者がMOXを取り扱うグローブボックスでのグローブ作業中及び作業終了後に行うべき事項について説明せよ。

解答例

作業中
1. グローブ操作中、グローブから手を引き抜くときは、負圧計の指示値を確認しながら負圧が急激に上がらないようゆっくり行う。
2. グローブを損傷させないよう、突起物及び無理な力が加わらないように注意する。
3. グローブを損傷する恐れがあるような作業を行う場合には、保護具を着けたり、養生をする。
4. グローブから手を引く抜いた際、αサーベイメータで腕部を入念に検査し、汚染のないことを確認する。
5. 汚染が確認された場合、そのレベルによらず汚染源を特定し、除染を行う。

作業終了後
1. グローブボックス内の機器及び物品が、安全な状態及び整理整頓されていることを確認する。
2. グローブ等に汚染または損傷がないことを確認する。
3. グローブボックスの表面及びその周辺の床に汚染がないことを確認する。
4. グローブボックス負圧計の指示値が、所定の範囲内であることを確認する。
5. 工程室から退出する際、各室の出入り口にてαサーベイメータにて全身や靴底を検査し、汚染のないことを確認する。

(5) 核燃料施設の被ばく管理について,次の文章の空欄にあてはまる適切な語句を番号とともに記せ。(なお,同じ番号の空欄には同じ語句が入る。)

「使用済燃料の再処理により回収されたプルトニウムは,長期間保管する場合には,核分裂性核種である[①Pu-241]の壊変(半減期約14年)により, プルトニウム燃料としての価値の減損が起こる。
プルトニウム取扱い作業においては,[①Pu-241]を親核種として,[②β]壊変により生成される[③Am-241]の壊変に伴うγ線, 及び比率は低いものの[④α]壊変により生成される[⑤U-237]の壊変に伴うγ線に対するしゃへい対策が必要である。
プルトニウムから放出される中性子としては,[⑥自発核分裂]によるものと,共存する酸素などの軽元素との[⑦(α、n)反応]によるものがある。」

参考文献:清瀬量平訳、「使用済燃料とプルトニウムの化学工学」、p.75-81、p.112-118、日刊工業新聞社(1984)

第3問

ウラン加工施設における火災・爆発対策に関して,以下の問に答えよ。

(1) 文章中の空欄にあてはまる適切な語句を番号とともに記せ。(なお,同じ番号の空欄には同じ語句が入る。)

ウラン加工施設の建家は,建築基準法等関連法令で定める[①耐火構造]又は[②不燃性材料]で造られたものである。 また,設備・機器は実用上可能な限り[②不燃性材料]又は[③難燃性材料]を使用する設計であることが求められる。
施設において[④有機溶媒など可燃性]の物質又は[⑤水素ガスなど爆発性]の物質を使用する設備・機器は火災・爆発の発生を防止するため, [⑥発火・温度上昇の防止対策],[⑦水素ガス漏洩],[⑧空気の混入防止対策]等適切な対策を講じなければならない。
万一火災・爆発が発生した場合にも,その拡大を防止するための適切な[⑨検知、警報設備]及び[⑩消火設備]等が設けられているとともに, 汚染が発生した部屋以外に著しく拡大しないよう適切な対策を講じなければならない。

(2) 火災・爆発を防止するための対策について,具体例を3つ挙げよ。

解答例

  1. 難燃性溶剤の使用、
  2. 爆発限界以下のガス使用、
  3. 使用温度の限定と加熱源遮断、
  4. 最小限の可燃物。

(3) 火災・爆発の拡大を防止するための対策について,具体例を2つ挙げよ。

解答例

  1. 各種消火器の設置、
  2. 隔壁などの設置。

第4問

核燃料物質の取扱いに関して述べた以下の文章の下線部には誤った記述がある。 誤りの理由又は根拠を簡単に述べ,下線部を正しいものに直せ。

〔解答例〕
問題(11) 鉄の安定な酸化物はFe2O3だけである。
解答(11) 鉄は2価と3価の酸化状態を取りうるため,安定な酸化物としてはFeOやFe3O4などが知られている。 従って正しくは、Fe2O3の他にFeO, Fe3O4などがある。

(1) 採鉱されたばかりの天然ウランは放射平衡に達しており,比放射能から考えるとU-235及びその娘核種による放射線に留意したしゃへいを行う。

解答例、
U-238系列の比放射能は1.2×1010 Bq/ton、U-235系列は0.056×1010 Bq/tonであり、約22倍U-238系列のものが大きい。 従って正しくは、U-238及びその娘核種による放射線に留意したしゃへいを行う必要がある。 参考文献:清瀬量平訳、「核燃料・材料の化学工学」、p.77-80、日刊工業新聞社(1984)

(2) プルトニウムから放出される中性子線は,そのエネルギーが比較的低いため炭化ホウ素などの吸収材だけで容易にしゃへいできる。

解答例、
自発核分裂や軽元素との(α、n)反応により発生する中性子は数MeVのエネルギーを有するため、 パラフィンや水などで減速しなければ、中性子吸収材でしゃへいができない。 従って正しくは、エネルギーが高いため水、パラフィンなどで減速した後、炭化ホウ素などの吸収材でしゃへいを行う。

(3) 金属ウランの切削くずは空気中に放置すると自然酸化から燃焼にいたるため,水中に保管する。

解答例、 金属ウランは水と徐々に反応して水素を発生し、爆発の危険性が高い。従って正しくは、難燃性の油中に保管する。

(4) 低濃縮二酸化ウランペレット焼結工程で火災が発生した場合,放水により消火を行う。

解答例、
多量の低濃縮ウランに放水すると臨界のおそれが生ずる。従って正しくは、粉末消化器などの金属火災対応消火器で消火を行う。

(5) 粉末状の酸化ウランは,フードや局所排気が可能なカバーを設けた機器・設備内で取り扱う。 汚染空気の逆流を防止するため,フードに流入する風速は0.1 m/s以上とする。

解答例、
フード開口部の風速は0.5 m/s以上で運用されている。 また、速すぎる風速では粉末状ウランの飛散が大きくなるためダンパーの使用などで適度の風速とする必要がある。 従って正しくは、0.5 m/s程度とする。

(6) 使用済燃料を再処理して得られる回収ウランは,精製した天然ウラン取扱設備と同様なしゃへいを備えた設備で取り扱える。

解答例、
回収ウランには微量ではあるがFPや超ウラン元素が含まれているため、γ線線量が高い。 従って正しくは、天然ウラン取扱設備よりも厳重なしゃへいを備えた設備が必要である。

(7) 濃縮ウランを溶液系で取り扱う設備・機器の臨界防止対策において,まず考慮すべきは質量制限による管理である。

解答例、
指針では、可能な限り形状・寸法制限を行い、この適用が困難な場合、質量制限、濃度制限の他、 中性子吸収材の配置により臨界防止を行うこととなっている。 従って正しくは、まず考慮すべきは形状・寸法制限による管理である。

(8) 核燃料取扱施設内に設置した臨界モニタの3個の検出端のうち1つでも設定値を超えれば,臨界警報が発報する。

解答例、
検出装置の誤作動による誤報の発生の頻発を防ぐため、臨界モニタの3個の検出端のうち最低2つが設定値を超えれば、臨界警報が発報する。 参考文献:日本原子力学会誌、No.8、Vol.7、1975 臨界警報装置

(9) 六フッ化ウラン(UF6)を取り出した後の貯蔵容器は,放射線被ばくの観点からは無害である。

解答例、
貯蔵中にウランのα壊変により生成したThがThF4として容器内に残存し、これからの放射線が無視できない。 従って正しくは、貯蔵容器は有害である。取扱いに注意を要する。

(10) U-235の最小臨界質量は,Pu-239のそれよりも小さいためより厳重な臨界管理が必要である。

解答例、
たとえば水溶液系での最小臨界質量はU-235が0.82 kg(金属では22.8 kg)で、 Pu-239が0.50 kg(金属では5.6 kg)であるので、U-235のほうが1.6倍(金属では4倍)程大きい。 従って正しくは、U-235の最小臨界質量大きいため臨界管理は緩やかになる。

第5問

核燃料物質の取扱いに関して,次の事項を簡単に説明せよ。

(1) 多重防護の考え方、
(2) 使用済燃料輸送容器の臨界防止対策、
(3) 四因子公式、
(4) MOX燃料ペレットのプルトニウムスポット、
(5) 遠心分離法とガス拡散法。

解答例

(1) 多重防護の考え方、
事故に対して施設の安全性を確保し、一般公衆に著しい放射線被ばくのリスクを与えないための考え方。 多重防護は次の3段階からなっている。
第一段階として異常発生を防止するため、安全上余裕のある設計、誤操作や誤動作を防止する設計、自然災害に対処できる設計が採用されている。
第二段階として異常拡大を防止するため、異常を早く発見し、正常な状態にすぐに戻れるような設計がなされている。
第三段階として放射性物質の異常放出を防止するため、密閉空間を設け、負圧管理を行う。

解説:多重防護とは、一般に、原子力施設の安全対策を何段階にも構成して安全性を高めることを指す。 核燃料の取扱いに閑する多重防護の一例として、プルトニウムの利用における包蔵性管理が挙げられる。 詳細は、第31回問題(核燃料物質の取扱いに関する技術)の第5問の(5)の解答例を参照。 この他に、臨界安全の分野における「二重偶発の原則」も多重防護の一つと考えられる。 すなわち、核的制限値の維持・管理や核的に安全な配置の維持については、 起こるとは考えられない独立した二つ以上の異常が同時に起こらない限り、 臨界に達しないようにしなければならない。 すなわち、工程/設備の臨界管理を行う上で、第1の管理項目が何らかの異常で逸脱した場合においても、 第2の障壁により臨界となる事態を未然に防止する設計/管理がなされることが必要である。 参考文献:「特定のウラン加工施設のための安全審査指針」、指針10、指針11、解説

(2) 使用済燃料輸送容器の臨界防止対策、
容器内に収納できる燃料集合体の数の制限、燃料バスケットの格子間隔を十分に確保する。 格子間隔の調節だけで臨界安全が維持できなければ、容器内に収納できる燃料集合体の数を制限したり、 収納用バスケットに中性子吸収材(ボロン)入りステンレス鋼を採用する。 参考文献:「動力炉燃料・材料ガイドブック」、p.362、日本原子力産業会議(1998)

(3) 四因子公式、
原子炉において、核分裂中性子が発生してから減速し、それがまた核分裂を起こす過程で、 中性子がどのように増減するか、それを計算するのに最初に用いられたのが四因子公式である。 燃料と減速材を含む無限に大きい原子炉内で十分に熱中性子化された体系では、n個の中性子が発生し、 1世代の中性子寿命の時間が経つと、nεpfη個の中性子数になる。 この2つの数の比は無限増倍係数kと呼ばれ、k=εpfηと表現できる。 ここで、εは高速中性子核分裂効果、pは共鳴吸収を逃れる確率、fは熱中性子利用率、ηは再生率である。 参考文献:石森富太郎編、「原子炉工学講座1 原子核工学基礎」、p.44-45、培風館(1972)

newclears注: 上記は出典では文字化けしてしまっており正しく読み取れないので適当に修正している。
4因子公式... 無限大の体系における中性子増倍率を表す公式。 核分裂で生まれた中性子が再び核分裂を起こして次の中性子を生み出すまでを世代といい、 世代間の中性子の数の比を中性子増倍率と呼ぶ。 無限大の体系では中性子の漏れが無視できるので、中性子増倍率は以下に示す公式で表される。
k=εpfη
ここで、εはU-238による高速中性子核分裂効果(fast fission factor)、 pはU-238の共鳴吸収を逃れる確率(resonance escape probability)、 fは熱中性子利用率(燃料に吸収される熱中性子の割合;thermal utilization factor)、 ηは再生率(燃料が中性子1個を吸収したときに核分裂で生まれる次の世代の中性子の平均個数)であり、 これらの4つの因子の積で表されることから4因子公式と呼ばれる。 仮想的な無限大原子炉では、kが1のときに臨界、1を超えるときに臨界超過、1に満たないときに臨界未満となる。 現実の原子炉では必ず中性子の漏れがあるため、kが1を超えていなければ臨界にはなり得ない。 出典:atomica

(4) MOX燃料ペレットのプルトニウムスポット、
MOX燃料製造工程の説明:MOX粉末またはPuO2粉末とUO2粉末を混合し、MOX燃料ができる。 その際、混合が不十分であるとPuの富化度が高い部分が残る。これをプルトニウムスポットという。
・不均一性の問題(原子炉への影響):局所的な発熱が起こり燃料温度の上昇やペレット表面近くにある場合には、 部分的な被覆管温度上昇等の悪影響を及ぼす。また、FPガス放出が大きくなる問題に発展する。
・不均一性の問題(再処理への影響):ウラン酸化物とくらベプルトニウム酸化物は硝酸に溶け難いため 再処理時ペレットの難溶性につながる。 ・測定法:αオートラジオグラフィ、プルトニウムからのα線によるフィルム黒化度でPu濃度を測定
解説:PuO2UO2粉末の混合が不十分な場合には、 ペレット内にPuO2濃度の高い部分(プルトニウムスポット)が生じ、ペレット内のプルトニウム分布が不均ーになる。 この場合、プルトニウムスポットでの核分裂が選択的に進行するため、FPガス放出が大きくなる等の問題が生じる。
参考文献:「動力炉燃料・材料ガイドブック」、p.274、日本原子力産業会議(1998)

(5) 遠心分離法とガス拡散法、
・ウラン濃縮の方法:六フッ化ウランガスを使用。
・遠心分離法の原理と特徴:遠心分離器の回転道の外よりでは重成分、内よりでは軽成分の存在比が増加、 分離係数は分子量差と周速に依存、回転胴の高速化のために軽くて強い材料が必要、 回転胴の共振現象を避ける回転技術やバランシング技術が重要、遠心分離法のほうが濃縮効率は良い。
・ガス拡散法の原理と特徴:隔膜の細孔を通過するウラン同位体の速度の違いを利用、 低圧側にU-235がわずかに濃縮、最大分離係数は分子量比の平方根に逆比例、 分離能力の向上のためには隔膜の穴径を小さく、単位面積あたりの穴数を多く、高圧側の圧力を高くすることが必要。
・それぞれの方法の実績:遠心分離法については、1960年代頃から開発が始まり、英国、オランダ、ドイツ 3カ国で結成したURENCO社が、1990年現在、2500 tSWU/y規模のプラントを有している。 日本でも、1958年に理化学研究所で基礎研究が始められ、 1961年には、サイクル機構(当時、原子燃料公社)が引継ぎ研究開発が行われ200 tSWU/y規模の原型プラントが10年以上運転されてきた。 そして、現在は、サイクル機構から技術移管された日本原燃(株)が六ヶ所で1998年現在、約1050 tSWU/y規模のプラントを稼動させている。 ガス拡散法については、米国で1940年代前半から数千tSWU/y規模の工場の建設が始まり、 1990年現在では、米国の3工場(Oak Ridge, Paducah, Portsmouth)の総規模は27300 tSWU/yに達している。 そして、この3工場と仏国、イタリア、スペイン、ベルギー、イランの5カ国共同事業体EURODIFが所有している 10800 tSWU/y規模のガス拡散工場が、世界の濃縮ウランの大半(70%以上)を生産している。 参考文献:「燃料サイクルフロントエンドI ウラン資源・ウラン精錬およびウラン濃縮 教育資料1 PNC TN8420 91-009」p.56-79

出典

谷内 茂康; 佐藤 忠; 須賀 新一; 小室 雄一; 内田 正明; 中島 邦久; 中村 仁一; 雨澤 博男; 大村 英昭; 湊 和生; 武田 常夫; 櫛田 浩平; 傍島 眞 核燃料取扱主任者試験問題・解答例集,1999~2003年, JAERI-Review 2003-025,https://doi.org/10.11484/jaeri-review-2003-025